55「終わりと始まり」

 研介達は階段を上っていた。

 だが、最上階まであと少しというところで、窓ガラスを割り、怪物が入ってきた。

 四足で立っているが、手にはハンマー男のハンマーが握られていた。

 人の顔と思わしき部分は、信太が殺した観測手の顔の面影が残っていた。

 しかし、そんなことは研介達は知らなかった。

 「研介兄さん!先に行って!オレが倒しておく!」

 「分かった!気をつけろ!」

 研介は階段を進んだ。

 怪物はその間にも、ジェイムズに向かっていた。

 ジェイムズは少し広い場所に出た。

 怪物は跳ね、ジェイムズにハンマーを振り落とした。

 ジェイムズも跳ね、上からナイフを突き刺した。

 血が噴き出した。

 怪物は暴れまわり、ハンマーを振り回した。

 だが、ジェイムズはその前に怪物から降りた。

 そして収まるのを待つと、もう1度上からナイフを突き刺そうとした。

 しかし、怪物はハンマーを振り、ジェイムズを殴り飛ばした。

 ジェイムズは壁まで飛ばされるが、姿勢を戻すと一気に走りスライディングをした。

 そして怪物の下を通り抜けながら、ナイフを尾からおそらく顎のところを切っていった。

 暴れまわる怪物の横を凄い勢いでドロップキックをした。

 更に反対に回り、蹴りを入れた。

 怪物は手に持ったハンマーを離してしまった。

 ジェイムズはそれを手に取ると、怪物を窓から落とした。

 そして、自身も窓から外に出ると、電光石火の如く壁を下って行った。

 怪物との距離が近くなり、ハンマーを怪物の上に添えた。

 怪物は地面に、ハンマーに下敷きになって動かなくなっていた。

 研介は最上階に着いた。

 無線の男は前にレイランがいたところに居た。

 アリスもだ。

 手足を縛られ、動けないようになっていた。

 『研介!!』

 『アリスを離せ』

 男は黙って、その拘束を解いた。

 アリスは走って研介の後ろに行った。

 『何が目的だ?』

 男は窓の外を眺めていた。

 『そんなものは無い。その娘はお前等を呼ぶためのもの。お前等と戦いたいだけだ。親父を追い込んだ奴が、どれほどのものかを』

 『親父?まさか、お前は』

 男は振り向き、研介の方を向いた。

 『そう、俺の名はレイグル。レイグル・リビィ・ロミオ。レイランの息子で、最初のクローン、No.1だ』

 『クローン、そうゆうことか』

 『ああ、闘おう、研介。俺らがここに居るのはその為だ』

 レイグルは研介の顔面を殴りかかった。

 研介はそれを掴むとレイグルの顔面を殴った。

 レイグルはタックルをし、距離を離した。

 そして続けざまに殴った。

 研介は後ろに下がった。

 そこにはアリスが居たはずだが、先に階段を下っており、もう居ない。

 研介が放つ攻撃はどれも効いていないようだった。

 2人の闘いは長かった。

 2人は至近距離で殴り合いをすると、同時に頭突きをし、2人は同時に倒れた。

 『引き分けとしておこうじゃないか』

 『何だ?殺すわけじゃないのか』

 『実は親父からは殺すなと言われていた』

 『何故だ!?』

 『それは俺にも分からない』

 『でも、何故スナイパーは俺達を殺そうとした?』

 『ボスを殺されて、怒らない奴は少ないだろう』

 『レイグル、お前は俺達をどうするつもりだ?』

 『WMP(ワールドマニピュレイトパーティ)の存在を語らないなら、生かしておいてやろう』

 『分かった。俺等も言わないつもりだ』

 レイグルは立ち上がり、外を見た。

 『俺は親父の夢を叶える』

 『…世界を1つにする、か』

 『そうだ。それが俺の生きる意味だ』

 研介は立ち上がった。

 『俺は親父の様に生きる。お前は?』

 『俺は総一朗のようには生きない』

 レイグルはそれを『まあいい』とだけ返した。

 『5時だ…世界はここから、生まれ変わる』

 『そうだな。良い世界になることを願ってる』

 研介は、夕日が差し込む部屋を出て行く。

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