鶴来空 -4日



 日曜日も終わり、憂鬱な月曜日が始まる。

 ただこの憂鬱は、学校の授業がめんどくさいとかそんな理由じゃない。憂鬱の原因は、一昨日見つけたあのノートにある。

 姉さんと時計塔、そこに樹村先輩を繋げれば、答えはおのずと一つに絞られる。

 つまり、姉さんが樹村先輩を時計塔に呼び出した。おそらくは、自殺した日の前後に。

 そして、その発想をさらに発展させれば、もっと恐ろしい事実が浮き上がる。

 姉さんが樹村先輩を時計塔に呼び出して、そこで姉さんが何かをしたとすれば。

 


 姉さんが樹村先輩を殺したかもしれないのだ。



「……馬鹿らしい」


 僕は『ヤマネコカフェ』のテーブル席でアイスコーヒーを飲む。

 学校の終わった放課後にここにいるのは、兎川先輩と会う約束をしているからだ。とは言っても僕からアポを取ったのではなく、兎川先輩の方から連絡があった。

 向こうが一体どんな用事があるのかは知らないけれど、僕はついでに、兎川先輩に樹村先輩の事を聞こうと思っている。


 正直、兎川先輩に話を聞くのはかなり憚れる。姉さんだって皆月先輩だって西園寺先輩だって、樹村先輩については触れてほしくなさそうだった。きっと兎川先輩だった同じ心境だろう。


 けれど僕は知らなくちゃいけない。


 とは言っても、本来ならば僕が関わる理由はどこにもない。樹村先輩が自殺したのは過去の事件だし、それを今更ほじくり返す事もない。それに僕は傍観者だ。わざわざ首を突っ込むのもどうかと思う。


 けれど樹村先輩の死に姉さんが関わっていたのなら話は別だ。

 姉さんがもし樹村先輩を殺したとすれば、それを弟である僕が知る必要がある。

 身内がやった犯行は、知らなくちゃいけないんだ。

 カランコロンと、来店を知らせるベルの音が店内に響いた。


「やっほー、空君。今日もばきばき暑いね」

「こんにちは兎川先輩」


 アイスコーヒーが半分くらいに減った頃合いに兎川先輩はやって来た。

 『ばきばき』という変な擬音語については無視をする。兎川先輩はハーフだからか、こうして時々変な擬音語を口にするのだ。


 あれだ、鶏の鳴き声を僕達は『コケコッコー』と思っているけれど、国によってそれはまちまちで、例えば『クックドゥードゥルドゥー』だったり『ココリコ』だったりとかそういう類の話で、兎川先輩も日本人とは発音の感性が違うのだろう。


「ごめんねー、生徒会の仕事があって」

「いえ、大丈夫ですよ」


 待ち合わせの時間から十分過ぎているけれど、まあ許容範囲だろう。むしろ兎川先輩は結構時間にルーズだから、十分はむしろ早いくらいだ。南沢ぐらい正確だと逆に怖いけど。

 席についた兎川先輩はコーラを頼んで、姿勢を崩した。


「それにしても暑いね。空君も半袖にしたらいいのにさー」

「それ、友達にも言われましたよ。しかも、この喫茶店の同じ席で」

「へえ、面白いね」

「でしょう?」

「空君友達いたんだ」

「そこを面白がっているんですか!?」


 冗談冗談と、微笑みながら兎川先輩は言う。

 まったく、南沢といい兎川先輩といい、皆して僕の友達の少なさをからかうんだから。というか僕の友達の少なさって、そんなに有名なのか?


「南沢ちゃんでしょ? 知ってるよー」

「あれ、そうなんですか。まあ南沢は交友関係広いですからね」

「生徒会にも誘おうと思ってるんだよね」


 そんな、取り留めのない会話をしていると、兎川先輩の頼んだコーラがやって来た。それを一口だけ飲むと、兎川先輩は急に真剣な表情を浮かべた。

 本題に入るという事だろうか。


「今日空君に来てもらったのは、調についてなんだ」

「!!」


 どういう事だ?

