第7話

数時間後、僕の意識は覚醒した。もちろん、自分からおきたかったわけじゃないんだけれども。

『ハル、電話鳴ってるよ』

 渚が眠そうに僕のことを起こしたからだ。とりあえず携帯電話を持ち、通話する。

「どちらさまでしょうか?」

『夜分に申し訳ないね。桜木龍馬だ』

「それで何かあったんですか?」

 このときの僕は寝起きでそこまで頭が回っていなかったんだと思う。じゃなければこんな夜に緊急以外の電話がかかってくるはずないんだから。

『廃ビル街を見張っていたうちの工作員が西洋教会にやられた。今廃ビル街で戦闘が始まってしまった。有馬くんや晴樹君、晴香君も出頭している。かなり大規模な戦闘になるかもしれない。うちの社員の魂鬼も何人かもうウイルスの感染にあっている。今すぐ現場に出頭してもらいたい』

「……わかりました。今すぐ行きます」

『頼んだよ。君には期待している』

 電話を切る。そしてベットから跳ね起きる。

「渚、準備しろ」

『わかったよ』

 僕は家の地下倉庫に向かった。ここなら多少の呪具が残っているだろう。ドアをこじ開ける。狩衣を着ている時間はないだろう。とりあえず護符の入ったホルダーを腰に巻きつける。そして、

「八咫烏、力を貸せ!」

 奥にいる三本の足を持つ黒き鴉を呼ぶ。その鴉が僕の肩に止まり、ひとつのコートになる。黒と黄色のコートを制服の上から羽織り、そこにあった刀を取る。

「迦具土、来い!」

 刀を手元に引き寄せる。腰のベルトに巻く。

「行くぞ、渚!」

『了解!』

 僕は地下から出て走り出す。電車に乗っていけるほど余裕はない。民家の屋根に飛び移る。そして走り出す。

『ハル、あれ使ったほうがいんじゃない?』

「二年もやってないのできるかわからないだろ。でも、やるしかないか」

 僕は一度息を吐き、足に意識を集中する。

「我が枷を解き放て。急急如律令」

 僕の霊力が言霊により解放される。霊力の開放と同時に左眼が深紅に染まる。

「霊脈を辿るは我が脚なり。兎歩」

 霊脈とは、霊気が収束するものだ。そのため、霊脈を辿れば霊気のある場所に出れる。あの現場では相当な霊力が使われているだろう。僕は霊脈にリンクし、あの現場にでる。そこには地獄絵図のような戦場が広がっていた。戦火があたりを覆っている。これ以上外に被害が出ないよう結界を張る陰陽師が僕に声をかける。

「お前は何者だ?」

「桜木さんから応援要請をもらってきました、安倍晴彦です」

「焔の神童か。心強い、頼んだぞ」

「わかりました」

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