8「目覚めし力」

 「愛美さんは何か弾けますか?」

 ゾンビがあらかた方ずいた音楽室で、龍一が聞いた。

 「そうね、丁度{月光}の楽譜があるから、それでも弾いてみようかしら。」

 ピアノの上に{月光}の楽譜がある。

 そして、愛美は椅子に座り、{月光}を弾いた。

 それは優雅で、それでいて可憐な演奏だった。

 ゾンビと戦っていた龍一には、ひと時の安らぎになった。

 演奏が終わると、ピアノの横の壁が動いた。

 その奥には部屋があった。

 「壁が…」

 「どうゆう仕組みなのかしらこれ。」

 「とりあえず、行ってみましょう。」




 「パソコンがありますね。」

 「どうやらこれは、シャッターを開けるための機械ね。」

 愛美はそう言うと、機械を操作した。

 「多分これでいいはずよ。戻りましょう。」

 戻ろうとするが、そこには壁しかなかった。

 「あ、あれ?」

 2人は辺りを見回す。

 「そこに通気口があるわ。あそこから行きましょう。」

 2人は通気口に入った。




 通気口を進むと、明かりが見えてきた。

 同時に話し声も聞こえてきた。

 「あの、優理さん、これでいいんですか?」

 舞はスク水姿で体育座りをしている。

 両足の間からすじが見える。

 優理はその姿を写真に収める。

 「ファンタスティック!次は膝の上に手を置いて。胸元を強調させるように。」

 「あ、あの、優理さん、これは一体…」

 その光景を龍一は見ていた。

 「うわ、これは…」

 「何止まってるのよ。」

 愛美は龍一を押すと、龍一は落ちた。




 「痛ってー!」

 龍一は仰向けになっていた。

 さらに愛美が落ちてきて、龍一の腹に着地し、その後床に着地した。

 「あれ?愛美ちゃんじゃん。」

 「龍一さん、大丈ですか?」

 「だ、大丈夫です。」  

 龍一はゆっくりと立ち上がる。

 「何で舞はスク水なんか着てるのかしら。」

 「え、あ、これは…その…」

 「そして何で写真なんか撮ってたのかしら。」

 「…」

 「いいですよ、それよりも、着替えたらどうですか?」

 「そうですね。」

 「ほら、男はあっち向いてなさい。」

 愛美がそう言うと、龍一は舞に背を向けた。

 「うわー、やっぱり大きい。」

 「どうしたらそんなに大きくなるのかしら?」

 「え、私はこれといって何もしてませんよ。」

 「やわらかーい。」

 優理は舞の胸を揉む。

 「止めて下さい!」

 舞はそう言うと、優理の手を振りほどいた。

 「そうだ、何でここに居るの?」

 優理が聞いた。

 それに答えたのは龍一だ。

 「そういえばそうですね。」

 しかも龍一は振り返ってしまった。

 龍一が見たものは2つ。

 1つは、パンツを太ももまで上げた舞の姿。

 もう1つは、愛美の手の平だ。

 「何見てるのよ!この変態が!」

 直後、龍一は平手打ちをされた。

 強い平手打ちだった。

 顔全体に波状が広がる。

 その勢いで、龍一はまた彼女達に背中を向けた。

 「それで、何でここに居るかっていう話なんだけど。それは―」

 「それじゃあ4階に行けるようになったんですね。」

 「ええ、そうよ。」

 「私たちも行こう。」




 一方その頃、保健室。

 「うおおおおおおおおおおお!」

 誰かの叫び声が響きわたる。

 「どこからだ!?」

 「廊下からです!」

 「行くぞ!」




 「動くな!止まれ!」

 研介は銃を構える。

 「お前は誰だ!」

 男は暴れるのをやめ言った。

 「てめえらも俺を笑いに来たんだろ!きっとそうだ!」

 「そんな事を聞いてるんじゃない!名前は何だ!」

 「俺は佐々木太だ!」

 2人はその名前に憶えがある。

 調理室のロックの解除を見た人だ。

 「俺のことをバカにする奴がいなくなったと思ったら、お前らも俺をバカにするんだろう!」

 「違う!」

 「うるせえ!俺は勉強が嫌いだああああああああ!野郎ぶっ殺してやらあ!」

 佐々木はそう言うと、2人に突っ込んでいった。

 「研介!銃を撃つな。大事な生存者だ。」

 「分かった。」

 佐々木がタックルをしようとすると、2人は後ろに下がり、同時に蹴りを入れた。

 佐々木はよろめいた。

 そして、背中に背負っていたある物を取り出した。

 チェンソーだ。

 「ナメんな!」

 佐々木はそのまま、それを縦に降り下ろした。

 大斗はそれを避けると、右アッパーを放ち、さらにタックルを決めた。

 そこを研介は、佐々木の背中にキックをブチかまし、後頭部に右ストレートを打ち込んだ。

 佐々木はその場に倒れようとするが、左足で踏ん張り、大斗にタックルをブチかました。

 そしてチェンソーを持つと、回転しながら研介に向かった。

 研介は盾でそれを防ぐ。

 すると大斗は、佐々木の背中にドロップキックを放つ。

 佐々木はその後、後ろを振り向き、チェンソーを横に振る。

 大斗は避ける。

 チェンソーはそのままの勢いで壁にめり込んだ。

 「うおおおおおお!」

 両方からストレートを繰り出した。

 佐々木は床に倒れた。




 「気絶したようですね。」

 「そのようだな。全く、こいつと戦っている間にゾンビが集まってきちまう。」 

 と、2人が佐々木から視線を外した時だった。

 「死ねえ!」

 そう、佐々木は気絶などしていなかった。

 したフリである。

 佐々木はチェンソーを振り下ろした。

 「うわあああああああああ!」

 研介が見たものは、床に転がった自分の腕だった。

 肩からは血が噴き出し、研介はその場に倒れた。

 「次はお前だ!」

 佐々木はチェンソーを振り回しながら大斗に近寄って行った。

 「佐々木、許せ!」

 大斗はそう言うと、銃を構え、引き金を引こうとした時だ。

 佐々木が横に吹っ飛んだ。

 研介が頭に蹴りを入れたのだ。

 壁にぶつかった佐々木を、研介は打撃を入れた。

 正確に、片腕だけで。

 驚くのはそこではない。

 打撃を放っているうちに、失っていた腕が再生していった。

 コンボは両手でするようになった。

 「これで最後だ!」

 そう言うと、力強い一撃を決め、佐々木はそこに倒れた。

 気絶し、しばらくは起きそうにない。

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