鶴来空 -3日
何か分かったら教えてね。
兎川先輩は帰り際にそう言ってくれた。そして《封筒》を手渡してくれた。その内容はあまりにもおぞましいものだったけれど、しかし事件の解決には必要不可欠だろう。ありがたく貰っておく事にした。
写真には、樹村先輩の遺体が写っていた。
なんでも、警察の内部資料をこっそり貰ったらしい。いくら何でもコネクションが強すぎると思った。一体兎川先輩の知り合いって何者なんだろう。というか兎川先輩が何者なんだろうか。
写真の内容は事前に(僕がそのグロい写真を見る前に)教えてくれたから覚悟はできていたけれど、実際に見るとかなりきつかった。おかげで昨日は、満足に眠れなった。
そして、そんな事があった翌日、僕達は時計塔の屋上に来ている。
「うわー、私時計塔初めて昇ったよー!」
「あんまり騒ぐなって。ここにいる事が姉さん達にばれたらどうなる事やら」
「どうなるの?」
「骨を拾ってくれると嬉しい」
「死ぬの?」
姉さんを怒らせると死ぬより恐ろしい目に会いそうだけど、それはさておき。
僕達、つまり僕と南沢がこうして時計塔の屋上にいるのには訳がある。
僕と兎川先輩の意見はおおよそ姉さんが怪しいという結論で一致したけれど、しかしそのためには時計塔の密室を攻略しなければいけない。つまり時計塔の調査が必要になったのだ。
時計塔の鍵は、生徒会の物を使用した。兎川先輩が生徒会長なので、必要な記入事項をサラサラと書いて容易く鍵をゲットできた。
時計塔の鍵を開錠して、長い階段を上がっていくとまた扉があった。同じ鍵で開錠すると、時計塔の屋上に着く。屋上はとても暑く、長袖シャツに汗がべっとりとへばりついた。
「けどまあ、これは確かに凄いな……」
時計塔の高さは五階かそれ以上だろうか、校舎はやすやすと下に見下ろす恰好だ。けどまあ、だからと言って解放感があるかと言われるとそれも微妙だけど。
なぜならこの時計塔、屋上のうち三方向が壁に囲われているのである。唯一開けている面には金属製の手すりが設置されていて、ここで樹村先輩が死んだのだと予測できる。
あくまでも飛び降りた場所ではなく、死んだ場所なのだ。
「…………」
僕は昨日見た、樹村先輩の遺体の写真を想い出す。
確か時計塔の壁を背景にして、樹村先輩の死体が写っていた。他の写真も、樹村先輩だけを接写していたり、首元や顔という特徴的なパーツに注目して写していたりと差はあるものの、おおむね同じような写真ばかりだった。一枚だけ屋上の写真があったけど。
その中でもひときわ特徴的なのは(死体の写真そのものが特徴的というのを除いて)、やはり首元のロープだろう。
樹村先輩の首元にはロープが巻き付けられていて、その先端は血の海に沈んでいた。だいたい、三メートルくらいの長さのロープが余っていて、その先端はよく見るとカッターで切ったような跡があった。
「なんていうか、変な感じだよね」
「ん? 何が」
「いや、なんというか、いろんな事が」
南沢は屋上のフェンスに手をかけて、外の景色を見ながら言う。人が死んだフェンスによくそんな事をできるのかと感心する。
南沢にはさっき、昨日兎川先輩と話した事を大まかに伝えた。とは言っても樹村先輩の死の状況とかだけで、兎川先輩と協力体制を作った所までは話していない。まあ話さなくてもいい事だけど。
「一旦首を吊ったのに、なんで飛び降りみたいになったのかな」
「一応、論理的な説明はできるけどな」
ただそれを信じられるか信じられないかは別だし、僕は信じていないけど。
そう思った事は隠して、僕は南沢と向き合う。南沢も興味を持ったようで、身体を反転させてこっちを向いた。
