48「愛美」

 仁は仰向けに倒れた。

 「愛美、俺の犯した罪は、死で償えるのか?」

 「どうしたのかしら?今まで償う気なんて無かったじゃない」

 仁はポケットから写真を2枚取り出した。

 2枚の写真はどちらもちぎれており、合わさって1枚となった。

 「愛美の言う通りだった。神なんていない。俺が逃げ出そうとしても、道は一つ、死ぬしかなかった」

 「だからって、自分の親を」

 「自分の息子が、知らない間に、知らない場所で、酷い死に方をしているのを知って、嘆き悲しむよりはましだ」

 仁は写真を眺めた。

 「俺は、お前らが好きだ、親父も、おふくろも、愛美も」

 仁は手を伸ばした。

 「銃を貸せ、俺はこの手で多くの人間を殺してきた、1人増えたところで問題はない」

 愛美は、しばらく黙っていた。

 そしてゆっくりと口を開いた。

 「本当にそうなら、その顔で、あの世で謝ってきなさい」

 そう言って、愛美は仁にハンドガンを手渡した。

 仁はその銃を頭に突き立てると、自分を殺した。

 「許してくれるといいわね、仁…いや、兄さん」

 大斗は仁の腕輪を外し、鍵を組合せ、扉を開けた。

 そこには椅子が1脚と、それに腰掛ける男が居た。

 『来たか、遅かったじゃないか』

 男は研介達の方を向いた。

 『お前が、レイランか』

 レイラン、自衛隊のバリケードを壊し、研介の前にも現れた男だ。

 『サングラスはどうしたんだ?』

 『もういらない、逃げる必要はないからな』

 『その様子だと、私が裏切ることもお見通しということね』

 『ああ、こうなると予想していた』

 研介達は銃を構えた。

 『何かがおかしいわね』

 『どうゆうこと?』

 『まさか…時間稼ぎ!?』

 『あの男はよくもってくれた。もう時間は十分だろう』

 『くっ…レイラン、1つ聞く。なぜこんな事をした』

 レイランは薄く笑った。

 『世界は古代より争ってきた。今でさえもそうだ。歴史は繰り返してきた。世界は終わった。新しい世界では、今までの政治家が夢見てきた事が起きる。世界が1つになる』

 『…世界は、お前を許さない』

 レイランに無線がかかった。

 『終わりました』

 無線機から聞こえた。

 『ご苦労だった』

 レイランは無線機をしまった。

 『終わった?まさか!?』

 『自分の目で確かめるといい』

 『全員戻れ!生き残っているかもしれない!』

 『レイラン!!』

 研介はナイフを持ってレイランに切り掛かった。

 『研介!?』

 レイランは攻撃を避けた。

 『研介!!』

 研介は動きを止めた。

 『戻るぞ、研介』

 研介はナイフをしまい、大斗達と共に船へ戻った。

 「大斗さん、いいんですか?」

 「人名救助が先だ」

 船に戻った。

 「見たらわかるでしょうけど、どれも死んでいるわ」

 死体は5つ、NONEFACE(ノームフェイス)だ。

 全員、脳天を撃たれていた。

 「舞ちゃん達は?」

 「信太、信太、聞こえるか?」

 大斗は信太に無線を送った。

 「おう、大斗か、どうしたんだ?終わったのか?」

 「おい!今何処にいる?」

 「前の方の甲板だ」

 「殺られているぞ…」

 「何だと!?」

 「1回来てくれ」

 「分った、龍一と舞も近くにい…誰だ?」

 「どうした!?」

 「止まれ、止まってくれ」

 無線が途切れた。

 「行くぞ!」

 大斗達が通路へ出た時だった

 「待って、誰かが来る」

 そこに現れたのは、レイランだった。

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