36「暇を持て余してない神々の戦い」

 流れは信太に向いてきた。

 『どうやら、エキシビジョンにはならないようだぜ』

 信太は伏せ、スコープを覗いた。

 しかし、十分に見えるのは少しばかりの隙間だった。

 信太はその少しの隙間に意識を集中させた。

 それを予測していなかったジョエルが、そのスコープの中に入った。

 だが、それは一瞬の出来事。

 信太はそれを撃った。

 信太が神の動体視力と呼ばれる理由は、その一瞬で動けるからだった。

 銃弾は相手の体を貫くが、死ななかった。

 ジョエルは信太の方に素早く振り向いた。

 信太のスコープには映らなかった。

 それはジョエルも同じ。

 そして信太の前に素早く小さくジャンプしながら撃った。

 信太もそれと同時に撃った。

 着弾したのは信太の弾だった。

 『うおおおおお!』

 観客から歓声が湧き上がった。

 信太は息を整えた。

 次にジョエルのリスポーンを狙った。

 しかし、信太は撃たれてしまった。

 しかも後ろから。

 『言っただろう、eye grab youと』

 流れは信太の方に向いていたが、完全には流れていなかった。

 後ろからの狙い撃ちに、信太はにやけた。

 リスポーン、そして動いた。

 その後はだんだん信太がジョエルの点に追いついていった。

 そして信太が13点、ジョエルが14点となった。

 信太はリスポーン地点で何もないところに撃った。

 それに釣られ、ジョエルは信太に近づいた。

 信太は後ろに下がった。

 後ろと左はフィールド外。

 ジョエルは近くで信太が出てくるのを30秒待ったが、出てくる気配はなかった。

 しびれを切らし、ジョエルは信太の前に出た。

 信太はそこを撃った。

 14対14。

 最後の攻防。

 2人はしばらく走った。

 そして信太はジョエルの背中を見つけた。

 しかし、それはすぐに角を曲がった。

 信太はすぐにそれを追った。

 角を小さくジャンプしながら曲がった。

 そこには銃を構えているジョエルの姿があった。

 そしてその直後の画面には、「you lost」の文字が映し出されていた。

 観客から拍手と歓声が沸いた。

 「すごい試合だ…」

 「さすが神と呼ばれる人たち」

 信太とジョエルは次のゲームに取り掛かろうとしていた。

 インターバルは1分だった。

 『ジョエル、今のはいつから予測していたんだ?』

 『リスポーン直後だ』

 信太は息を整えた。

 『しかし、まさかお前が生き残っているとはな。信太』

 『それはこっちの台詞だぜ』

 『そうだな。まあ、何かの縁だ。ここで俺らの決着を付けようぜ』

 『良いぜ。二度とFPSが出来なくなるかもしれないからな。』

 第2ゲームが始まった。

 第2ゲームでは第1ゲームと同じように進んだ。

 だが、試合の進行度は遅かった。

 信太は誘い出しとゴリ押し。

 ジョエルはそのカウンターとリスポーン直後のキルをする単調な試合だった。

 信太が10点、ジョエルが8点となった。

 しかし、残り時間はあと5分になった。

 信太は撃たれた。

 リスポーンして、動いた。

 いつものように。

 しかし、1箇所のみ違った。

 「タピオカパン!!」

 基本的にFPSの大会では叫ぶ人が多かった。

 しかし、信太はあまり叫ぶ人ではなかった。

 だからこそ、ジョエルは予測していなかった。

 ジョエルはそれに気をそらした。

 その一瞬の隙に信太はジョエルの前に出て、撃った。

 弾丸は相手の頭に着弾して倒れた。

 残りは4分。

 ジョエルとの差は3点。

 信太はしのごうとした。

 このまま試合時間終了を狙った。

 一方、ジョエルはそれを予測して撃った。

 どちらも壁抜きだった。

 『そこはバレバレだ』

 ジョエルとの差は1点、時間は後30秒になった。

 引き分けになればサドンデス、先に殺した方の勝ちだ。

 観客も静かになった。

 信太は動いた。

 走った。

 それはジョエルも同じだった。 

 2人は遭遇してしまった。

 信太は構すぐさま撃った。

 ジョエルも撃った。

 しかし、信太の弾は外れ、ジョエルの弾は着弾した。

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