第5話 ラッキービースト

 ごこくちほーの港についたときには夕暮れ時になっていた。


 カバン達はマイルカと別れると桟橋がある所にバスをつけると、さっそく陸に上がった。

「バスを陸に上げたいけど、どうしましょう…」

 カバンちゃんは少し困ったような声で言った。桟橋はバスの天井近くの高さがあった。

「まあまあ、かばんさん、ゆっくり考えようよ」

「そうだよ。ちょっときゅーけーしよ。それにかばんちゃんなら、またなにか思いつくよ。きっと」

「それに、アライさんなんか、疲れてバスで寝ちゃってるよー」

「そうですね」


 港は広く、大きな建物が一つあった。

「なんだか、変わったところだね」

「あっ、あそこにボスがいるよ」

 サーバルが指を差して言った。すると、遠くからぴょこぴょこと歩いて近づいてきた。

「ボク達に気付いたみたいですね」

 やってきたラッキービーストはこれまでと違い、緑色の帯をしていた。かばんの目の前にくると、姿をまじまじと見つめた。

「あ、どうも‘かばん’って言います」

 カバンちゃんは律儀にあいさつをした。だがラッキービーストは黙ってカバンを見つめていた。

「あれ?このボスしゃべらないのかな。それにわたしたちのちほーにいたのとはちょっとちがうよ」

 サーバルが言っている間にも緑帯のラッキービーストはカバンを見つめながら、周囲をぐるりと回るとまた正面で向き直った。

「キミ ハ ヒト ダネ」

「あ、はい。そうです」「うわ~!やっぱりしゃべったー!」

「やっぱりボスは、かばんさんには話しかけるみたいだね」

「ボク ハ コノ ミナト ニ ヒト ガ モドッテ クルノヲ ズット マッテ イタンダ」

「そうなの?」

「このボス辛抱強いんだねぇ」

「ラッキーさん、それってどのくらいなんですか」

「トッテモ ナガイ ジカン ダヨ」

 それから緑帯のラッキービーストは向きを変えて歩き出した。

「ボク ニ ツイテ キテ」

 それからそのラッキービーストは歩きながしゃべり続けた。

「ボク ハ ジャパリパーク デ ムカシ ナニガ オキタノカ ヲ ツタエル トイウ シゴト ヲ マカサレテ イルンダ。ヒト ガ ココ ニ フタタビ オトズレタ トキ ノ タメニ」 

「えっと、ラッキーさん、これからどこにいくんでしょう?」

「シセツ ダヨ。シリョウ モ アルカラネ」

「そのしせつ?って言うのはどこにあるんですか」

「スコシ トオイ トコロ ダネ。バス デ イク ヨ」

「えー、ここにもバスがあるのー!」「よかったね、かばんさん、新しいバスに乗れるみたいだね」

 そのときカバンさんは大きなあくびが出てしまった。

「でも、今日は疲れちゃったかな。暗くなってるし、ボクちょっと休みたいです」

「わたしはだいじょうぶだよ。やこう…」「ソレナラ アノ タテモノ ガ チョウド イイヨ。シュクハク シセツ ガ アルカラネ」

 緑帯のラッキービーストはサーバルをさえぎるかのように言った。

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