「樹村先輩がここで首をつった後、ロープがほどけたんだよ。それで首吊りをした後飛び降りをしたような変な形になった」
「うーん、なんとなく理解できるような、そうでもないような」
「理論上可能かもしれないけど、腑に落ちないって感じだろ」
「そうそう、そうなんだよ。なんというか、不自然かなって」
僕だって不自然だと思っている。さっきの推論だってある程度説明できるってだけで、説得できるような内容じゃない。
それに第一、自殺かどうかは本当は定かじゃないんだ。
「……僕は正直、樹村先輩の死が自殺とは思えないんだ」
「え? でも、首吊りしたんじゃ」
「偽装した可能性だってあるだろ」
その言葉に、南沢は意表を突かれたように驚いた。その可能性を意識していなかったのだろう。
「……えっと、つまり鶴来は、樹村先輩の死は他殺だったって言いたいの?」
「正直に言うとそれだけじゃない。僕は姉さんが殺したと思っている」
「……いくらなんでもそれは」
「まあただの勘だけど。でも『超研部』の中で一番怪しいって言ったら、姉さんの気がするんだよな。あくまでも客観的に見て」
勿論これは嘘だ。
本当は姉さんが殺したのだとほとんど確信しているくらいだけど、それを無闇矢鱈と言う訳にもいかないだろう。
「でもさ、鶴来。動機がないんじゃないの? そもそも私には、『超研部』の人がきっかけになったなんて信じたくないよ」
「……それは確かにそうかもしれない。でもさ、姉さんたちは一緒の部活で過ごしていた訳だし、多少なりとも生活を共にしている以上、何かしらか動機があったとしてもおかしくはないと思うんだ。まあ動機があったのと、実際にやるのは全然違うけどさ」
「……やっぱり、こじつけが過ぎるって」
「でも、調査する価値はあると思うんだ。これで調べて、やっぱり自殺だなって納得すればそれでいい訳だし」
「…………」
納得いかないのか、鹿爪らしい表情を浮かべる南沢。そのまま僕から視線をそらして、さっき見たいに景色を見る。
「ま、ここまで来た以上、最後まで付き合うよ。自殺にせよ他殺にしても、どっちかに納得できなきゃ嫌だもんね。でも私は、樹村先輩の死は自殺だと思っているから。誰かが殺しただなんて思いたくないもん」
「……ありがと」
僕の身勝手な捜査に協力してくれる事、その上で『超研部』は樹村先輩の死に関与していないと信じてくれる事、その両方が嬉しかった。
僕は南沢のいるフェンスへと向かう。フェンスは元々白い色だったのだろう。しかし今は薄汚れて、赤茶色い錆や塗装剥げ等でかなりみすぼらしい姿になっていた。
おそらく長年ほったらかしになっていて、誰も手入れをしようともしなかったのだろう。まあ古い時計塔と言っても屋上のフェンスまでは違うだろうし、屋上にわざわざ来る人間もいないだろうから、当然と言えば当然か。
形は『皿』とでも言えばいいのだろうか。まあよくあるフェンスの形だ。一本一本が太いから人間を支えるのには十分そうだし、乗り越えやすい高さでもあったから、自殺するには楽かもしれない。首吊りでも、飛び降りでも。
「……こりゃ、なんの跡も残ってなさそうだな」
「去年だしね。雨だって散々降ったろうし、何にも残ってないんじゃない?」
事件の直後とかに来れれば何らかの証拠を見つける事もできたのかもしれないけど、もう一年経っている以上、新しい証拠には期待できそうもない。それにそんな分かりやすい証拠があれば、きっと警察だって気づくだろう。
「……ん?」
しばらくフェンスを眺めていると、フェンスの一部の塗装禿げが酷い事に気が付いた。
