51「帰国」

 日本に着いた。

 2日前に飛び立った場所と同じだった。

 あの日にゾンビを一斉駆除したおかげか、周りにはその姿は無かった。

 研介は扉を開け、外へ出た。

 そして深呼吸をゆっくりと。

 「血の香りしかしないですね」

 「当たり前だよ、研介お兄ちゃん」

 ゾンビを一斉駆除したとはいえ、まだ周りには死体が転がっていたりしており、血の臭いは取れていなかった。

 「帰って来たんですね!私達」

 「ええ、この景色は日本ね」

 アリスもヘリから下りた。

 「これからどうするのかしら?」

 「あれ?アリスさん日本語話せたんですか?」

 「あなた達が話してたのを聞いて覚えたわ」

 アリスは片言の日本語を話していた。

 「そうだな、とりあえずサービスエリアに行こう」

 「サービスエリア?…ああ、伊達さんと蒼のことだね」

 フィリピンに行く際に、ヘリ操縦士だった人だ。

 何者かに撃たれ、死亡した。

 「そうだ。ところで、お前はどうするんだ?」

 大斗はアリスに問いかけた。

 「そうね、このまま日本に居ようかしら。前から興味があったの」

 「それだと、サービスエリアに居るのが良いんじゃないか?」

 「いいえ、話をするのに人が多いと駄目だわ」

 「アパートはどうでしょう?あそこなら、人は居るけど少ないし、空き部屋も多い」

 「そこならいいと思うわ」

 涼達が居るアパートだ。

 「んじゃ行きますか。ヘリもここに置いといちゃあまずいかもしれんな、ヘリで行くか」

 「そうだな、すまないがアリス、もう1度操縦してくれないか?」

 「ええ、分かったわ。道案内してくれない?」

 「ああ、それじゃあ行こう」

 研介達が乗るとヘリは飛び立った。

 数分後、ヘリはサービスエリアに着いた。

 すると、建物の中や周りから自衛官が駆け付けて来た。

 「ご苦労様です!」

 ヘリを降りると、彼らは一斉に言った。

 そして1人、おそらく1番上の人が研介達に近づいた。

 「伊達と蒼は一体」

 「すみません、向こうで殺られてしましました」

 「…そうですか、仕方ありません。彼らも、覚悟して臨んだことでしょう。ところで、そこの子供は?」

 前、ここに研介達が訪れた時には、ジェイムズとアリスは居なかった。

 「こっちの男の子はジェイムズ」

 ジェイムズは小さくお辞儀をした。

 「そっちの女の子はアリスだ。事情があって、俺達が保護する事になった

 「そうですか。ここに残るのですか?」

 「いや、すまないが、俺達は別の所に居る」

 「分かりました。ご武運を」

 そこに居る自衛官は全員敬礼をした。

 そして研介達は、アパートへと向かった。

 「そのアパートには誰が居るのかしら」

 「私の友人が2人、後幼女が1人です」

 「あの娘可愛かったなあ…」

 研介は小声で言った。

 「それ大丈夫なの?こうゆう感じの居ない?」

 「大丈夫。居ないわよ、こんなロリコン。てゆか居たら困るわ」

 「そうだね」

 優理は笑いながら言った。

 「あ、あともう1つ人が居る場所はあるぜ」

 「そう。そこには誰が居るのかしら?」

 「馬鹿とその家族。初めて会った時はどうなるかと」

 「腕切られましたからね」

 研介は笑いながら左肩を抑えた。

 「それ笑って言えることなんですね」

 他の人は苦笑いしていた。

 しばらく進むと、アパートが見えてきた。

 「これだね」

 「とりあえず、涼達に会いましょう」

 一行はアパートの涼達が居る1室に入った。

 「龍一さん!」

 翠玉ベリルは目を丸くして言い、居間へ駆けていった。

 居間からは3人、涼と翠玉ベリル、香奈が出てきた。

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