温泉旅行なのにほっこりできません!その4


「ジェシカちゃん、雪は悩みがあるの……」


「oh......バストの事ですね?」


 もう雪が何を相談したいか大分前からジェシカちゃんはちゃあんと理解していた。


 雪の胸は他の子と比べると同じかそれ以下。そもそも、中学で発育がいい人って全員じゃないんだって。

 高校に入ってから突然成長したりもするし、大きくなった人が突然しぼむものでもない。


 ──だったら、雪としては早く大きくしたい。何となくだけど、胸は大きい方が服も綺麗に着れる気がする。

 それに、ひろちゃんも雪の事をまな板だってバカにしないだろうし。言われた事ないけど、きっとひろちゃんの友達はみんな胸ありそうだし。


「ユキチャン、ハッキリ言います」


「はい! ジェシカ先生、どうしたら雪の胸は大きくなりますか?!」


「ユキチャン、バストに脂肪付きにくい体質です。あと、ホルモン分泌少ない」


 がーん。

 ホルモンだの、胸に脂肪付きにくいと言われたらやっぱり大きくするのは難しいのかなぁ。


「どうすればホルモン分泌するんですか!?」


「ンン……Sorry、女性ホルモンの事はよく分からないね……ユキチャンのママ、nurseさん。聞いて見るいいね?」


 そうだ! ママは看護師さんだった!

 旅行から帰ったらママに胸を大きくする方法聞いてみよっと。ひとつ解決策が見つかったものの、雪はやっぱり早く大きくしたい。


「ユキチャン、胸は好きな人に揉んで貰うと大きくなるです」


「そ、そうなの!? ひろちゃん教えてくれなかったよ!」


 数年牛の力で大きくなると騙されてきた雪はショックだった。ひろちゃんが雪を騙した。ひどい。


「ミルクもいいでしょうけど、全然解決にはならないね。バストアップはストレス解消と睡眠、栄養、筋トレです」


 睡眠は十分とってる。ストレスだってない。栄養は……確かに偏りがあるかも知れない。筋トレは毎晩ジェシカちゃんに教わった体操をしている。


「雪、やれる事全部やってるのに全然胸が大きくならないのは、揉んで貰ってないからなんだ……」


「誰でもいいわけではありません〜。ホルモン分泌するのには、好きな人とする事が大切です」


「ひろちゃんの所行ってくる!」


 雪を散々牛さんで騙した罪を償ってもらわないと!

 ひろちゃんは雪の胸を大きくする責任があるんだから!


 プリプリしながら部屋を出ると、端の方にカメラを持った男性が5〜6人固まっていた。


「あっ、例の子だ。ちょっと話しを聞いてもいいかな?」


「ここにジェシカ=マキノが泊まっているはずなんだけど、君はジェシカの友達だろう?」


「いやぁ〜、君も可愛い顔してるねぇ。プライベートショットに少し写ってたけど、実物はもっと可愛い」


 なになに、この人達ジェシカちゃんの追っかけ!?

 ええと、確かひろちゃんは受験があるからスキャンダルは絶対にダメだって言ってた。

 このフロアにはひろちゃんの泊まってる部屋があるし、こんな追っかけに捕まってジェシカちゃんにも迷惑かけたくないし、何よりもひろちゃんには絶対に嫌われたくない!!


「……あなた達は、ジェシカちゃんの追っかけですか?」


「いや、専属カメラマンって言った方が近いかな?」


「カメラマンって事は、雪の胸を大きくしてくれるんですね!?」


「えっ……」


 突拍子のないことを言われたカメラマン達は互いに顔を見合わせた。

 でも雪は本気。何よりも、ここでこの人たちをこのフロアから追い出さないと!


「ジェシカちゃんはあんなにお胸が大きいのに、なんで雪は胸が無いんだろうって話ししてたら、揉んで貰ってないからだって言われた。ジェシカちゃんの専属さんなら、雪を助けてくれますか? ねえ!」


「え、えっと……」


「ちょっと急用が……」


 雪の剣幕に負けてカメラマン達は後ずさりしながらエレベーターに我先にと逃げ込んでいった。


「ちょっと! 雪の胸大きくしてよおお!」


 エレベーターは虚しく閉まり、カメラマン達は何も収穫なく身の安全を第一に逃げ去ってしまった。

 結果としては雪が変な大人達を撃退した訳だから良かったんだろうけど、どうして誰も雪の胸を大きくしてくれないんだろう……。


「何か騒がしいけど、誰か倒れたのか?」


 ひろちゃんが部屋のドアを開けて周りを確認していた。35階は他の人が居ないはずだから心配したんだと思う。


「ひろちゃん! 雪に嘘ついた!」


「は? な、何?」


 身の危険を感じたのか、ひろちゃんは雪が近づいた瞬間部屋のドアを閉めちゃった。もう〜! せっかくここで入れると思ったのに!


「ひろちゃん、牛さんじゃ胸大きくならないってジェシカちゃん言ってたよ! 責任取ってひろちゃんが雪の胸大きくして!」


「んなの無理に決まってんだろ! 胸の大きさなんて生まれつきで違うんだよ! 俺にどうこうできたら苦労なんてしないって!」


「ひろちゃんが雪の胸小さくした〜。ひどい〜! 責任とってよぉ〜!!」


「責任は俺じゃねえし。いくら泣いてもそういう事は一切知らないからな」


 ひろちゃんの部屋の前でいくら泣いても全然出てきてくれなかった。いつもだったらすぐに出てきてくれるのにひどい。


 お家に帰ったら絶対に雪の胸大きくする為の責任取ってもらうんだからっ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る