第9話

一通り見て回り買い物を終えた。

俺の奢りだと言ったが藍さんは頑なに拒否を

したので各自お金を出した。

今時の女子はてっきり男に払わせて当たり前とでも考えてるのかと思ったが藍さんは違った。ただ、それでは俺の気が済まないので

今度はこっそり買いに行こう。

一緒に行ったらお金を出させてしまう。

そして母親の所に向かった。

向かう途中、俺は少し喉が渇いた。

「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる。

待っててくれ」

俺は近くのベンチに座るよう促し、トイレに向かった。本当は飲み物を買いに行ったのだがまたお金を出させるのも気が引ける。

ここのショッピングモールはトイレの近くに

自販機が数台設置されているため飲み物を買うには都合が良かった。

俺は自販機でペットボトルや缶コーヒーを数本買い、藍さんの待つ場所へ戻った。

途中不良がいたが目を合わせないように、

気配を消した。

絶をマスターしてる俺は簡単に気配を消すことが出来る。

そろそろジャジャン拳使えちゃうレベル。

やだ、ヒソカに目をつけられちゃう!

数分歩くと藍さんの待つ所へ着くことが出来た。が、その周りに数人の男が囲むように立っている。

「お嬢ちゃん、俺たちと遊ぼうぜ〜」

「良いとこ連れてってやるからさ〜」

さっきすれ違った不良たちだ。

ヤバい!どうする?

そう思案する頭と裏腹に勝手に足が動く。

「すいません、俺の彼女なんで手、出さないでくれますか?」

「ああ?何言ってんだゴラ!」

本当、何言ってんだろうね。

ただもう取り返しがつかない。

何としても藍さんだけは逃さなくては。

「君、腕骨折してんだ?それで彼女守れんの?」

不良Aが嘲笑交じりに話しかけてくる。

俺の今の手持ちはさっき買った本と数本のペットボトルだけだ。

不良Aの問いに俺は無言で返す。

「黙ってねえでなんか言えよ!!」

不良Bが叫び散らす。

腹、括るか。

「聞いてるよ。耳元でギャーギャーうるせえな」

「なんだと?」

俺は出来るだけ不良を挑発する。

そして、不良の視線が俺に集中する。

藍さんを守るように少し後ろに下がり、

藍さんに小声で言った。

「俺が肩を叩いたら逃げろ」

藍さんからの返答は聞こえなかった。

「おい、にいちゃん。こっちは四人いるんだぞ。状況わかってんのか?」

「ああ。あんた達とは違って足し算くらい俺は出来る」

逆にこちらが嘲るように言った。

不良の表情が変わり、完全に藍さんへの

意識はない。俺の作戦通り。

ただ状況はあまり芳しくない。

全員身長175くらいはあり、

しかも俺は腕が折れている。

どう考えても俺の負けフラグだろ。

「なんだと!!」

馬鹿にされたのがよっぽど堪えたのか

不良Cがサバイバルナイフを出した。

抵抗するため、無意識に俺は買った本を手に取った。周りの一般客は悲鳴をあげている。

だが、俺を助けようとする人はいない。

「本でどうするつもりだよ?気でも狂ったか?」不良Dが馬鹿にするように言った。

クッソ!馬鹿に馬鹿にされた!

いかん、そんな事気にしてる場合じゃない。

余計な事を考えてるとサバイバルナイフを持った不良がこちらへ向かってきた。

「お前には痛い目を見てもらうぞ!!」

俺は藍さんの肩を叩き、逃げるよう促した。

逃げた事に気がついてるのかは分からないが

藍さんを追う気配は無い。

これで藍さんは無事に帰れる。

あとは俺がこの不良をどうにかすれば良いだけだ。

俺は向かってきたサバイバルナイフから身を守る盾のように本を前に突き出した。

すると、本にサバイバルナイフが刺さった。

ナイフを絡め取るように本を捻る。

サバイバルナイフにノコが付いてるため

簡単には抜くことができない。

サバイバルナイフは元々それ一本で生存できるように作られているそうだ。

だから、刃が大型でその反対側にはノコがあるといった頑丈性を有する。

だが、欠点もある。サバイバルナイフは

過去にノコ部分が布に絡め取られた事例があるそうだ。万能性を持ちあわせている分、欠点もあるということだ。

そして俺は不良からサバイバルナイフを取ることが出来た。

「テメェ!何しやがった!」

ナイフを取られた怒りで我を忘れているのか

無理やり突進してきた。

それを躱しざまに足を引っ掛けて、倒した。

そして後ろへ周りに首にナイフを突きつけた。

「動くなよ。動いたらこいつ首を切るぞ」

冷淡に淡々と告げた。

「警察に通報はしないでやる。

その代わり二度と俺の前に顔を見せるな」

不良達は狼狽している様子でこちらを見る。

俺はその顔が酷く不愉快に感じた。

「早くしろ」

短くただ苛立ち混じりにそう言った。

不良達は尻尾を巻くように退散した。

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