第1節「TV局」

25「カプヘリの運命」

 日が昇るとともに、島が見えてきた。

 「皆さん、フィリピンが見えてきました」

 副操縦席に座っていた正義は言った。

 「よし皆。そろそろ降りるぞ」

 研介達は身支度をし始めた。


 ビル群が間近に迫ってきた時だった。

 前のガラスが砕け散り、血が飛んだ。

 「おい!蒼!」

 正義は蒼の体を揺さぶると、蒼の頭から血が流れるのが見えた。

 「伊達さん!操縦!」

 正義は操縦桿を握るが、上手く操作が出来なかった。

 「駄目だ!落ちるぞ!」

 ヘリコプターは林に斜めに突っ込んだ。


 研介の体はヘリの中にいた。

 シートベルトを外し、重力に身を任せた。

 体が止まった。

 研介は目を開け、ゆっくりと立ち上がった。 

 ヘリコプターは木を折り、地面に不時着していた。

 「ここは……はっ、皆さん!大丈夫ですか!?」

 他の人は次々と目を覚ましていった。

 研介は正義を見た。

 「蒼さん!?伊達さん!?」

 「どうだった?」

 研介頭を横に振った。

 「どうやら、頭を打ったようです」

 「すみません、こんな事になって……」

 「こんな時だ、誰がいつ死んでもおかしくはない。」

 大斗はヘルメットを深くかぶって言った。

 「蒼さんを撃った奴、グリフォンでしょうか?」

 「そうかもしれないね」

 「そろそろ、本気で潰しに来てんな」

 ヘリコプターの外へ出た。 

 「ここ、フィリピン?」 

 研介達の目の前にはビル群が広がっていた。

 「そのようだね」

 「気を付けろ。ここは日本とは違う。行くぞ。」

 研介達はビル群の中へと入って行った。


 大斗が言った通り、日本とは明らかに違った。

 この世とは思えないような光景だった。

 変死体にゾンビも多く、車の炎上や横転、更に建造物の炎上があちらこちらで起こっていた。

 ゾンビですら進みにくく、更にこの有様で、進める場所は限られていた。

 研介達はとあるビルの中へと入った。

 中はTV6という看板があった。

 広く、白を基本とした非常にシンプルな造りだった。

 「どうやらテレビ局のようですね」

 「何処か出られないか探すぞ」

 「いや、その前に飯食いたいんだが…」

 信太は腹を抱えながら言った。

 「そうですね、腹も減りましたし」

 「あそこにコンビニあるよ」

 「全くしょうがないな。さっさと食え」

 研介達は朝食をすました後別れ、出られる所を探した。


 数十分後。

 研介達は集まった。

 「どこも開いていませんでした」

 「こっちの方もそうです」

 「またいつものパターンね。しょうがないわ、安全な場所を探しましょう。」

 研介達が移動しようとした時だった。

 『ヘイ!只今の時刻6時30分!もう皆起きてるか?俺はパッチリだ!それじゃあいくぜ!ロケット!セット!ラジオ!!』

 何処からかハイテンションな声が聞こえてきた。

 『世界が崩壊して3日目、果たしてこれは事件なのか!?だったら救世主は開現れるのか!?どちらにしても、狂った世界とおさらばしたいぜ!』

 「なに?これ。ラジオ?」

 「あれじゃないですか?」

 研介は近くにあった小さめのラジオを指さした。

 「この局の周波数のようです。」

 「それじゃあ、今このテレビ局で放送していて、誰か居るんですね。」

 「ラジオ放送してる部屋は?」

 愛美は地図を見た。

 「地下1階、確かシャッターで閉められているはずよ。」

 「安全な場所を探すのが先か、いつも通りだ。」

 「そのラジオも持って行くぞ。何か情報が得られるかもしれない。」

 大斗はラジオを取り、ポケットに入れた。

 研介達は安全な場所を探し始しはじめた

 『前置きはこれくらいにして、まずは歌!こんな時でも踊ろうぜ!それではロケット!セット!ラジオ!!』

 ラジオからは陽気な歌と声が流れていた。 

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