第10話 旅の道連れ

 バスはオランウータンも乗せると再び走り出していた。

「それより、あなた達は何処へ向かっているの?」

 オランウータンはカバン達に尋ねた。

「たしか、‘しせつ’とかって言うところで…」

 フェネックが答えた。

「し、施設って研究施設のこと?」

 オランウータンは少し興奮した様子だった。

「た、たぶんそうだと思います」

「わ、わたしもいっしょに行っていいかしら?」

「いいですよ。ラッキーさん大丈夫ですよね?」

 カバンは緑帯のラッキービーストに訊いた。少し間があってから、

「ワカッタ ヨ。コンカイ ハ トクベツ ダヨ」

と、答えが返って来た。このラッキービーストは答える前によく考えるクセがあるようだった。

「街に忍び込むのはいつものことだけど、研究施設だったところは入れたためしがないのよ。図書館は出入りが自由なのに」

 オランウータンは言った。

「ここにもとしょかんがあるの!?」

 サーバルはここにも図書館があるということに驚いていた。

「それと、まちにはフレンズさんはいなんですか?」

 カバンがオランウータンに尋ねた。

「ああ、それはドンたちが入れてくれないの。こうやって忍び込むことは出来るけど、見つかると追い出されるのよ。あと鳥のフレンズはたまに出入りしてるわ。でもまあ、興味を持っているのは極一部ね」

 オランウータンは笑いながら答えた。

「さっきから、ドンって誰なのだ?」

 アライさんが訊いた。

「ラッキービーストのこと?そう言えばあなた達はボスって呼んでるのね。まあボスでもドンでも意味は似たようなものよ」

 それからオランウータンはカバンの方に向き直った。

「あなた、カバンって言うみたいだけど何の動物かしら?聞いたことない動物ね」

 それを聞いたサーバルは、

「カバンちゃんはヒトって言う動物なんだよ。いろんなこと思いつくのが得意で、すごいんだよ」

と、胸を張って言った。

「えっ、あなた、ヒトなの?!」

「あ、はい、そうです」

 カバンは控えめに答えたが、オランウータンはすごく驚いた様子だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る