その跡があるのは、左右で言えばちょうど真ん中、上下で言えば一番下の位置だ。
「ここ、塗装剥げが酷いな」
「ああ本当だ。じゃあここにロープが結んであったのかな。ううん、あんまり想像したくないなあ」
「ふぅん」
僕は昨日見た写真を想い出す。
確か屋上を撮っていた写真が一枚だけあって、アングルはこの屋上からフェンス全体を撮っていた。そしてフェンスの中央、まさにここら辺の床に、白いチョークで囲みがあったはずだ。
ここで首吊りをしたのは、どうやら確実みたいだ。
「まあどこで首を吊ろうが、あんまり関係ないのかもしれないけど」
見るだけでは分かるものも分かるまい。そう思い、僕はフェンスを触って確かめる事にした。
フェンスの前で屈んでフェンスを触る。袖口にフェンスがついて錆がついてしまったけど、気にしては調べられないだろう。
「……ん?」
しばらく触っていると、ある事に気づいた。その声につられて、南沢も僕の傍に近づく。
「ここ、塗装が全部剥げてないな」
「そりゃまあ、ロープに触れてない部分はそうでしょ」
「いや、それがさ。フェンスの円周すべての塗装が剥がれてないっていうか」
「どういう事?」
「なんというかさ……」
フェンスを円柱とみなした時、その円柱にロープを結んでいるとする。もし結んだロープが擦れて塗装が剥げたのだとしたら、その円周全ての塗装が剥げているだろう。
問題は、目の前にあるこのフェンスの塗装剥げだ。
触ってみると分かったけど、塗装剥げは円周のだいたい四分の三くらいしかない。フェンスの内、外側に面している部分は塗装剥げが全然ないのだ。
こんな事を説明したけれど、南沢は今一よく伝わらなかったようで、しきりに首をかしげている。自分でも屈んだ状態でフェンスを触って確かめているけど、どうもしっくり来ていないようだ。
「それはわかったけどさ。別にその部分だけ擦れなかったってだけじゃないの」
「そうなんだけどさ。でも仮にそれが偶然じゃなかったとしたら?」
「……したら?」
「そこの部分にはロープが触れてなかったって事になる」
「……つまり?」
「つまり、なんだろうな」
「駄目じゃん」
南沢は呆れた口調でばっさり言い放った。立ち上がって、その勢いのままフェンスから遠ざかる。
しょうがない、僕はワトソン役でやって、決してホームズではない。事件を即座に解決なんて出来やしない。
そもそも僕、ホームズシリーズ読んだ事ないけど。
「…………」
僕も立ち上がった状態でもう一度フェンスを見る。
塗装が一部剥がれていない。つまりロープがそこに触れていない。
そもそもだ、果たしてロープが巻き付いてあったからといって、塗装がそう簡単に剥がれるものだろうか。
樹村先輩がロープを使って首つりをしている姿を想像する。ロープがフェンスに固く結ばれ、ロープが伸びた先には樹村先輩の首がある。樹村先輩は首を支点にして、体を揺らしている。
そんな状態で、何らかのトラブルでロープがフェンスから外れる。写真から、ロープの切り口が切断されていた事は分かっている。つまりロープは自然にちぎれたんじゃなく、結びがほどけたと考えてもいい。
するりとロープの結び目がほどけて、樹村先輩の身体が地面に向かって落下する。そのまま地面に叩きつけられ、ぐしゃっと――。
「……やっぱりおかしいな」
「ん? どうかした鶴来」
「ああいや、何でもない」
もう調べる事はないと言わんばかりに、南沢は屋上の扉の方に向かう。実際調べられる事は何もなさそうなので僕もそれについていく。そしてその間、さっきの考えを詰めていく。
