第8話

この通りはアパレルショップが密集しているためか、カップルがやけに多い。

ちっ、騒々しい。

爆発しろ!と心で唱えてると俺の願いが

通じたのか不良がカップルに絡んでいる。

いつもなら不良を見たら即逃げるが今回は

話が違う。

ナイス不良!ついでにお前らも捕まれ。

そっと心の中で共倒れにを祈っていると

女性陣の買い物が終わった。

「お待たせー」

両手に紙袋を引っさげている母親と

少し疲れたのか、足取りの重い藍さんが来た。

「いや、別にそこまで待ってない」

「そう?じゃあ食材買って帰るわよ」

まだ買い物するのかよ。

付き添うのも面倒なので俺は単独行動を提案した。

「シュークリーム買って来て良い?

どうせ買い物してんなら」

「そう。いってらっしゃい。

どう?藍ちゃんも茜と一緒に行かない?」

いや、行かないでしょ。

きっと少しでも遠慮なく接せるように

するために一緒にしたいのだろうが、

男と二人きりだと逆効果だと思うんですけど

どうなんですかね?

「いや、男と二人きりだと、ちょっとあれだし」

気を遣わせるのも悪いし、わざわざ二人で買いに行く必要もない。

俺は母親の提案を拒否したが、思いもよらない言葉を聞いた。

「一緒に行きたいです」

聞き逃してしまいそうなか細い声だが

確かにそう言った。

そんなこと言われたら断れなくなるだろ。

「はぁ。分かった」

ついため息が出てしまった。

そして俺は藍さんと洋菓子店に向かった。

シュークリームを奢るつもりだったから都合が良かった。

洋菓子店は二階のファストフード店やらが

建ち並ぶ一角にある。

春休みということでどの店も盛況のようだ、

件の洋菓子店はシュークリームが美味いのは当然で他にもプリンやショートケーキなどと言ったスポンジケーキ類、モンブラン、フルーツゼリーなど多種多様なスイーツがある。

どれも素晴らしいのだが、中でも俺がいつも食べているのはシュークリームとモンブランだ。サクサクの生地のパイで中には濃厚なカスタードがたっぷりと入っている。手で持っても最後までパイが潰れることなく、シュークリームあるあるの[中のクリームが手に付く]という、問題にも煩わされずに済むのも

ポイントが高い。

甘さが苦手という人もいると思うが

ここの店のカスタードは甘さがしつこくなく飽きることなく食べることが出来る。

そしてもう一つのオススメのモンブラン。

国産の栗を使い、タルトの生地の上に

これでもかとばかりにクリームをあしらってある。少しアルコールが含まれてあり、

甘いのが苦手な人でも食べられると思う。

おっと、俺としたことが喋りすぎた。

スイーツ男子とか流行らないかな。

女子的に美味しい洋菓子店知ってたら、

好感度あがりそうだけどな。

俺が流行の兆しについて考えてると

洋菓子店に着いた。

女性客や家族で来ている人が多いなか、

いつも一人で来てるため肩身の狭さを感じてるところだが、今日はいつもとは少しばかり

状況が違う。

さっきまで、リア充くたばれ!とか思ってたけど側から見れば俺もそれに見えるだろう。

なまじいつも来てるせいで店員にも顔を覚えられている。そのせいで恥ずかしい。

さっさと済ませよう。そう思って藍さんのほうへ振り返る。すると藍さんの姿が見えない。迷子かと思い店内を見回すと異常にスイーツに食いついている女の子がいた。

見知った、ていうかこないだ家族になった

女の子だった。

なるほど。だから来たかったんだな。

ようやっと納得出来た。

柄にもなく口元で笑みを浮かべた。

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