七夕の夜また君に逢いにいく
坂本ハル
第1話 【妖艶な飛行機雲】
夏の暑さと目がくらむほどの光で私は目を覚ました。
風鈴の音が部屋に響き、眩しいからと閉めたカーテンの隙間からは鬱陶しいほどに強い光が差し込んでいる。
7/6 翌日を七夕と待ち控えた今日。
いつも通り学校へいくためにいつもと同じ制服をきて、小学校の頃から変わらないポニーテールをキュッと結わき、朝食を食べ、通学路を歩く。
この1つ1つがルーティーンのように毎日繰り返されている。だが今日だけはいつもとは違う。
いや、今日だけという言い方は誤ちだ、正しくは今日と明日だ。
一年の中でこの2日間だけは私にとってはいつもとは違う。仮に他の363日を日常と言うのなら、この2日間は非日常と言えるのかもしれない。
七夕に呪われている。
通学路を歩いている途中で見知った顔に出会う。
いつものことだ。
幼馴染の涼介と高校で出会った親友の優馬、あかりだ。
おはようとお互いに交わし学校へ向かう。
東京 新宿。東京の中でも都会に位置するそこに私たちの学校はある。
みんな当たり前のように、また楽しそうに学校に向かう人々をみて私は思う。
「学校なんかある意味そこに閉じ込められた箱庭じゃないか」と。そんな皮肉なことを思う私をさらに自分自身で嫌になる。
学校に着くと半分くらいの人がすでに来てた。
私は窓側の1番後ろの私の席に着く。
そして窓の方を眺め、青空を、憎い青空を仰ぐ。たとえ今誰かが死のうともこの世界は回り続ける。
「楓ちゃん、今日顔色悪いけど大丈夫?夏バテ?」とあかりが心配そうに私の名を呼ぶ。
あかりは学校でも有名な美人の1人だ。そんなあかりに心配されたら私は眩しくてまたそんなあかりと親友になれたことに光栄に思い嬉しくて元気になれる。
「そうだぞ、楓!明日は七夕って言うのに夏バテとか虚しすぎるだろ。」優馬が言う。私を圧倒するほど元気な優馬。
「あんたほど元気な奴はいないよ」と冗談気味に私は返す。わはは!と優馬は豪快に笑い涼介の方を見やる。
「そーいや涼介も顔色わるいな?ラブラブカップルは仲良いな」とバカにする。
「カップルなんかじゃない!」と私と涼介は声を揃える。
それをあかりと優馬はニヤニヤしながらこちらを見る。私は恥ずかしくてたまらなかった。
そう、私たちは付き合っていない。だけれど私は小さい頃から涼介のことが好きなのだ。だけどこの想いは2度と届くとはない。
2度と。
授業が終わり私とあかりは部活のバレー部に向かう。涼介と優馬はサッカー部で一年生の中で2人だけスタメンなほど強い2人だ。2人がサッカーをしている姿はかっこいい。私は部活の休憩時間窓から校庭を眺めるのが好きだ。
「楓ちゃん、いくら涼介くんがかっこいいからって部活中によそ見はいけないな~」またニヤニヤしている。
「涼介なんて見てないし!ただぼーっとしてただけだよ」また私は恥ずかしくなってしまう。
集合の声がかかり私たちはその場を離れた。
部活が終わり私とあかりと涼介と優馬で帰る。
家が4人とも近い。
帰り道は6時と思えないほどに明るく、蒸し暑かった。歩く途中で明るい空が夕焼けに変わっていくのがわかる。すこしずつ青かった空がオレンジ色に染まっていく。所々に青を残した空がとても綺麗で、幻想的だった。
ふとあかりが声を上げる。
「みて!すごく綺麗な飛行機雲!」一斉にあかりが指差した方向にみな目線を向ける。
そのとたん私の心臓が大きな音をたてた。
あの日にそっくりな中々見られないような大きく長い妖艶な飛行機雲。私は途端に青ざめた。見たくない。思い出したくない。怖い。そこから記憶が途絶えた。
私は気を失ったのだ。
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