 僕が樹村先輩の事を調べている事を、兎川先輩が把握しているのは納得できる。皆月先輩や西園寺先輩に話を聞いているのだろう。

 しかしその事について、用事があるというのはどういう事なんだ? 

 樹村先輩の事は、『超研部』にとっては触れてほしくない部分じゃなかったのか?

 更に兎川先輩は言葉を重ねる。僕の動揺を煽るように。


「空君は、恋歌の死が自殺って事は知ってるし、それが『超研部』の誰かの所為だって噂が流れている事も知っている。違うかなー?」

「……いえ、合ってます」


 どうやら僕の行動は、兎川先輩に完全に筒抜けだ。でも『超研部』の誰かの所為だっていう噂は、『超研部』の先輩たちの前ではしていない。

 どうやって兎川先輩はそれを知り得たんだ?


「なんでそれを知っているんだって顔してるね。ぱかんってしてるよ」

「それを言うならぽかんだと思います」

「あれ、そうだっけ。まあいいやー。あのね、私、南沢ちゃんが恋歌の事を調べてるの知ってたんだ。校内で、色んな人に聞き回ってたし。でも何でかなーって、南沢ちゃんと恋歌はそんなに仲良かったかなーって思ってたんだ。でも、それが空君繋がりだとしたら、まあ納得できるかなって。だったら、南沢ちゃんは自分が調べた事を、空君に報告しているんじゃないかなって思ったんだー。どう、合ってる?」

「…………」


 つまり、南沢経由でばれたのか。それだったら、確かに納得できる。だが問題はそこだけじゃないのだ。


「……兎川先輩が知っていた理由は分かりました。でもその事で話があるって、一体何なんですか?」


 そこまで話して、僕は一つの可能性を思いつく。今までなんで考え付かなかったのか不思議なくらいだった。


「もうこれ以上、調べるなって忠告をしたいんですか」


 兎川先輩、いや『超研部』の先輩たちからすれば、僕のやっている事は余計な事だ。それを何とか止めさせたいと、そう思うのは至極当然だ。

 だけど、兎川先輩のリアクションは、僕の予想とは違っていた。僕の問いかけに対し、兎川先輩はなぜか複雑そうな表情を浮かべている。


「うーん、むしろその逆なんだよねー」

「逆?」

「そうそう、ぺっちゃり逆なんだー。あのね、私も仲間に入れて欲しいんだ」

「仲間って、樹村先輩の死について調べたいって事ですか?」

「そうだよー」


 兎川先輩はにっこりと微笑む。美しい笑顔のはずなのに、僕にはそれがなんだかすごく怖く見えた。

 兎じゃなく、それを狩る蛇のように。


「私だって恋歌の死には納得いってないもん。空君が恋歌の事を調べてるって聞いて、じゃあ私もそれに協力したいなって思って」

「……気持ちは分かりました。兎川先輩が一緒なら、心強いです」

「決まりだねー」

「でも、協力って一体……」


 兎川先輩はコーラを思いっきり飲み干すと、僕に顔を近づけた。端麗な顔が近づいて、僕は自然とドキドキしてしまう。そして兎川先輩はいたずらっ子のような、楽しそうでいてどこかあくどい、そんな顔をした。


「情報交換、だよ」

「情報交換、ですか」

「私は、恋歌が死んだ日の詳しい状況を知っている。恋歌が時計塔からどうやって落ちたのか。遺体を発見したのは誰なのか、その他諸々をね」

「なんでそれを兎川先輩が――」

「納得してないって言ったじゃん。私も昔、色々と調べたんだ。兎に角、その情報は空君も欲しいはずだよ」


 ああ、そっか。

 そこまで聞いて、僕は一つの可能性を思い当たった。

 兎川先輩は樹村先輩の死に納得いってないと言った。でも多分それだけじゃない。きっと兎川先輩と僕の考えている事は一緒なんだ。

 姉さんを疑っている。だからこそ兎川先輩は少しでも情報が欲しいんだ。特に、弟である僕の知っている情報を。


「代わりに空君の知っている事を、私に教えてもらう。これでギブアンドテイクの関係だよ」

「……僕の知っている事でよければ」

「決まりだね」


 そこで兎川先輩は顔を離して、僕のコーヒーを指さした。コーヒーに何かあるのか?


