鶴来空 -0日



 昨日姉さんは帰ってこなかった。

 朝起きて姉さんが帰ってきていない事に気づいた僕は、姉さんの携帯に連絡をした。何回しても何回しても、返事は一向に返ってこなかった。

 嫌な予感がする。

 僕は急いで学校に向かった。学校は朝練をしている部活がちらほらいるくらいで、学校がまだ寝ぼけ眼のように思えた。

 部活棟まで、真っすぐ向かう。

 姉さんが帰ってこないとしても、普通部室にはいない。普段の僕ならそう判断するだろう。それでも僕は、この部室に何かあるのではないかと思ったのだ。

 そういえば、樹村先輩の遺体が見つかったのも、こんな朝早い時間の事だったっけ――――。


「……………………」


 。そう思っていても、その考えは止まらない。

 部室棟に入って、『超研部』の部室の前にたどり着く。鍵を開錠して扉を開けた僕の目の前に広がった景色。

 それは、写真の中で見たことのある、地獄絵図だった。


「――――――――え?」


 ひどい匂いがする。金属のような、でも生きてるように思えるそんな匂い。ああ、これは鉄だ。だ。

 部室の床が赤に染まっている。赤と黒を混ぜたような、そんな色が床を染め上げている。赤いこれは、か?

 そして。

 そしてその先にあったのは。

 

「――――――――あ、あああ」


 僕はに近づく。

 服が汚れてしまおうが関係ない。それより僕にはもっと重要な事があった。

 それの頬に、手を触れる。馴染みのあったはずのその形は、馴染みのない冷たい温度がした。

 僕は手を触れて、それの、を呼んだ。



「―――――――――







**************************************




 姉さんの遺体を発見して。

 そして。

 そして僕は――――――――。

 


 ――――――――

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