第3話 メイド服

「ここが私の部屋だ」


 魔王の城にある尖塔のいちばん上の部屋、そこがレズビアの部屋だということだった。

 石造りのため、寒々とした印象も与えているけれど、意外とファンシーだった。天蓋つきのベッドがあり、ファブリックは薄いピンクで統一されている。

 ベッドには、黒い翼が生えたパンダとイルカのぬいぐるみが置かれていた。


「意外とかわいいの好きなんだね」

 と僕は言う。


「悪いか?」

 レズビアが睨んでくる。


「わ、悪くないです。すばらしい趣味だと思う」


「嫌味にも聞こえるが、まあいいか。それでメイド服だが」

 レズビアはクローゼットを開いて、一着のメイド服を取り出す。


 そのメイド服は、クラシックなタイプというより、ミニスカートで胸元が大きく開いている、なんというかそういうお店の衣装のようなものだった。

 てか、何でレズビアの部屋に置いてあるの……。

 まさか、これを着てメイドさんごっこでもやってるんじゃ……?

 いや、それはいいとして、


「これ、本当に僕が着るわけ?」

 大学の学祭で着ぐるみ着せられたことがあるけど、それ以上に恥ずかしい。


「嫌なら全裸でもいいが」


「着ます! 着させていただきます!」


 はぁ……やれやれだ。

 やれやれだと思っても、僕はもう射精できない。


 僕は仕方なく、そのメイド服を着る。


 おっぱいのあたりとかすごくぴちぴちで強調されている。

 ミニスカートはパンツが見えそうで、すごく心もとない。

 ちなみに、背中は翼がうまく出るようにぱっくりと開いている。


「は、恥ずかしい……」

 もうやだ。早く元に戻る方法を見つけ出さなければ。


「ちょっと練習してみるといい。『お帰りなさいませ、ご主人様』。はい、リピートアフタミー」


「お、おか……ってそんなこと言えないって」


「そうだな。『お帰りなさいませ、お嬢様』のほうがいいか」


「そういう問題じゃなくてですね」


「ふむ、私に逆らうのか」

 レズビアがぎろりと僕を睨む。


「わかりましたよ。『お、お、お帰りなさいませ、お嬢様』」

 僕は恥ずかしさを我慢して、なんとか言ってのけた。


「さ、リリス、行くぞ」


「ちょっと待って。反応なし!?」

 せっかくやったのに。

「てか、行くってどこに?」


「そりゃ、淫魔族の女が『イク』といったら、あれだろう」


「ひえっ、まさか」


「魔王のところだ」


「何だ、魔王のところか……」

 って、え? 魔王?

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