「ここじゃなんだからさ、移動しようよ。ほらコーヒー飲んじゃってさ」

「ああ、そうですね」


 兎川先輩の持っている事件当時の詳細な情報にせよ。

 僕の持っている姉さんが疑わしい証拠にせよ。

 こんな人のいる場所でする話ではない。もっと人のいない、邪魔の入らない所でするべきだ。


「でも一体どこに行くんですか」


 公園とかじゃ誰がいるか分からないし、あとはカラオケとか?

 氷が溶けて味の薄くなったコーヒーを飲みながら聞くと、兎川先輩が何てことのない風で衝撃的な発言をした。


「ああ、私の家だよー。今家に誰もいないから、こっそり話できるでしょ?」


 僕はコーヒーを吹き出した。






**************************************




 電車で三駅、そこから歩いて二十分。閑静な住宅街の中に兎川先輩の家はあった。

 綺麗な、外国の街にあるような家だった。真っ白な外壁に、真っ赤な屋根。周りの家から思いっきり浮いているけれど、それを含めて幻想的な雰囲気を漂わせていた。まるでこの家だけ、汚れた空気から隔絶されているようにすら思える。

 つまり僕が行くにはあまりにも不釣り合いで、しかも女の先輩の家という事で、もう心臓と胃が限界だった。


「ほらほら、あがってあがってー」

「……おじゃまします」


 内装も、外観に違わず美しい。こうして中に入ると本当に違う国に来てしまったようだ。

 そのまま兎川先輩の先導の元、僕は兎川先輩の部屋の前まで来た。

 心臓がドクドクしている。姉さんの部屋とは訳が違う、他人の女の子の部屋。


「ちょっと部屋が汚いけど、気にしないでー」


 兎川先輩はそう言って、部屋の扉を開け放った。それに追従して、僕も部屋に入る。

 そして僕は、急激に現実へと引き戻された。


 ちょっと? そんな形容詞は相応しくない程に、その部屋は汚かった。

 よくわからないオカルトグッズに漫画や教科書、そして服や下着の類が床に散らばっていて、なんというか、床に置いてあるのが当たり前ってくらい、堂々と置いてあってびっくりする。

 生ごみとかがある訳じゃないし、そこまで埃っぽい訳でもないのが救いかもしれない。仮にこの部屋が、男子高校生の部屋だとしたら、これくらい普通なのかもしれない(僕の部屋はもうちょっと綺麗だけど)。


