第14話 おしっこ

 それから僕はもう魔界の食べ物の味にすっかり慣れてしまった。

 つまり、舌が「調教」されてしまったというわけだ。


 このまま調教され続けたら、どうなるんだろう。従順なレズビアのメイドとして、よろしくこの魔界でやっていくことになるんだろうか。

 そんなのはまっぴらごめんだ。

 自分を強く持たなければ。


 そう思いつつも、やっぱり食べてしまう。悲しいさがだね。


「なんだかんだで、けっこう食べたではないか」

 レズビアが僕のおなかを見て言う。

 ちょっと膨らんでいる。食べすぎちゃったかな。


 カーミラが僕のおなかをすりすりと触ってくる。

 その妊婦さんみたいな扱いやめてくれる?


「やっぱり食い意地張ってるじゃないの」

 スウィングがジト目で見てくる。


「君に言われたくないんだけど」

 と、僕は言い返す。そのタイミングで、

「えっと、あの……」

 と、レズビアに耳打ちする。


「何だ?」

 と、レズビアも小声で返してくる。


「と、トイレ……」

 そう、僕は割りと前から尿意を催していた。


「行ってくればいいではないか」

 レズビアは右手の奥にあるトイレを示した。


「でもさ、この身体だし……。女の子の姿でトイレとか初めてだし……」


「どこの世界にメイドのシモの世話をする主人がいる」


「でもさ」


「便座に腰をおろして、パンツを下げて、放尿すればいいのだ。お前は幼児か」


「ねえねえ、二人で何話してるの?」

 カーミラが興味津津と言った様子で、僕とレズビアに尋ねてくる。


「な、何でもないよ」


「どうせ私の悪口とか、そんなんでしょ」

 スウィングがふてくされて言う。


「よくわかったな」


「むっ」

 スウィングは眉根を寄せ、

「いいわよ。おごってもらったのには、礼を言うわ。ありがとう。でも、これは貸しよ。あとで絶対チャラにするから」

 

 そのやり取りをしている間にも、僕の膀胱がけっこうヤバい感じになってきた。


「と、トイレ」

 仕方なく僕はひとりでトイレに向かう。


 個室に入り、鍵をかける。

 便器は普通の洋式のものだった。変なかたちのものじゃなくてよかった。


 まず、便座に座らないといけないけど、スカートはどうしようか。

 このメイド服、ワンピースになってるから、スカート下ろせないぞ。 

 でも、そのまま便座にスカートをつけるのは、なんかばっちい気がする。


 僕はスカートの裾をばさりとめくり上げて一か所に寄せると、左手でそれをつかむ。

 そして、便座に座る。


 おっと! 尻尾が便器にインするところだった。

 危ない危ない。


 僕は尻尾に力を入れ、ピンと立たせて、水没を防ぐ。


 そして、右手でパンツを少しずつおろしていく。

 その間、でかすぎる胸が右手の動きを阻害してくる。

 先にパンツを下すべきだったか。


 てか、ほんとこのおっぱい邪魔だなぁ……。少しレズビアに分けてあげられないかなぁ。


 で、なんとかパンツを下げきる。

 そして、ついに放尿した。


 ジョロジョロジョロジョロジョロジョロジョロジョロ……。


 長い放尿だった。


 ふうぅ……。

 ウップス! 気を抜いて、尻尾がだらりと垂れさがるところだった。

 また危ないところだった。

 尻尾がおしっこまみれになったら厄介だからね……。

 今度は尻尾も手でつかむことにするか。

 

 それで、ええと、最後はたしか、振るんじゃなくて、トイレットペーパーで拭くんだったな。


 はぁ……。

 これ毎回やるのか。大変だな……。


 次回は、背中の翼で空中に浮かびながら、「恵みの雨だ~」とか言いながら放尿するっていうのを試してみようっと。


 って、何バカなこと考えてんだろ。


 あ、そうそう、さっきからおしっこの話ばかりで、お食事中の方には申し訳ないです。

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