第11話 魔族の食事

 僕ら四体の魔族は、二階に上がり、店内に入る。そして、奥のテーブル席に座る。

 ほかに客はいなく、閑散としていた。

 本当にこの店うまいのかな。


 不機嫌そうな女性の魔族の店員が、メニューを投げてよこしてきた。


 レズビアはそれをキャッチし、

「七品くらい、後は任せる」

 とだけ告げた。


 店員は、相変わらず不機嫌そうに、厨房にそのことを伝える。


「楽しみだねぇ、リリスちゃん」

 と、僕の隣に座ったカーミラが、きらきらした目で僕を見つめてくる。


「う、うん」

 むしろ僕はどんなものが出てくるか、不安なんだけど。


 スウィングを見ると、彼女は厨房ををうっとりした様子で見つめている。


「えっと、スウィング、涎垂れてるよ」

 

「ま、まさか、高貴な竜魔族が涎を垂らすなんてみっともないことするわけないわ」

 スウィングは慌てた様子で、口についた涎を拭う。

「あなたこそ、食い意地張ってそうね」


「それ、どういう意味?」


「その見た目からして……よく食べるんじゃないかって思ったのよ」

 スウィングは、テーブルに乗せた僕の胸を見つめる。


「胸は大きいかもしれないけど、太ってはいないからね。断じて」

 巨乳キャラをデブキャラ扱いする風潮には、断固として反対していきたい。


「おい、三バカ、飯が来たぞ」


 店員が料理を運んでくる。

 そして、次々にテーブルに料理が並べられた。


 でも、それはとても食べ物だとは思えなかった……。


 大皿に乗った緑色のスライムの塊には、黄色っぽい眼球がいくつも浮かんでいる。

 無数のいぼいぼがついた青い触手の揚げ物は、山のように積まれていた。

 さらに、トマトやニンジンといった野菜には、どれも人の顔がついているし、

 ほかにも、トカゲ(たぶん)や巨大な虫を焼いたものなどなど……。


「おえぇ」

 僕は思わずえずく。


「おい、リリス、どうした?」


「リリスちゃん、大丈夫……?」


「こ、これマジで食べるの……?」


「メイドのくせに、私の注文にケチをつけるなんて、失礼な女だ」


 だって、これ人間の食いもんじゃないだろ!

 あ、僕はもう人間じゃないんだった……。

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