20「再会と別れ」

 研介達はコンビニの前を通った。

 その時そこから男性が出てきた。

 「ん?…り、龍一!?龍一さんっすか!?」

 男性は驚いていた。

 「べ、翆玉ベリル!何でここに!?」

 同じく龍一も。

 「読めねえよ。」

 研介は小声で呟いた。

 「久しぶりっすね!今まで何してたんっすか!?」

 「それはこっちのセリフだ!翆玉ベリル!」

 2人は喜び合った。

 「龍一、この人は誰なの?」

 龍一は答えようとしたが。

 「龍一さん。良い所があります。そこに行きましょう。」

 翆玉ベリルが言ったのでやめた。

 「どこだ?」

 「まあまあ、来てからのお楽しみっすよ。他の方もどうぞ。」

 「いいよ。案内して。」

 「OKっす。」

 研介達は後に付いて行った。


 案内された所は、とあるアパートの一室だった。

 まだ部屋には入っていない。

 「ここか?」

 「そうっす。どうぞ。」

 翆玉ベリルはドアを開けた。

 1LDKでざっと6~10万の部屋だった。

 中に入ると、翆玉ベリルは追い越して、リビングへと駆けて行った。

 「斎藤さん!龍一さんっす!」

 研介達はリビングに入った。

 中にはもう一人、眼鏡を掛けた男性が居た。

 「斎藤って…お前!涼か!?」

 「龍一!?本当に龍一なのかい!?」

 「そうっす!2人とも!」

 龍一はまたも喜んだ。

 「とりあえず落ち着きましょう。龍一、彼らは?」

 「あ、はい。こちらの眼鏡を掛けた人は斎藤涼。私の中学校の時の友人です。」

 「そっちのチャラい方は?」

 「こちらは赤石翆玉ベリル。私の高校の時の友人です。」

 「龍一、君、いつから敬語を使い始めたんだい?」

 「まあ、大学入った時からかな。」

 「大学に行ってたのか。凄いよ。」

 「そうっすね、築山からっすよ。」

 しばらくは談笑していた。

 「あ、皆さん、そろそろ昼食にしましょうか。」

 涼は言った。

 「あ、いや、私たちはいいよ。悪いし。」

 「いや、いいっすよ。食べていって下さい。」

 「分かった。お言葉に甘えよう。」

 「それじゃあ、翆玉ベリル。香奈ちゃん呼んできて。」

 翆玉ベリルはベランダに出て、隣の部屋に行った。

 「香奈?隣に住んでいる子供か?」

 「うん、そうなんだけど…」

 翆玉ベリルが戻ってきた。

 「どうだった?」

 「やっぱり駄目っすよ。」

 「どうしたのよ?」

 「いや、一緒に食べないって言うんですよ。」

 「親はまだ生きてる?」

 「いいえ、生きてません。香奈ちゃんは部屋に閉じこもって、1人でいるんです。あの部屋に。」

 「何歳ぐらいの子だ?」

 「6、7歳ぐらいっすね。」

 「よし、ちょっと見てくる。」

 研介はベランダに出た。

 「こっちだな。」

 「え!?研介さん!?」

 龍一達も後を追い、ベランダに出た。


 研介は隣の部屋に入った。

 「!?」

 「落ち着きなさい、ロリコ…!?」

 その部屋の光景はおかしかった。

 一人の少女が居た、恐らく香奈という子だった。

 香奈の周りには、その子と同い年の死体があった。

 「香奈…ちゃん?」

 香奈は口を開いた。

 「お兄さんたち、誰?」

 「俺は研介、香奈ちゃん、一緒にご飯食べよう。」

 「いい。愛莉ちゃんたちと食べる。」

 「愛莉ちゃん?」

 「うん。この子。」

 そう言うと、香奈は死体の1人を指さした。

 「香奈ちゃん、それは生きてないわ。」

 愛美は言った。

 「いや、愛莉ちゃんもママも、皆も生きてる!」

 「これは死体だ。生きているわけがない。」

 龍一が言うと、香奈は怒った。

 「いーや!生きてる!」

 優理は何か言おうとしたが、研介はそれを止めた。

 「香奈ちゃん、それは違うよ、だって血出てるし、動かないし、どう見たって死んでんじゃん。生きてるなんてマジありえないっしょ。」

 「翆玉ベリル!言うな!」

 翆玉ベリルが言うと、香奈は静かになった。

 「嘘、嘘。嘘だッ!!!嘘だよね?ママ。」

 しかし、死体が話す事は無かった。

 「嘘、嘘だと言ってよ愛莉ちゃん。う、うそ、嘘、嘘、嘘、嘘、嘘。」

 香奈が泣き始めたと同時に、死体たちは動き始めた。

 「ゾンビ!?」

 「香奈ちゃん危ない!」

 香奈は泣いていて動かない。

 優理は銃を構えるが、研介がそれを下げる。

 「こんなところで銃は駄目だ。香奈ちゃんに当たるかもしれない。」

 愛美達がナイフを取り出すと、研介は香奈に向かって行った。

 「研介さん!?」

 そして、香奈を抱きしめた。

 「香奈ちゃん、君は今悲しい。思いっきり泣いていい。だけど、ママやお友達は君をあの世で見ている。そして一番願っているのは、君がこれからも生きることだ。元気を出して。」

 さらに続けた。

 「それに、君はまだ一人じゃない、俺が、ここに居る人たちが友達に、それ以上になる。」

 ゾンビはもう、動かなくなっていた。

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