52「ジェイムズ」

 「おかえり皆さん、無事で良かった」 

 涼は爽やかな笑顔と共に、そう言った。

 「増えてない?」

 「一緒に行った仲間だよ」

 そう言って、研介は香奈の頭を撫でた。

 「これ止めなくて良いの?」

 「良いわよ、この程度で止めてたら面倒だわ」

 アリスと愛美は、研介に聞こえないぐらいの小声で言った。

 「ところで、この後はどうするんです?」

 「そうだな、今日はもうここのアパートで1泊するとしよう」

 「そうですか、ではこれ、ここのマスターキーです」

 「ああ、そうだな。忘れてた」

 涼はマスターキーを大斗に手渡した。

 「暇だったら、夕飯食べていきません?」

 「いや、すまない。やることがあるんだ」

 「そうですか。ではもう行くのですか?」

 「ああ、また何かあったら頼む」

 そう言って、研介達は外に出た。

 「龍一さん、また来てください」

 「おう、また来る」

 研介達が行くと3人は、居間に戻った。

 一方、研介達は適当な部屋に行った。

 食事の支度をし、リビングテーブルを囲んだ。

 1つでは足りず、2つ並べた。

 机の上には、様々な料理があった。

 9人が、その様々な料理に箸を伸ばしていった。

 「龍一!ビールあるぞビール!」

 信太は冷蔵庫から缶ビールを2つ持ってきた。

 「お、いいですねえ。飲みましょう」

 2人は缶ビールを勢い良く飲んだ。

 「キンキンに冷えてやがる!」

 「ああ、やっぱり良いねぇこれは」

 「俺のは無いんですか?」

 研介は冷蔵庫に行きながら言った。

 「無いよ〜」

 冷蔵庫を開けるが、ビールは入っていなかった。

 「本当だ、なんだよ」

 左でそんな話をしていると思ったら。

 「アリスちゃんの肌、白くて綺麗」

 優理はアリスの腕をゆっくりと撫でた。

 アリスはとっさに腕を引っ込めた。

 「私白人だから。白くて当たり前よ」

 「いやー外人はちょっと嫌ってたんだけど、こうして見ると白人も良いね」

 アリスは愛美に聞いた。

 「ねえ、この人いつもこうなの?」

 「まあ、いつもじゃないけれど。はめを外すとこうなるわ」

 「ここの変人率高くないかしら?」

 「気のせいよ」

 優理はアリスの腕を引っ張った。

 「よし、今日は2人だけで寝よう」

 『止めてええ』

 右ではこんな話をしていた。

 「どったんばったん大騒ぎだな」

 「そうですね」

 舞は空になったコップに、缶ビールを注いだ。

 そんな談笑は、夜遅くまで続いた。

 何人かに別れて寝ることになり、研介はジェイムズと寝ることになった。

 2人は布団に入った。

 勿論別々の布団だ。

 しばらくして、ジェイムズが研介に話しかけた。

 「ねえ、研介お兄ちゃん」

 慣れてきたのだろう、突っ掛からずに話していた。

 「ん?何だ?」

 いつもの口調とは違く、研介はどんな事がきても良いように身構えていた。

 「研介お兄ちゃんは、何で生きてるの」

 「どうしたんだ?いきなり」

 「僕は、何のために生きてるの?」

 研介は考えていた。

 「皆が食べてる間、ずっと考えてたんだ…」

 「ジェイムズ、人生の意味は要らない。俺はそう考えている」

 「でも、そんな意味の無い人生なんて…」

 「そんなはずはないと?」

 ジェイムズはゆっくりと「うん」と言った。

 「人生の意味は本人が決めるわけじゃない、他の人が決めるんだ」

 「他の人?」

 「そう、しかも意味は1つだけじゃない、人によって、意味は違う」

 「それじゃあ研介お兄ちゃんは、僕が生きる意味って何だと思うの?」

 研介は少し考えた後に言った。

 「まだ分からない、それはジェイムズの生き方で変わる」

 「なら、一体どうすればいいの?」

 「君は、自分のやりたい事をやれ。今はそれでいい。やったことは、君の性格に変わる。そして性格は、君の生きる意味になる。それは自分にも分かってくるだろう」

 ジェイムズは少し黙っていた。

 「分かった、僕…オレは生きる意味を絶対に見つける」

 2人はその後、ひっそりと眠りについた。

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