第4話【夏の日 後編】
「…。」沈黙が続く。
2人は驚きを隠せないように見えた。
そう私たちは少しの間付き合っていた。その時は本当に幸せだった。好きな人と両思いになれた。そんな気持ちばっかり前のめりになっていた。
「それからどうしたの?」あかりが問う。
私は口を開く。「桜は何回か涼介に告白していたのよ。そのことは私も知っていた。相談を受けていたから…」
そう。相談を受けていた桜に私は言えなかったのだ。私も涼介が好きだったと。
「そのことを桜に伝えたら桜は楓に向かってこう言ったんだ。……“裏切り者”……」
私はそのことを思い出してさらに息苦しくなる。
湿った部屋から酸素が奪われた部屋に様変わりしたようだった。
“裏切り者” そう言い放った桜の後ろにある窓から見えたのは、大きくて長い妖艶な飛行機雲だった。
「桜はそう言い放ったあと楓の部屋から出て行った。桜は自分の家に帰って部屋にこもった。
俺はあの時言葉とその情景が未だに残っている。きっと楓もそうだろう?」
私は小さくゆっくり頷いた。
「そのあと桜って奴どうなったんだ?」と優馬が聞く。あかりも気になっていたかのように目を大きくして涼介が話すのを待っていた。
しかし涼介が口を開く前に私が言った。
「次の日、七夕の日になっても桜は部屋から一歩も出でこなかった。食事もとらず、物音立てずに部屋にこもっているのは心配だと両親がスペアキーでドアをあけたの。その時も私たちは一緒にいたわ。ドアを開けると桜が…桜が…首を吊って死んでいたの…。」
なぜ死んだのか今となっては桜には聞けない。
だけど私と涼介が付き合ってることにショックを受けたことには変わりがない。
親友として幼馴染として私はもっと早く桜に素直に伝えるべきだった。言わなきゃ伝わらないことがあるのに。
七夕の夜に桜は星になった。
私たちに特に私に裏切られて死んでいった。
桜を支えてあげられなかった、信じてやれなかった、自分の幸せばっかりに目が眩んだ。そもそも涼介と付き合わなければ…桜は死ななかった。
数日後の桜の葬式で涼介も同じことを考えていたのか別れを切り出した。
ほんとは今でも大好きなのに、私は涼介と別れた。
こんな話一生誰にも話すつもりはなかったのになと思いながらまだ戸惑っている優馬とあかりを見やった。
墓場までもっていこうと思っていたが、2人にバレたこともあるがもしかしたら2人に、親友の2人に話すことで何か、何かが変わる気がした。
すると空気を変えようとしたのか、ふと思いついたようにあかりが提案する。
「さっき、私たちが邪魔しちゃったからお墓まいりちゃんとできてないね。一緒に4人一緒に行こう?
私達は何があっても2人の味方だから!」
優馬も頷いた。
確かに花を置いただけで手を合わせてない。
こんな私にできることは墓前に手を合わせて必死に謝ることだけだ。
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