第2話【七夕を祝えない人間】

目が覚めるとそこは自分の部屋だった。

リビングにいき母親に聞くと、涼介がおぶって来てくれたそうだ。自分のスマホを確認すると何通もあかりや優馬や涼介からたくさんのLINEが入っていた。

みんなに心配をかけて申し訳ないと思うとともにあの飛行機雲を思い出しまた恐怖心にかられるのであった。涼介のメッセージを開くとこう書いてあった。

「大丈夫か?やっぱりあの日のことか?俺もあれを見た時気持ち悪くなったよ…。ホントそっくりだよな…。」

やっぱり涼介もそう思ってたのか。

あれは本当に憎たらしいほどにあの日に似ていた。


「ついに明日は七夕だ。」私はため息とともに声をかけもらす。


その日はなかなか眠りにつけなかった。


翌朝、私は学校へ行く。

今日は晴天で雲ひとつない。

穏やかな風が吹き、私が学校へ行きたくない気持ちを後ろから後押しする。


学校へ着くとすでに3人は来ていて、あかりが真っ先に私の元に走って来た。

「楓ちゃん!大丈夫?!びっくりしたよ急に倒れたから!どーちゃったんだろう?やっぱり体調わるかった?今日部活休む?」泣きそうなほど心配そうなあかりの顔を見てほんとに迷惑をかけてしまったなと思った。

優馬も彼らしくなく挙動不審できっと彼も心配してくれてるのだろう。

「ごめんね心配かけて。今日も部活いくよ。あ、でも帰りは4人で帰れない。涼介と行く場所あるから…。」と私は優馬とあかりに言う。

2人は一瞬顔に笑みを浮かべたが「わかったよ。」と言った。何か勘違いしてそうに見えたが突っ込む気力はなかった。

「部活無理すんなよ?今日は体調大丈夫なのか?」珍しく優馬が心配の言葉をかける。

「…。」なんと答えようかと考えてる途中にチャイムが鳴り話は打ち消された。

内心ホッとした。まさか2人に昨日以上に今日は憂鬱だなんて言えない。


その日の授業は先生の声が遠くに聞こえて、ぼーっとしてしまう。授業の内容なんて全く入ってこない。私は窓の外を眺め続けていた。


はっ。と我にかえると体育館でボール拾いをしていた。時計を見ると5時50分を指し、もうすぐ部活が終了する。ぼーっとして私は何やってるんだと思った。そこへあかりが来て「今日は七夕だね!今日は天気がいいからきっと綺麗な星が見れるよ!」と嬉しそうだ。私は「うん。」としか言えなかった。


部活を終えた涼介とある場所へ向かう。

その道の途中で花屋に寄って白い百合の花を買った。

夏の光に反射したその白い百合の花は儚く、白々しかった。


私は歩きながら数メートル先を歩く涼介の背中を見ていた。日焼けした肌に大きな背中。昔は私の方が背が高かったのになと思い出す。七夕は私たちにとってはお祭りごとではない。どんなに七夕を祝いたくても祝ってはならない。そんな資格ない。私たちは織姫と彦星の幸せを願えない。そんな人間なのだ。


目的地が近づくにつれ空気が重くなる。

大きな柳の木が風に揺らされている。


目的地に着き足を止め白い百合の花をその場に置いた時後ろから声が聞こえた。

「なんで、なんで2人がこんな…こんな墓地にいるの?」そこにはあかりと優馬だった。

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