ロープが解けて樹村先輩が落下したなら、ロープはそこまで擦れないはずだ。擦れるとしても、そこまで強い力がかかる訳でもないだろうから、結果塗装がはがれる事もないだろう。
あの塗装の剥がれ方はもっとこう、強い力で擦った感じがするのだ。
つまりそれはどういう事かと言うと。
「……だめだ、分かんね」
やっぱりホームズには無理がある。
**************************************
長い螺旋階段を降り切って、ようやって僕達は時計塔の外に出る事が出来た。
そのまま僕達は反対側、樹村先輩が飛び降りた場所へと向かった。
やっぱり予想通りというかなんというか。その場所も今は何事もなかったかのように綺麗になっている。いや綺麗と言っても、それはあくまでも写真と比べてであって、雑草は生えっぱなしではあるんだけど。
時計塔のすぐ近くはコンクリートで舗装されているから、調査に支障はないけど。
「ふむふむ、どれどれ」
時計塔の壁を見ながら、写真の構図と一致するアングルを探し回る。
記憶とのすり合わせだから如何せん頼りないけれど、けれど大体は一致した。そして僕は、時計塔の壁を触る。
「どうしたの鶴来。そんな所触ってたら汚れるよ?」
「ああ、いや。壁に何か証拠とかないかなって思って」
「そんなの、雨で消えるだけじゃん」
「そうなんだけどさ」
南沢は不審者を見るような目で僕を一瞥してから、ふいと他の場所に移動した。南沢なりに何か証拠を掴もうとしてくれているのだろうか。
僕は南沢の視線から隠すようにして、写真をポケットから取り出す。その写真は低い位置から樹村先輩を撮っていて、正直遺体がかなり近くに見えるから直視しにくい。
だがそこに重要かもしれない証拠が写っているのも確かだった。
写真に写った時計塔の壁には、何かを擦ったような跡があった。十センチくらいの擦れた小さい跡、それは等間隔で屋上まで続いている。しかももう一つ、こっちの跡はずっと擦ったように屋上まで続いている。
「……これはなんだろ」
良く見ないとそれには気づかないだろう。あるいは兎川先輩も、この跡には気付いていないかもしれない。兎川先輩が凝視するには、この写真は残酷すぎるだろう。
白いチョークで囲まれていないという事は、これは警察も気づいていないかもしれない。あるいは、警察も気づいていたけれど関係ないと切り捨てたか。
けれど僕は直感していた。この壁の跡は、何かの証拠になる。あるいは、この跡から何か発想できるのではと。
「どうしたの鶴来。何見てるの?」
「うわっ!」
いつの間にか南沢が僕の傍まで来ていた。僕の背中から手元を覗き込んで、僕が何を見ていたのかを探ろうとしている。
僕は急いで振り返り、写真をポケットに突っ込む。
「どうしたのさ。何か見つかった?」
「いや、やっぱり証拠の類は無かったけど……。鶴来何見てたの?」
「特に何も見てないさ。気のせいじゃないか?」
「へぇ?」
南沢は何か新しいおもちゃを見つけたような、生き生きとした顔でこっちを見てくる。手をわきわきと動かして、僕のポケットに手を突っ込もうとしてくる。
って、こいつ人の物を奪おうとしてやがるな!
僕は華麗に南沢の窃盗行為を避けながら後ろに飛んで逃げる。
「おい南沢。何をしようとしているんだ」
「いやぁ。ただ何を見ていたのかなって気になってさ。もしかしていやらしいものだったり!」
「皆月先輩と同じ事を言うなぁ!」
このくだり二回目だぞおい。
という事は何か? 女子高校生はみんな、男子高校生が隠すものはいやらしいものだと思っているのか?
……まあ否定はしにくいけども!