 ただ、この部屋に入るまでが綺麗で美しすぎたし、それにこの部屋の持ち主は兎川先輩なのだ。

 生徒会長を務め、ハーフな美人。まさに才色兼備と呼ぶにふさわしい人間の部屋とは、到底思えなかった。

 この部屋を見たら、我が翆玲高校の男子生徒の内半分は気が遠くなる。実際僕も気が遠くなりそうだ。


「……兎川先輩って、整理苦手だったんですね」

「普段はもうちょっと綺麗だってー」

「……普段、どんな感じなんですか」

「漫画は棚に入ってるかな」

「殆ど変わらないじゃないですか!」


 ああ、兎川先輩のイメージが崩れていく。

 兎川先輩が部屋の中央にあるセンターテーブルに向かったので、僕もそれについていく。下着を見ないように、色んなものを踏まないように、気を付けながら進む。


「さあ空君、本題に入ろっか」

「……ええ」


 色々とあったけれど、本来は兎川先輩と真面目な話をするために家に来たのだ。それを忘れてはいけない。

 兎川先輩は机の上に置いてあったA4サイズの封筒を手に取りつつ話を進める。


「さてと、今からする話は、私が事件の後で独自に調べた結果なんだー」

「どうやって調べたんですか」

「警察の人に話を聞いたのが殆どだけどね。知り合いに刑事さんがいるんだよ」

「なるほど」


 それは確実な情報だし、普通じゃ知り得ない事も知り得るだろう。警察にまでパイプがあるとは驚きだけど。

 というかその情報、内部機密じゃないだろうか。


「まず、恋歌が死んだのは去年の六月二十日。だからこの間、一回忌があったんだ」

「……そうだったんですか」

「……話を戻すよ。死亡推定時刻は夜の十時頃。だから夜の内に学校に忍び込んで、時計塔の屋上で死んだとみられているね」


 兎川先輩の話し方はいつもの間延びしたしゃべり方と違って、真剣そのものだった。

 

「ちょっと質問いいですか。 時計塔の屋上に忍び込んだって、鍵の問題があるじゃないですか。時計塔には鍵がかかっていないんですか?」

「そこら辺は後で説明するよ。ただ、その鍵の問題が、恋歌の死が自殺だって根拠になっているんだ」

「それじゃあもう一つ質問です。死因は何ですか?」


 さっきから気になっていた。兎川先輩は樹村先輩の死について、一度も飛び降りという言葉を使ってない。

 もし樹村先輩の死が、飛び降りじゃないのだとしたら?


「樹村先輩は、?」

「……自殺だったのは事実だよ。少なくとも表面上はね。ただ、その形が違ってた」


 形? 自殺に、形があるのか?

 兎川先輩は急に立ち上がった。そして僕を見下ろして言う。

 



「自殺は自殺でも、首吊りだったんだよ」







**************************************





 兎川先輩が立ち上がったのは決して僕を威嚇する訳ではなく、飲み物とお茶請けを持ってくるためだったようだ。

 トレイの上にのせて兎川先輩が持ってきたのは、コーラとポテチだった。これはあれだろうか、僕が男子高校生ゆえのチョイスという事だろうか。

 しかし真相は違っていて。


「私コーラとポテチ好きなんだよねー」


 と、兎川先輩本人が言った。だからと言ってこの場に出すだろうか。というかあなた、さっきの喫茶店でコーラ頼んでいたじゃん。今日二杯目じゃん。どんだけ好きなの?

 ……とは言えず、黙ってコーラを受けとる。ポテチは袋の側面を開いて食べやすいように開けた。そしてなぜか割りばしを渡された。


「手が汚れるじゃん」


 と言われたけれど、だからそう思うならポテチを持ってこないでほしい。

 僕達二人は、ポテチを一通りつまんでから本題に戻る。


「遺体を見つけたは朝練のために学校に来ていた男子学生。当時一年生で、名前は加藤かとう乱麻らんま。時計塔の近くを通った時に変な臭いがする事に気づいて、茂みを掻き分けて時計塔の前に行ったら、遺体を見つけたらしいよ」

「その時の遺体というのは」

「うん。あたりは血まみれで、遺体の損傷もかなり激しかったらしくて。おかげで遺体の外傷がよくわからなくなったとかなんとか。それで最大の特徴が、《首元のロープ》」


 首元のロープ。

 さっき兎川先輩が言っていた、首吊りという言葉と関係があるのだろう。

 

「何でも恋歌は、んだよね。それで時計塔のフェンスにロープを結んで、首吊りをした。そのロープがほどけて、落下した。結果として飛び降りみたいになった。だから噂話も、飛び降り自殺になったんだよね」

「しかし、なんでまた」

「それは犯人に聞いてみないとね。兎に角、その加藤君が恋歌を見つけて、先生に連絡。そこから警察が来て実況見分をした。大まかにはこんな感じ」

「それで、警察は自殺と判断したんですか」

「うん。だって時計塔は密室だったから」


 それはさっき濁された、時計塔の鍵についてだろうか。

 でも密室だなんて、まるでミステリのようだ。


「まず時計塔の鍵だけど、二つあるの。一つは職員室で先生方が管理しているの。もう一つが生徒会で管理している」

「事件当日に、これらの鍵が使われなかったってことですか? だから密室だと」

「それじゃあ入れないじゃん。まず職員室の鍵について、これは使われなかった。そもそも時計塔なんて業者くらいしか用事がないし、その業者だって年一回ちょっとチェックしてお終いな訳だから、ほとんど使われていないの。勿論、事件の前にも使われなかったんだー。それに職員室の鍵は厳重に保管されているし、使用する場合は署名が必要なの」

