4「俺は佐々木に恨みなどない」

 「!伏せて!」

 愛美は突然言った。

 次の瞬間、すざましい数のカラスが窓ガラスを割り、中に入ってきた。

 ゾンビ化したカラスだった。

 中に入ったカラスは、龍一たちの頭上を回っている。

 龍一は銃を乱射するが、かすりもしない。

 「愛美さ―」

 その瞬間、すざましい程の閃光と爆音が教室中に鳴り響いた。

 スタングレネードだ。

 床に落ちてゆくカラス。

 その中に、スタングレネードを持っている愛美がいた。

 そして床には龍一が倒れていた。

 「全く、少しは頭を使いなさい。龍一…って龍一、あなたが気絶したら駄目じゃない。ほら、起きなさい。」

 愛美は龍一を蹴り起こした。

 蹴った場所は、龍一のだった。

 龍一は起きた。

 「あ…ありがとうございます。」 

 愛美はそれを当然のごとく無視した。

 「そうだ、さっきの順番、研介達に伝えといてよね。」

 「…はい。」

 龍一は研介に無線を掛けた。

 「こちら研介。」

 「こちら龍一です。調理室に入るための番号が分かりました。」

 「本当か!?」

 「はい、今から言います。いいですか?」

 「ああ、いつでもいいよ。」

 「それでは、5827です。どうですか?」

 研介は、その番号通りに合わせるが、ロックが解除されない。

 「開かないぞ。」

 「え!?」

 「開かないよ。」 

 「は、はい。そうですか…」


 

 「その番号、違うそうです。」

 「だと思ったわ。」

 「えっ!?」

 龍一はびっくりした。

 「だってそこ、佐々木の席だもの。合ってるはずないわ。」

 「あ、なるほど。」

 「さて、ここの探索も終わったから、次行くわよ。」

 そう言うと、龍一と愛美は教室から出ようとした時、愛美が何かを見つけた。

 「あれ?」

 「どうかしたんですか。」

 「あのビルの屋上、誰かいないかしら?」

 龍一は確認してみるが分からない。

 「いえ、何もいませんが。」

 「気のせいだったかしら。」

 そう言うと、龍一と愛美は教室を出た。




 学校から1kmの所にあるビルの屋上、別の部隊と思える、無線をしている男がいた。 

 「学校に生存者か…あいつらなら、きっと我が組織を。」

 男はそう言うと、学校に向かって行った。




 「まずはここから探そう。」

 優理と舞は、教室に入った。

 (うっひょ~。舞ちゃんがそのグレネードを炸裂させるおつもりならば、私はこのブラックビックマグナムで応戦せざるをえないでしょう。そんな気がしてならない!しかし、今はそんな時じゃない。自重しろ、私。)

 優理は近くにあった鞄に付いている、ブドウのキーホルダーを見た。

 (ブドウか…ブドウは肥えた土地でよく育つと言うが、舞ちゃんのそれが肥えた土地で育ったならあれか、愛美ちゃんの土地は枯れているという事か。)

 「あの…さっきから何をしてるんですか?」

 優理は気が付くと、変な踊りを踊っていた。

 「い、いや、何でもないよ。」

 優理に無線が来た。

 「あなた、今変な事考えてなかったかしら?」

 愛美だった。

 「い、いえ、何も。」

 「そう。」

 (危なかった、なんだ愛美ちゃんは超能力者かよ。)




 しばらく探索をすると、舞が何かを発見した。

 「日記がありました。」

 「ほう、日記とは見せたがりですね。分かります。ではお望み通り。」


 X月Y日

 今日、テストが返された。

 赤点だった。

 それを友人に話したらバカにされた。

 バカといえば、2年の佐々木はどうだった

 のだろう。

 あいつは相当なバカだ。

 ところであいつが見つけた番号は違う。

 本当は7389だ。

 「マジか佐々木。舞ちゃんは高校生だけど、学力はどうなの?」

 「普通ぐらいですよ。優理さんはどうでした?」

 「ひ・み・つ。」

 「えー、それはないですよ優理さん。」




 優理に無線が掛かってきた。

 「はい、こちら法律相談事務所。」

 「お前はいつそんなもんになった!」

 「おー、そのツッコミは大斗。」

 「お前はツッコミで人を判断するのか!」

 「いや、違うけど。それで、なんで無線してきたの?」

 「あ、ああ、そうだな。実は、調理室の4桁の南京錠があって分からないんだ」

 「あ、それなら知ってる。佐々木ってのが見つけた番号は違くて、本当は7389らしいよ」

 研介はその番号に合わせると、南京錠は外れた。

 「よし!ロック解除だ。」

 



 研介と大斗は調理室に入った。何かあるか探すと研介はダクトの中に何かあるのに気が付いた。

 「大斗さん、あそこ何かないですか?」

 「あ、本当だ。でもあんなところじゃあギリだな。」

 研介は腕を伸ばし、必死に取ろうとした。

 「あ。」

 「どうした?」

 「鍵が下に落ちました。」

 「しょうがねえな。ほら、外に階段があったろ。たぶんあそこだ。」




 「うわっ、臭え。『お前が落としたから、お前1人で行ってこい。』とか言って俺1人だし。」

 研介は落ちたものを探した。

 「あ、あったあった。鍵見つけました。」

 「おう、ご苦労さん。何の鍵だ。」

 「図書室です。」

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