四枚目.初耳
そもそも人魚っていうのは海で生活しているものでは無いのか。せいぜいあっても川ぐらい…。人魚って川でも生きていけるものなの?…
ぐるぐるぐるぐると頭が人魚でいっぱいになる。
「かほる?」
だいたい人魚なんて、生まれてこの方見たことないし…。もしかしたら動物にしか見えないものなのかも…。でももし、あの森に人魚がいるなら。
「かほる!」
会ってみたい。
「かほる!!」
「は、はいっ!」
人魚への想像がすぅっと消え、雫の顔が視界に浮かぶ。
「どうしたの?もしかしてお腹すいてない?」
心配そうに、どこか不思議そうにかほるの顔を覗く。
「あっ、いえ…。」
木のスプーンをぎゅっと握りしめる。
「何かあったの?」
あの森って人魚がいるんですか?
そんなこと、こんな真剣な眼差しの人に聞けるわけない。
「いや、あの。」
「言ってみなさい。なにか解決するかもしれないでしょ?…。それとも私に言えないようなことなの?。」
「ち、ちがいます!。けど…。ひ、引きませんか?。」
「何言ってるのよ。かほるのことならなんでも受け止めるわよ?私は。」
笑っていながらもどこか確信をもっているような表情で身体を前に倒した自分の師匠にかほるは一呼吸置き、声を出した。
「あの森って、人魚が住んでいるんですか?…。」
少しの沈黙。キョトンとする雫。
あぁ、やっぱり頭のおかしい子だと思われた。この感情の行き場のなさに思わず目を背ける。
「あれ?言ってなかったっけ?」
はい??
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