「誤解だ南沢。大体、こんな時にそんな事している場合じゃないだろ。今は真剣に、何か証拠を探さなくてはなんだから」
「あ、そっか。ごめん」
「分かればいいんだ」
良かった。何とか誤魔化せた。
「あ、そうだ。ついでに聞きたいんだけどさ。南沢はどう思う?」
「え、急にそんなこと言われても。男の子ならいやらしいもの持っても普通だと思うよ」
「そういう事を聞いてるんじゃない」
こいつ、さっき僕が言った事聞いていなかったのだろうか。
ため息をついて、僕はもう一度しっかりと説明する。確かに僕の説明も悪かった、そこは反省しなくてはいけない。
「もし仮にだよ、樹村先輩の死が自殺じゃなくて他殺だとしたら。この時計塔からどうやって脱出したと思う?」
「……だから私は自殺だって思ってるって」
「仮に、だよ。そうだな、これが仮にミステリだと思ってくれよ。登場人物は架空の存在で、実在の人物とは一切関係がないんだ。その上で考えてほしい」
「何そのドラマ仕立ての注釈」
私ミステリ読まないんだけどなぁ。そう言いながら南沢は空を見上げる。
「というか、私密室とかもよくわかってないんだけど。本当に時計塔は密室だったの?」
「そりゃまあ、そうだろ。鍵が屋上にあったんだから」
そっか、普段ミステリとか読まないと、密室もあんまり馴染みがないんだ。そりゃ家に居ればそこは鍵のかかった密室みたいなものだけど、それを解く立場には普段なる事はないだろうし。
「施錠できる上に管理が不十分だった鍵は一本しかなくて、しかもそれが時計塔の屋上、つまり施錠されている空間内にあったんだ。これはもう完全な密室だろう」
「でもさ、密室って『密閉された部屋』って事でしょ? 漢字的には」
「そうだけど」
「別に密閉されていないし、部屋でもないじゃん」
ああ、そこまで聞いて僕はようやく気が付いた。
確かに時計塔は密室的状況だったけど、だからと言って密室そのものではないのか。
屋上は外と繋がっていると言えなくもないし、屋上は部屋とは言えない。
なるほど、普段ミステリを読まない南沢らしい発想だ。
「じゃあその上で聞くけど、犯人はその密室じゃない時計塔の屋上からどうやって脱出したと思う?」
「ハンググライダーでぴゅーっと。ほら眼鏡をかけた小っちゃい探偵ものに出てくる怪盗みたいに」
「お前に聞いた僕が愚かだった」
「なんでよ!!」
そもそも具体的に密室だったどうかなんてどうでもいい話じゃないか。
実際に密室と言って差し支えない状況なんだから。いくら何でもそんな、ハンググライダーなんて強硬策――。
「……ん?」
と、そこまで考えて、僕はふと気づく。
ハンググライダー? 強硬策?
フェンスを飛び越えて脱出?
「……ちょっと待て」
僕はもう一度、写真の遺体を見る。南沢に背を向けて、彼女から見えないように。
写真に写っている、樹村先輩の首に巻き付いてあるロープを、じっくり確認する。
ロープは首をぐるりと囲んでいて、その余りは蛇のように蛇行しながら血の海の中に沈んでいる。その長さは、二メートル以上はあるだろうか。ほどけたにしても、その長さは異常かもしれない。
いや、異常なのはそれだけじゃない。
屋上のフェンスの塗装が、一部剥げていなかった事。
時計塔の壁に変な跡がついている事。
そもそも、首つりを時計塔で行った事。
姉さんが持っていたノートの切れ端の事。
「どうしたの。さっきから黙りこくっちゃって」
「ちょっとごめん、黙ってて。今からめっちゃ考えるから」
僕の言葉に南沢がどんなリアクションをしたのか、それを確認する前に僕は眼を瞑る。そして両手を耳に当てて、外部の情報をできるだけシャットダウンする。
そして僕は考える。
さっき思いついた可能性、それが本当にできるのかを確かめなくてはいけない。姉さんが犯人だとして、その行動を予想する。
考える。思いついた矛盾点に出来るだけ論理的で蓋然性の高い答えを当てはめる。
考える。それが本当に可能か、姉さんの私生活を照らし合わせる。
考える。樹村先輩の姿を想い出して、姉さんとある点が同じか予測する。
考える。考える。考える。考える。考える。考える。考える。考える。考える。考える。考える。考える。
「――あ」
ぴったりと、何かがハマる音が聞こえた。
分かった。樹村先輩の死の謎が。姉さんが、どうやって殺したのかが。
謎は解けた。
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