10ー2「地上」

 水が止まると、かなりの段差がある所に扉が現れていた。

 その扉には犬の絵が描かれていた。

 案の定、何かをはめる丸い穴がある。

 犬のメダルをはめた。

 ドアを開くと、鍵と地図があった。

 地図には印がしてあった。

 「この地図の印の所で、この鍵を使うようだな。」

 「とにかく行ってみましょう。」




 地図の印の所に行った。

 そこには手の届かないところに梯子があった。

 すぐ横に鍵穴があり、鍵を差し込むと中にはハンドルがあった。

 ハンドルを回すと、梯子が降りてきた。

 「これで地上に出れますね。」

 「ああ、愛美達を読んでこよう。」




 戻る途中に、制御室に立ち寄った。

 「水を流しておこう。」

 「そうですね。」

 水をAルートに設定し、部屋を出る。

 「!」

 研介は何かに気が付いた。

 「龍一!しゃがめ!」

 研介はそう言うと、ナイフを取り出した。

 龍一はしゃがむ。

 龍一の頭上にナイフが横切り、血しぶきが上がる。

 ナイフが当たったものは、蜘蛛だった。

 50cmはある蜘蛛だった。

 蜘蛛は壁に着地すると、跳ね、今度は大斗の前に行った。

 そして、大斗に飛び掛かる。

 大斗は、そのタイミングを計り、蹴りを繰り出した。

 蜘蛛は倒れる。

 しかし、今度は蜘蛛が周りに集まってきた。

 「うざい奴らですね、片付けましょう。」

 「その方がいいと思います。」

 「全く、しょうがない。」

 3人は銃を構える。

 そして撃つ。

 「龍一、こうゆう小物を相手するときは、ショットガンにしておいた方がいい。」

 ショットガンに持ち替える龍一に、蜘蛛が飛び掛かる。

 大斗はその蜘蛛の口にショットガンを突く、そのまま発砲する。

 蜘蛛はバラバラになり、肉が飛び散る。




 蜘蛛をあらかた倒し、小部屋に戻る。

 「地上に行ける様になりました。」

 「やっとここから出れるわ。」

 「よし行こう!ほら、舞ちゃん、立って。」

 「う、うう…」

 「泣かないで下さい、舞さん。」

 「そうだよ舞、泣くなよ。」

 大斗はため息をつくと、口を開いた。

 「いつまで泣いているんだよ!」

 大斗は舞に近づき、さらに言う。

 「仲間が一人でも暗くなると、全員が暗くなるんだ。お前が泣いても、誰も得はしねえ、逆に支障が出る。」

 そして大斗は舞に背を向ける。

 「分かったら涙を拭け。グダグダ時間は無いんだ。それに…お前らに涙は似合わない。」

 舞は涙を拭いた。




 マンホールを開け外に出ると、そこには見知らぬ男性がいた。

 「誰だ。」

 男性は答える。

 「俺は総理に雇われたエージェントだ。悪いが、お前らの腕を確かめさせてもらう。」

 男性はそう言うとハンドガンらしきものを取り出し、くるくると回す。

 その途中に龍一は攻撃を仕掛ける。

 男性は銃を回すのをやめ、引き金を引いた。

 それは見事龍一の頭部に当たり、その場に龍一は倒れた。

 「てめえ!」

 大斗がハンドガンを取り出すと、男性は発砲した。

 それはハンドガンに当たり、大斗の手からハンドガンが離れる

 「安心してください、麻酔銃です。」

 その後は両者共に動かなくなった。




 少し時間が過ぎた時、優理が何かを思い付き、舞を押した。

 「え!?何ですか!?」

 舞はそのまま男性の前に行った。

 そして不思議そうに首を傾けた。

 男性は言った。

 「何じゃこりゃあ…何じゃこりゃあ…何じゃこりゃ…何じゃこりゃあ…」

 「?」

 「これぞまさしくTPOを心得た者、まさしく天使かこりゃぁ…ぐは!…あ!」

 舞は男性の腹に弱いパンチをしたが、上手く溝に入った。

 その後、今さっきまで寝ていた龍一が、男性の右側に立つ。

 そしたらまず男性の腕を掴み、左手で顔面を持つ、左足で男性の膝裏を支えると、そのまま直投げをした。 

 男性は後頭部を打ち、気絶した。




 男性が目を覚ました。

 「すいません嘘です、只の一般人です。」

 「それで、何故私達を襲ったんですか?」

 「なんとなく、麻酔銃だからいいかなって。」

 「お前の敗因は言わなくても分かるよな。」

 「だけど、射撃の腕には確かなものがあったわ。」

 「こう見えても、FPSで鍛えているんでね。大会で優勝したこともある。」

 「もしかして、あの{動体視力の人}と恐れられている人では?」

 「ああ、そうだが?」

 「ところでまだ名前を聞いていないんですが。」

 「名前など戦場では意味がない。」

 「言って下さい。」

 「おお、舞ちゃんがキレ気味だ。」

 「はい、俺の名前は中田信太です。」

 「よく変な人が残るな。」

 「そうですね。」




 その時、声がした。

 「おっ、地下から出てきたか。」

 優理と舞はその声に覚えがある。 

 「ダリエル?」

 「ああ。」

 ダリエルが裏路地から出てきた。

 「お前がダリエルか。」

 「何しに来たのよ?」

 「いや、何でもない。人が増えてるな。」

 「そうですね。」

 「あ、そうだ。学校の件はこちらの者がすまなかった。」

 「そういやチェンソーを止めていた奴がいた。」

 「チェンソーを止めた?…アイツか。」

 「知っておられるんですね。」

 「いや、俺もよくは知らない、あまり聞かされていないんでな。それでは。」

 その瞬間、スモークが立ち込め、ダリエルは消えてしまった。




 北へ少し移動した所。

 「ここが校長の家らしいです。」

 「うわあ、俺のと全然違うよお…」

 「そりゃあそうよ。」

 和風で、少し大きな家だった。

 敷地に入る門は車で塞がっており、ゾンビが入ることは難しい。

 空を見ると、太陽が雲の僅かな隙間から見え、それは西に傾いていた。

 「丁度良い、ここで一泊しよう。」


 


 家の中にはゾンビも生存者もいなく、更に荒れてもいなかった。

 全員はハンドガンとアサルトライフル以外の装備を置いた。

 ちなみに佐々木はリビングのソファに寝かしており、研介と大斗が話しながら見ていた。

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