第13話 触手
「スライムばかりでなく、この触手も食べてみたらどうだ」
レズビアは、例のフォークっぽいやつを小さくしたやつで、触手をぶすりとやり、僕の前に持ってくる。
うへっ、なんだか生臭いんだけど。
それに、青い色の食べ物とか、食欲が削がれる。
「ほら、食え」
レズビアは僕の口に無理やりフォークをつっこんできた。
「う、うぐぅ……」
僕は思わずそれを噛んでしまった。
すると、クリームコロッケの中身のような、どろりとした粘性の物質が僕の口に広がっていく。
ちょっと生臭い感じがするけど、珍味のようで、けっこう美味い。
ああ、こんなものまで美味く感じてしまうなんて!
「淫魔族が好きな味だろう?」
「それ、どういう意味?」
僕は触手をごくりと飲み込みながら言う。
「触手モンスターの触手の先端には、精液が溜められているのだ」
「おえぇ」
なんつーもん食わせるんだよ。
「リリスちゃん、大丈夫?」
カーミラが僕の翼と翼の間をさすってくれる。
「大げさだな。美味いと思ったくせに」
「う、美味いだなんて、思ってないからね」
「淫魔族のくせに、触手の素揚げも食べたことないのね? いったい、どういう生活をしていたのかしら」
とスウィングが訝しがりながら言う。
レズビアが僕の足を蹴ってくる。
どうにかごまかせってことだろうか。
そう、僕が人間の男だっていうのは、僕とレズビアと魔王だけの秘密だ。
あんまりこのことを悟られるのはよくない。
「冗談だよ。触手好きだよ。僕、触手好きだから」
と言って、二本目の触手をもぐもぐと食べる。
「あはは、美味しいな」
また涙が出そう。だって、女の子だもん……。
「このメイド、なんか変だけど、大丈夫かしら」
とスウィングが呆れたように、レズビアに言う。
「貴様ほどじゃない」
「どういう意味よ」
「まあまあ、みんな変でみんないいってことで」
とカーミラが取り持つ。
「ねえねえ、リリスちゃんは魔界学園の生徒なの?」
「えっと……そうだね、入学するみたいだね」
不本意ながらね。
「そうなの? あたしたちと同じクラスになれればいいなーって」
「ああ、そういえば言ってなかったな。私とカーミラとそこの爬虫類は同じクラスなのだ」
「爬虫類爬虫類しつこいわよ!」
レズビアはスウィングを無視し、
「まあ、お父様が私とリリスを同じクラスにしてくれるように取り計らってくれるだろう」
「何よ、その権力乱用は!」
「リリスちゃんと同じクラスのなれるの? やった!」
カーミラが僕に抱きついてくる。
抱きつかれるのは嬉しいんだけど、おっぱいに顔をすりすりするのはやめてほしいんだけど。
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