五枚目.会ってみたい


「あれ?言ってなかったっけ?」


雫は目を丸くしてカレーを頬張る。


「へ、え?」


「あーーそっかぁ、人魚の件があった時ってあなたまだ生まれてなかったものねぇ…。そうか、すっかりわすれてたわ。」


何を平然と言っているんだ私の師匠は。

かほるは自然とまゆと口が引きつっていた。


「い、いるんですか、人魚。」


「いるわよ?まぁ山の奥の方だけどね。よく薬を届けに行ってたりしてたし。てっきり話してるものだと。」


そっかそっかぁ、はなしてなかったかぁ。と言いながらどんどんとカレーは雫の口の中へ。

そんなにフランクな話なのか。もっとこうニュースになるようなことではないのか。

かほるの脳内がごちゃごちゃといっぱいになる。


「そんなに気になる?人魚。」


「そ、そりゃあ!気になりますよ!!物語でしか見たことがないんですし!」


身を乗り出し、目をキラキラと輝かせる。

ふぅとなにか一呼吸おいて雫の口が開いた。


「まぁそろそろあってみてもいい頃かもね。」


「え?」


「わかったわ。明日動物達に薬を届けるついでに行ってみましょう。」


コトンとスプーンを置き、雫は水をグビッと飲み干した。

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夏の鱗 海山 そら @srtnum

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