31「喫煙室にて」

 研介と舞はエレベータに乗り、1階の喫煙室に向かった。

 その前に、研介は大斗に連絡をした。

 「こちら研介です」

 「こちら大斗だ。どうした?」

 「舞が……」

 「何だ!重傷か!?」

 「いえ、違います。ただ……」

 「ただ?」

 「なんて言ったら……」

 「動けるのか?」

 「ええ、とりあえずは……」

 「分かった、とりあえず喫煙室に来てくれ」

 「はい」

 研介は無線を切った。

 1階に着いた。

 喫煙室に行くと、既に大斗と信太がいた。

 舞はソファに座った。

 「どうやら、怪我じゃなさそうだな」

 「ああ、一体どうしたんだ?」

 「実は……」

 研介は屋上での事を話した。

 「なるほど、分かった。それじゃあ信太、研介と行動してくれ」

 「はいはい」

 研介と信太は喫煙室を出て、22階へ向かった。

 大斗は舞から少し離れて座った。

 「大斗……さん?」

 「落ち着いたか?」 

 「はい、でも……まだ……」

 「そうか」

 そう言って、大斗は上を向いた。

 「あの……」

 「ん?何だ?」

 「近くに居てもらって、いいですか?」

 「ああ、大丈夫だ」

 大斗は舞の横に座った。

 舞は相変わらず下を向いていた。


 一方、研介と信太。

 研介は子供の鍵を中央の鍵穴に差し込んだ。

 鍵は奥まで入り、しっかりと回った。

 扉を開けた。

 「すげえな、ここまでこんなんやってきたのか。てか、仕掛けるのも凄いな」

 「そうですね、何の目的でこれを仕掛けたのか」

 「そしてまた鍵か」

 床の下には、小さい鍵があった。

 研介はそれを取った。

 「どこの鍵でしょうか?」

 「うーん……」

 「そういえば、制御室に鍵のかかった機械が」

 「それだ!」

 研介と信太は制御室に向かった。

 「これです」

 ディスプレイといくつかのボタン、そして小さな鍵穴がある機械だった。

 研介はさっき見つけた小さな鍵を差し込んだ。

 「よし、回ったぞ!」

 ディスプレイには1階の地図が映し出された。

 地図のところどころに、通路が区切ってある赤線があった。

 「これは何でしょうか?」

 「この赤線、もしかしたらシャッターじゃないか?」

 「なるほど、これは行けるかもしれません」

 「オーケー!」

 研介は機械を操作した。


 7階。

 『神よ!貴方は私達人類を裏切ったのですか?』

 扉の向こうで、男の声がした。

 「開けるわよ」

 愛美は扉を開けた。

 『何だ!?私は今祈っている。すまないが出て行ってはくれないだろうか?』

 絵だろうか、セットにキリストの絵が描かれていた。

 『もしや、貴女たちも祈りに来たのですか?』

 『そうじゃないわ』

 愛美がそう言うと、男はその絵に向かって膝まずいた。

 『神よ!貴方は裏切ったのか?そうでなきゃ、貴方が私達人類をこのような目に合わせるはずがありません。何か理由があるのですか?』

 男はしばらくそのままでいたが、その後立ち上がった。

 『神は言っている。ここで終わる定めではないと。貴女たちも祈りを捧げたらどうでしょうか?』

 『いや、いいや』

 『ん?貴女たちは祈らないのですか?』

 『まあ、そうよ』

 『まあ、いいでしょう。私はこれで』

 男はそう言うと、部屋から出て行った。

 「居ないわよ、神なんか……」

 愛美は小声で言った。 

 「全く、こんな状況でも神頼りか、まあ、しょうがないか」

 男にはその声は聞こえなかったようだ。

 無線が掛かってきた。

 「こちら研介です」

 「こちら愛美よ」

 「シャッターを開けたので、1階の喫煙室に集合してください」

 「分かったわ」

 研介は無線を切った。

 「それじゃ、喫煙室に行きましょう」

 研介と信太ははエレベータに乗り、1階へ降りた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る