第5話【真実と過ち】

それからすぐ私たちは家を出て墓地へ向かった。

時刻はもう22:00をとっくに過ぎていて外は真っ暗だった。桜の墓前に近くなるとその周辺は蛍が綺麗に光ってた。その中で一際大きい光を放つ蛍が桜の墓石に止まった。私はなぜかそれに引き寄せられるように手を伸ばした。すると強い光が私たちを包んだ。私は眩しさのあまり目を瞑った。


目を覚ますと懐かしい校舎の中にいた。

そこは私と涼介が通っていた中学校だった。

場所は体育館裏。

ガツン、ドン!という音がしたので奥のそちらの方を見やるとそこに桜がいた。

クラスメイトからいじめられている。

私達は困惑した。

「あれが桜って子か?てかこれはなんなんだ?」

優馬が焦ったように私に聞く。

だけど答える余裕もなく私は桜の方に走る。

「やめて!桜をいじめないで!桜!私よ!」どんなに桜や周りに問いかけようと届かない。

私達は見えてないのだ。

涼介や2人も私の後を追いかけてきた。

「向こうからは俺たちは見えてないみたいだな…でも桜が…。やめろよ。なぐるなよ!」どんなに騒いでも届かない聞こえない止められない。

するといじめてる中の1人が言う。

「桜知ってる?あんたの友達の楓と涼介くん付き合ってるのよ?あんたがこんなんになってる今も2人は仲良くイチャついてるだろうね~。あんた涼介くん好きなんでしょ?でも向こうからしたらあんたの方が邪魔ものよ。二人でいたいのにあんたがついてきて。二人は桜の味方だーとか言ってるけど実際建前で本当はもっといじめられて欲しいのよそしてあんたに消えて欲しいのよ!だから結果的に二人もあんたをいじめてるってこと~笑」

愉快げに憎らしげに楽しげにそいつは言った。

と同時に桜は青ざめて泣き始めた。

「二人も最悪だねぇ~親友がいじめられてるのに幸せそうに。特に楓なんてあんたが涼介くんのこと好きだってわかってたのに横取りした女よ?ほんと淫乱よ!可哀想に桜ちゃん~。裏切られちゃって~。

いっそ死ねば?笑笑」

そう言い放っていじめてた奴らは高笑いしながら去って行った。


「私そんなひどいことしてるつもりじゃなかったのに…」

「きっとあの子達デマを吹き込んだのよ。ほんと最低!」あかりが珍しく声を上げた。こんなに怒っているあかりは見たことがない。


少しした後桜のスマホにメッセージが入る。

それは私からで大切な話があるから私の部屋に来てという内容だった。

そうこれから桜は本人達から付き合ってることを聞く。そして絶望する。2人までもが自分を邪魔としいじめ、死んで欲しいと思ってるのだろうと勘違いする。そして桜は死んでいくのだ。

絶望と憎しみのあまり自ら命を絶ったのだ。


「これが…本当のこと…。これが真実なのか?!なんで?!俺たちは本当に桜の味方だったのに!消えて欲しいなんて全く思ってないのに!なんでだ?!おい!うぁぁぁーーーー!!」

大声をあげて涼介が泣きながら校舎の壁を殴る。

何度も何度も。

「やめろ!涼介!手が…」優馬が涼介の身体を掴み殴るのを止める。

涼介の拳からはたくさんの血が流れていた。

「こんなん!こんな痛み桜の痛みと比べたらゴミみたいなもんだ!」

私達は泣き続けた。


周りがまた明るくなって、校舎が遠のいて行く。

気づけば私達は桜の墓の前に戻っていた。


なぜ桜が死ななければならなかった?

どうしていじめたの?

どうして私はもっとちゃんと止めてあげられなかった?

なぜデマなんて…っとそう思ったときハッとした。

私は…桜が涼介を好きだということ、何度も告白する勇気があること、私にはチャンスが回ってこないという不安、取られてしまうという焦りと嫉妬から

思ってしまった。

「桜が邪魔だ、桜がいなければ独り占めできる。」と。いじめてたクラスメイトが言ってたように私は桜を邪魔者だといらないと思ってしまったことに気づいた。


私はなんてことをしたのだろう。

味方だ、親友だと綺麗事をならべ、いじめられている桜を助けて、自分は桜より上だと優越感に浸り桜を見下していた。

桜に会いたい。そして謝りたい。許してもらえなくてもいい。どんなひどい言葉を受けたっていい。私は桜にひどいことをしたんだと言いたかった。


どうか神様。今日は七夕でしょう?

織姫と彦星が会えるのなら、私たちが会うことだってできるでしょう?お願いします。合わせてください。

私は必死に星空を見上げて願った。

桜に会いたい。

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