44「研介とワクチン」

 『それじゃあまず…お前らは一体…』

 『いや、総一朗…俺の過去を教えてくれ。俺の父親なら分かるはずだ』

 大斗の言葉を遮って、研介は聞いた。

 『父親!?け、研介兄ちゃんの!?』

 ジェイムズだけではない、驚愕したのは、NONEFACE(ノームフェイス)と研介以外全員だった。

 『教えてくれ。総一朗』

 『そうだな、総一朗、それがいい』

 エドゥは研介の言葉に便乗して言った。

 『分った。だけど、並列してコルトウイルスについても話そう』

 総一朗は頷いた。

 『今から30年前、僕は君の母と出会った』

 『加山葵ね…』

 愛美が言ったその名は、龍一の旧友、斎藤涼の家でたまたま見た事件簿に載っていた。

 『知っているのかい?』

 『ええ、葵さんの失踪の事件簿があったので…』

 『そうだね…話を戻そう。それから3年後その人と僕は結婚した。2年後には子供も産まれた。それが研介、君だ。その5年後だったろうか、僕は、とあるウイルスの研究に携わった』

 『シベリアの永久凍土で見つかった…』

 『そう、そのウイルス』

 ダリエルから教わった、遺伝子が500個あるウイルスだ。

 『ダリエルはゾンビウイルスと言ったようだが、僕達はそれをコルトウイルスと名付けて、研究していった…そして今から15年前、コルト-vが完成した。今世界中で起きているパンデミックのウイルスだ。そしてそのワクチンも、初期段階だが…』

 『それで、研介にそれは入っているの?』

 『ああ、そうだが、色々訳がある』

 『訳って何だ』

 『研介、君に入っているワクチンは最初の人体実験で投与した、初期の初期のワクチンだ。案の定失敗した』

 『失敗した?』

 『ああ、ゾンビ化した。そして、葵を食った』

 総一朗は頭を抑え言った。

 『ゾンビ…俺が…』

 研介は両手を見て嘆いた。

 『だけど、研介さんはまだ生きてます』

 『そうだね、その後、奇跡的にゾンビから生き返ったんだ』

 『生き返ったですって?』

 『ああ、そうだ。だけどそのショックで記憶が改ざんされている。その後は君の記憶道理だろう。コルト-vについて話そう。そしてそれで、副作用みたいな症状が表れるのが分ったんだ』

 『だからか、だから俺はお前の記憶が無かったのか…そして、俺の治癒力が高いのはそれが原因なのか?』

 『そう。それに、ジェイムズ、君もそうだ。まあ、分かっているか』

 ジェイムズは頷いた。

 『あと、龍一、あなたも投与されているはずよ』

 龍一は黙っていた。

 『そうなのか?龍一』

 『ええ、この義手を付けたときと同じ時、注射されたんです』

 『でも、あなた特におかしな所はないわ』

 『いえ、私は研介さんやジェイムズのような見て解る能力ではなく、地味な力です。知識力、記憶力を上げる。ただそれだけです』

 『だから、龍一さんは築山から大学に…』

 『ええ、私が日本語、英語に加えて、ロシア語も話せるのはそのおかげです。あと、近接格闘もです』

 『2人とは、違う』

 『ああ、能力には個人差がある。ジェイムズのような人間ではあり得ない能力から、君のようなちょっと限界を突破したような能力まで。ちなみに新しい物は能力が付かない』

 『何でそんな能力が付くんだ?』

 『コルト-vの新型ワクチンはそんな事はないんだけど、古型ワクチンはあるだ。遺伝子が500個もあるし、持続時間を長く、免疫を強くさせたいから、コルト-vを弱体化させて使う必要があったけど、免疫だけではなく、投与した者の細胞も活性化させたんだ』

 『それじゃあ、そもそもコルト-v何て創ったんだ?まずコルトウイルスはどうゆうウイルスなんだ?』

 『それも、研介が何故最初の人体実験に選ばれたのかも、このパンデミックに関連している。これからそれを話そう』

 信太の質問で話が変わった。

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