「なるほど、つまり職員室の鍵を使うのはどうあがいても不可能だと。それじゃあ生徒会の鍵を使ったんですか」

「うん。生徒会の方は職員室に比べて管理は適当だし、それに使用した形跡があったんだー」

「誰かが借りたってことですか。あれ、でも……」


 生徒会の鍵なんだから、その管理は普通生徒会長が行うはずで。そして兎川先輩は一年生の時から生徒会長だった。という事はつまり。


「空君の想像しているのは違うよ。盗られたの。正規の手段じゃなくってねー。私の管理ミスだった」

「…………」

「思うんだ。私がもっと鍵の管理をしっかりしていれば、あんな事には……」


 そういって、兎川先輩は顔を下げる。上手く見えないけれど、その顔は苦虫をかみつぶしたようでいて、今にも泣き出しそうだった。


「……兎川先輩は悪くないですよ」

「でも……」

「悪いのは、樹村先輩を殺した人間です」


 顔を上げた兎川先輩を真っすぐ見据える。ここで兎川先輩の事を抱きしめたりすればそれっぽい画になるんだろうけど、僕にそんな事は出来ない。

 僕にできる事は、樹村先輩を殺した人間を見つける事だ。

 姉さんが殺した証拠を見つける事だ。


「だから一緒にそいつを突き止めましょうよ。そいつに、正義ってやつを教えてあげましょうよ」

「……そうだね、そいつをぱきゃぱきゃに懲らしめてやらなきゃだね」


 いつも通りの、おかしな擬音語を言って。

 兎川先輩は手で目元の涙をふくと、にっこりと笑った。

 

「……続きを話すね。兎に角生徒会の鍵は、そうやって持ち出されたの。そしてそれは時計塔の屋上で見つかった」

「それじゃあ、つまり」

「時計塔の扉は屋上側と地上側の二つあって、二つとも同じ鍵で施錠できる。そしてその扉は、事件当時両方閉まっていた。だからつまり」


 時計塔を施錠できる鍵が二つしかなく、その内の一つは持ち出し不可能。そしてもう一つは屋上、つまり時計塔の中で見つかった。そして時計塔は施錠済み。

 どうやら本当にミステリじみてきた。


「ついでに言うと、近隣の鍵屋さんでその鍵が複製された事実は無かったし、外から時計塔の屋上に鍵を投げ入れるのは不可能。だから警察も事件現場の密室性を考慮して、自殺と断定したんだ」

「…………」

「これで私の話はオシマイ。参考になった?」

「ええ、とっても」


 そこで兎川先輩は一息ついて、屋上を見上げる。いろんな感情が交錯していたのか、元の体勢に戻ったのは五分後の事だった。


「それじゃあ空君の知っている事を教えてもらおうかな」

「……僕の知っている事なんてたかが知れているんですけどね」


 僕はポケットからスマホを取り出して、ある画像を表示させる。それは姉さんのノートを取ったもので、ついでに加工して見やすくしている。

 その画像を、スマホごと兎川先輩の方に持ってってやる。すると兎川先輩の表情はみるみる内に曇りだした。


「……空君。これって」

「……このノートは、姉さんの部屋から見つかったものです。そしてそのノートは、おそらく去年購入されたものです」

「つまりそれって」

「ええ、兎川先輩の考えている通りです」


 兎川先輩と目を合わして、僕は確認する。

 兎川先輩と僕の考えが一致している事を。




「樹村先輩は姉さんに殺された。僕はそう確信しています」

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