28「仲良し夫婦はいずこへ…」

 扉へ戻った。

 「まあ、家族ってこうゆう構図でいいだろ」

 研介は、左の鍵穴に男の鍵を、右に女の鍵を、真ん中に子供の鍵を差し込んだ。

 鍵はどれも回った。

 研介は扉を開けた。

 少し進むと、厚い扉があった。

 「研介さん、制御室じゃないですか?」

 「だな、入ってみよう」

 研介は厚い扉を開け、中に入った。

 「研介さん、これがエレベータを操作する機械じゃないですか?」

 舞は1つの機械を見て言った。

 機械は壊れている様子などは無く、赤いランプが光っているだけだった。

 「かもしれないな、やっと階段から解放される」

 研介は機械を操作した。

 赤いランプは緑色に変わった。

 「これでいいな、皆に連絡しておこう」

 全員あての無線をし、研介と舞は通路へ出て、先へと進んだ。

 しばらくすると、また防火扉があった。

 防火扉には、いつのも配置の鍵穴と、文が書かれていた。


  しかし、子供の教育で2人は喧嘩を始めた。

  生後15か月あたりからだった。


 「仲良し夫婦から一転、か」

 「似ている……」

 舞は小声で言った。

 「え?」

 「いえ、何でもありません。それよりも15階です。龍一さんに連絡しましょう」

 「あ、ああ、そうだな」

 研介は龍一に無線を掛けた。

 「こちら研介」

 「こちら龍一です」

 「15階に、男、女、子供の絵が描いてある鍵があるので、探してくれないか?」

 「分かりました?何かヒントとかありますか?」

 「夫婦喧嘩ぐらいだな」

 「それだけですか?」

 「ああ」

 「分かりました?探してみましょう」

 「よろしく頼む」

 龍一は無線を切った。

 「鍵?ここから?」

 「だよな、ま、やるしかねぇか」

 龍一とジェイムズは通路を進んで行った。 

 通路は血だらけで、既にゾンビは片付けられていた。

 「夫婦喧嘩ねえ、ここなら何かありそうだな」

 研介はそう言いながら扉を開いた。

 中は普通のオフィスだった。

 「あれ?」

 ジェイムズは近くにあった新聞を手に取った。

 「ここの新聞か。確か、このテレビ局、新聞もやってるらしいな」

 「ここ」

 ジェイムズは、とある有名人の夫婦喧嘩の記事を指さした。

 「あったな。とりあえず、この記事を書いた編集者の席を探すか」

 龍一とジェイムズはそれを探した。


 「あった、これ」

 「やったぜ。」

 その席の引き出しの中を開けると、男と女、子供の絵が描かれた鍵があった。

 「これか。見つかるもんだな」

 その時だった。

 『おい!お前等!』

 龍一とジェイムズはその方向を向く。

 『お前等!俺の席で何してた!言え!』

 男はフィリピン語でそう言った。

 しかし、龍一とジェイムズは分からなかった。

 『何か言え!そこには大切な資料が入ってるんだ!どけ!』

 男は2人を突き飛ばし、引き出しから資料を出し、鞄に詰めた。

 そして通路へ出て、下へと降りて行った。

 「龍一お兄ちゃん」

 龍一は席を見た。

 「!?」

 そこにはったはずの鍵が無くなっていた。

 「追いかけよう」

 「いや、エレベータに乗ったはずだ、大斗さんたちに任せよう」

 龍一は無線を掛けた。

 「こちら龍一です」

 「こちら大斗だ」

 「1階でエレベータから男性が降りてくるはずです。その男が男、女、子供の鍵を持っています。捕まえてください」

 「分かった、すぐ行く」

 大斗は無線を切った。 

 「とは言ってもね」

 大斗と信太は1階のエレベータの前にいた。


 エレベータが着いた。

 扉が開き、中から男が出てきた。

 大斗と信太は男の進路を塞いだ。

 『何だお前等!』

 「フィリピン語だ、任せてくれ」

 信太はそう言った。

 『すまないが、若い男と子供に会ったか?』 

 『ああ、会った。それよりどいてくれないか?』

 『いや、そうゆう訳にはいかないんだ。その時、余計なものを持って行ったはずだが?』

 『そんな物は知らん!』

 『3つの鍵なんだが?』

 『知らない!さっさとどいてくれ!』

 『いや、ちょっと……』

 『どかないつもりだな!そっちがそのつもりなら、こっちだってやってやる!』

 男は、信太を殴った。

 「信太!」

 「大斗はいい」

 「え?」

 「1人の方が、面白い」

 信太はそう言うと、持っていたハンドガンの弾倉を捨て、持ち方を変えた。

 『そんな持ち方じゃ、あぶねえぞ!』

 『たまたま弾が空になっただけだ』

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