『檸檬』

黄色い物体が八百屋に売れていた。

おっちゃんが「そいつは檸檬という果物だ」と教えてくれた。

面白い。そう思い、一つ買うことにした。


黄色い物体の名は、檸檬。

酸っぱい香りを漂わせる。


今日は、檸檬たるものを買った記念すべき日だ。

今度来た時、八百屋のおっちゃんにお礼をしなければ。

そんなことを考え、デパートへ向かった。

いや、デパートよりも本屋の気分。


檸檬。本棚。本。

只ならぬ空気が、黄色い物体の周りを漂う。漂う。漂う。


これは……


ふと、檸檬を本棚に置いておくことを考えた。

そうして、何食わぬ顔顔で立ち去る。

想像しただけで、興奮する。


異物のような黄色い物体。

そして、酸味を感じさせる香り。

これこそが、私の望んでいたことなのだろうか?


では、実行に移るとする。

周りに店員がいないことを確認し、目の前の本棚に置く。

すると、これは……想像以上だ!



檸檬を本棚に置いたことによって、彼は異世界へと行転送されてしまった。

嗚呼、これこそ悲しき世界かな?


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