サンタさん


12月24日 天気、はれとゆき。


おうちにサンタさんがきました。

おねがいはまたらいねんもしてみます。いいこでいます。

ひろちゃんはユキとあそんでくれます。



────


「ジングルベール、ジングルベール! すーずーがーなるぅ〜」


「……雪はご機嫌だなあ」


俺は3日前からクリスマスツリーを押し入れから出して雪と一緒に飾り付けをしていた。

サンタクロースというものが本当に日本に来るのか俺は信じていない。

だが、不思議な事に靴下を枕元に置いておくとプレゼントを入れてくれるとか何とか。


「ねーねーひろちゃん! サンタさんにお願い事書いた?」


「七夕じゃないんだから、紙に書いて通じるのかね……」


雪は飾り付けの中に不格好なひらがなでお手紙をサンタさんに書いていた。


「ああー! ひろちゃんダメだよお、お手紙はサンタさんが読むのっ!」


「なんだよ、別にいいじゃん」


「ダメだよお! ユキとサンタさんのお手紙なんだから!」


「ちぇっ……」


一体この雪音がサンタさんとやらに何を書いたのか気になる。俺は勿論新作ゲーム一択だ! 今流行りの冒険RPG、ドラGクエスト!

あれが手に入ったら妹の面倒を見なくても済むだろうし、雪音ももしかしたらゲームにハマって俺とじゃれなくなるかも知れない。


「ひろちゃんはサンタさんに何お願いしたの?」


「俺はドラGクエストだよ! 学校で大人気のゲームなんだ。冒険して魔王を倒す王道のRPGだよ、すげー欲しいんだけど、そんなのサンタさんが聞いてくれるのかな」


「えっとねえ、パパが、イイコイイコにしてねんねしたらサンタさんがぴゅーんってトナカイさんと来てくれるらしいよ!」


「何で寝てる間に人の家に入ってくんだよ。大体うちは4階だしどう考えても無理じゃねーか。玄関だって鍵閉まってるし、外から入るって……煙突か?」


「だってだって! 本に書いてたもん! サンタさんは煙突から来るって。嘘じゃないもん!」


また雪は泣きそうになっていた。否定するのも可哀想なので、俺はきっとサンタさんは煙突から入ってきて、雪の手紙を読んでくれると伝え何とか誤魔化した。


そして当日の朝。俺はサンタさんとやらをどうしてもこの目で絶対に見たかったのでいつもより早く起きた。すると、家の中に黒い足跡が残されており、俺は一瞬泥棒でも入ってきたのかと焦った。


「なんだよ、この足跡! 母さん、雪、大丈夫か!」


「あらぁ、良かったじゃない弘樹。サンタさんからプレゼントが届いているわよ」


「えっ! マジで!?」


煙突の下にある黒い大きな足跡が気になったが、それよりもツリーの横にそっと添えられたプレゼントに俺は飛びついた。


「うわあああっ! すげー! ドラGクエストじゃん!! サンタさんマジでありがとう〜っ!」


ゲームは1日2時間までと母さんに咎められたが、それでも嬉しい。

これでクラスの友達との会話にも入れるし、何よりも冒険もののゲームは楽しい。

いつもは友達の家に遊びに行かないとゲームは出来ない。雪がまだ小さいので1人にもさせられず、俺は遅い時間まで友達と遊ぶ事も出来なかった。

もしも雪が弟なら連れ回せたり外で遊べて良かったのかも知れないが、こればかりは仕方ない。


「サンタさん、ユキの手紙読んでくれたあ〜!」


寝坊助雪の嬉しそうな声に俺はあいつは何を貰ったのだろうかと背中を見つめた。手には何か手紙らしいものを持っている。


「雪、サンタさんから手紙貰ったのか?」


「うん! ユキね、サンタさんに手紙書いたの。お返事もらったけど、これ英語ってやつで全然読めないの。ひろちゃん読んで」


「ええぇ……俺も読めないよ。かあさーん……」


筆記体で書かれた雪音への返事は家族を大切にしている雪への感謝が綴られていたようだ。

しかし、返事にも記載されていたように雪が書いたお願いである『ひろちゃんとずっと一緒に遊びたい』は流石のサンタさんでも叶えられない事であると返事されていたらしい。


代わりに雪が集めているカエルのぬいぐるみの違うバージョンがお詫び?として届けられていた。それはそれで嬉しかったようで雪はキャッキャとカエルを抱き抱えて満足そうにしていた。

ただ1つだけ思うのが、何故カエル。普通はもっと可愛いものを頼むんじゃないのか?

確かにあのカエルのぬいぐるみは円な瞳で可愛いようにも見えるが、もっと女の子が欲しがりそうなぬいぐるみって別にあるだろう。

本当に雪は何を考えているのかよく分からない。

なんで雪は友達を作らずに、いつまでも俺にくっついてくるんだろう? 俺だって学校の友達と遊びたいのに。

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