29「電流走る」

 男は信太の顔目がけて拳を放った。

 信太はそれを避けると、ハンドガンのハンマーを男の顎に当てた。

 更に3発、男の顔に拳を入れた。

 男はよろけるが、すぐに態勢を戻した。

 そして信太に蹴りを放った。

 信太がその足を持った。

 すると男は逆の足を上げ信太を床に倒し、腕十字固めをしようとしていた。

 信太はそれを必死に阻止し、腕を曲げ、金的を入れた。

 起き上がり、もう一度ハンマーを男の顔面に当てた。

 男の鞄を取ると、中身を確認した。

 そこには確かに、男、女、子供の3種類の鍵があった。

 信太はそれを取った。

 『見るな!』

 男は鞄を取ると中身を確認した。

 『よし!書類はある!お前らとこのまま戦ってられるか!』

 そう言って男は道路に出て行ったが、すぐにゾンビに食われるのを、信太と大斗は確認した。

 大斗は無線を掛けた。

 「こちら大斗」

 「こちら龍一です。どうでしたか?」

 「ああ、鍵は取ったぞ」

 「有難うございます、研介さんが探していたので、持って行ってあげてください」

 「分かった」

 「こちらから連絡しておきます」

 「ああ」

 大斗は無線を切った。

 「よし、それじゃあ行くぞ」

 「やっと階段からおさらば出来る……」

 大斗と信太はエレベータに乗って、上に上がった。

 フィリピンに来てから少し時間がたった、ラジオの番組はもうすでに終わっていた。


 エレベータが着いた。

 扉が開き、中から大斗と信太は降りた。

 「これだろ?」

 そう言って、大斗は3つの鍵を取り出した。

 「これです」

 大斗はは鍵を研介に手渡した。

 「それじゃ、下に戻る」

 信太と大斗はエレベータに乗り、下に降りた。


 扉に戻った。

 「さっきと同じようにやってみよう」

 研介は鍵を取り出し、男の鍵を左に、女の鍵を左に、子供の鍵を真ん中に差した。

 子供は回るが、男と女の2つが回らなかった。

 「違うんでしょうか?」

 「そうかもしれないな」

 研介はあらゆる場所を試した。

 しかし、どこも鍵は回らなかった。

 「どうゆうことだ?」

 「何が違うんでしょうか?」

 試しに舞はドアノブを回すが開かない。

 「子供はここでいいだろ」

 「大人の場所を逆にしても無理でしたし……」

 この時、研介の体に電流が流れた。

 「逆だ!」

 「え?」

 研介は男の鍵を左に、女の鍵を右に差して、右に回した。

 鍵は回り、扉は開いた。

 「どうゆう事なんですか?」

 「夫婦生活が上手くいっていた。しかし、その後逆向きになったということだけ」

 「あ、そうゆう事でしたか」

 「ああ」

 研介と舞は先に進んだ。

 「今度はこれの様だな」

 そこには床に扉が設置されていた。

 そして、鍵穴と文章も同じように書かれていた。


  やがて、2人は離婚した。

  それまでに子供を撮った写真は23枚だった。


 「離婚……仲が悪かったが、子供の事を考えなかったのか?」

 「そうですね、子供にとって一番いるものを考えなかった様ですね」

 「まあ、それより23階、屋上か」

 「行きましょう」

 研介と舞は屋上へと向かった。


 重い扉を開けた。

 22階あるビルの屋上からでも、まだ視界はビルに囲まれていた。

 「研介さん!あれ」

 舞は上を指さした。

 「あれは……カラスか!」

 空には、曇りの空を飛ぶ巨大なカラスがいた。

 カラスは研介と舞に気付き、急降下をした。

 そして少し上空で止まった。

 「気を付けろ!こいつやる気だ」

 「分かりました」

 研介と舞は銃を構えた。

 カラスは研介と舞を睨んでいた。

 何かが来るのを待ち、時間を稼いでいるように思えた。

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