チャプター4

「まあ、私は断然外に出たいけどね」

 マキナは掲示板に張り出されている紙を一枚ずつ眺めながらそう呟いた。

 依頼発注所にはエレファント内の案件が多数で、外の依頼はかなり少ない。

「そう言う人もいるって事だよ」

 横にいるディーンが付け加える。

 二人の会話を聞きながらトレインは掲示板を見ながらゆっくりと歩いていた。すると、良さそうな案件を目にした。

 手を伸ばして早速知らせようとするが。

「お前にはもったいねえよ」

 なんと横から奪い取るように他の隊が紙を掴んだ。

 ジトッとした目を向けると、にやけている集団がいた。

 見覚えがある。確か学校で同じクラスだった奴らだ。クラスでも大きな集団で固まっていたが、卒業しても解散していなかったらしい。

「お前にはこれがお似合いだろ」

 そういって名も知らぬ相手は一枚の紙を押し付けてきた。

「じゃあな、せいぜい地上人との会話を頑張ってくれよ」

 クスクスと笑いながら去っていく集団にトレインは奥歯を噛み締めた。

 何も間違ってなどいない。親父は教えてくれたのだ、地上人も同じ人間であると。

 悪態をつきたくなるのを堪えて、トレインは押しつけられた紙に目をとした。

 そこには『子犬探し』とだけ書かれている。

「そんなもの受ける必要はないわ」

 いつの間にか横に来ていたマキナが、トレインの手から紙を取って掲示板に戻す。

「僕もああいうのは嫌いだなあ。どっちが本当の人間かなんてどうでもいいよ」

「まさかディーンもトレインと同じ考えなの? 地上人と私たちが仲良く出来るって思ってる?」

 掲示板に紙を貼りながらマキナは呆れた口調で尋ねる。

 ディーンはトレインを一瞥し、少しの間を置いた後、口を開いた。

「どうだろうね、僕はあったことないから何とも言えないよ。でも可能性はあるんじゃないかな」

 上手い言い回しだがマキナは『仲良くなれる』と受け取ったらしい。

 トレインにしたように、ディーンの胸に人指し指を押し当てた。

「あんたはトレインよりも早く治りそうだから言うわよ。その考えは捨てなさい。地上人となんて仲良くできないわ」

 きっぱりと断言するマキナにディーンは僅かに、ほんの少しだけ目を細めた。

 トレインはディーンの横顔をみるが、何を考えているのか全く分からなかった。

「もうその辺にしておけ、それよりも依頼を探すのが先だろ」

 息があがっているマキナにトレインが言うと、彼女は大きく息を吐いた。

「そうだったわね。外での依頼があるといいわね」



「んで、これが初任務かよ」

 周囲の殺伐とした風景をいまいましく見つめてトレインは愚痴をこぼした。

「文句言わないのよ。外に出れるだけでも感謝しなさい」

「僕はかなり満足しているよ。まさか最後に残っていたのが、偵察だなんてね」

 ディーンは岩場に伏せながら頭に書けたゴーグルを目に当てる。二つのレンズ横には小さな調節ネジが付いており、それを回してピントを合わせていく。

「ディーン、あんたかなり目が良いわね」

「あ、それは俺も思った。この前、ガーディアンがガルマスと戦っている時に真っ先に動きを捉えていたもんな」

「ははは、あれはたまたまだよ」

 ディーンは軽く受け流すが、簡単な事では無い。

 学生が相手の動きを読むのとは話しが違うのだ。エレファント随一の実力者の動きだしを目視で判別できるなど並大抵の洞察力では不可能だ。

「うーん何もないよ」

「そうだな、見渡す限りの荒野だ」

 ディーンの言葉に賛同するトレインは目を細めて前方を伺った。

 後ろにはエレファントがあり、トレインたちの報告を待っているのだ。

「確認したら戻るわよ。ここで手におえないガルマスが出てきてもガーディアンは動けないのよ」

「力を使いすぎて休息が必要なんだっけ? そんなに疲れるのかねあのスーツみたいな機械は」

 トレインはそうぼやいてこの前の事を思い出す。

 むき出しの歯車と配線を見せつけるかのように身にまとったガーディアン。確かにあれほどの出力を発揮するならば体に負担がかかるのだろう。一言で言えばもろ刃の剣だ。

 しかしながら現在ガーディアンは必要不可欠な存在となっている。戦闘員でも叶わない敵はガーディアンに任せるしかないし、元々、戦闘員の数だって少ない。

「よし、じゃあ帰ろうか」

 ディーンは顔からゴーグルを外すと二人に告げてきた。

 問題は無い。いや、初任務で戦闘になっても困るだけだが。

「子犬探しよりも楽勝じゃない。銃と弾一式フル装備で持ってきたのに」

 つまらなさそうに言って、マキナは背伸びをする。

 ディーンも持ってきていた武器を肩に背負って帰りの準備をしていた。

「格闘系の武器って、はめたままでいいんじゃないか?」

 トレインはディーンの背負うナックルを見て言った。

 指先から腕までをグローブのように完全に覆う武器で、拳には細工が施してある。

「それでもいいんだけど、どうしても蒸れるからね。機械にはよくないんだ」

「そういうことか」

 トレインとディーンが話していると、既に帰る気満々のマキナが急かしてくる。

 バイクのエンジンをかけて大声で。

「早くしなさい!」

 後部座席を叩いてディーンに座るように促す。

 移動手段を決めていなかったディーンはマキナとタンデムでこの場所まできたのだ。

「分かったよ」

 ディーンがそう言った瞬間。

 なんと今まで何もなかった地面が大きく揺れたかと思うと、土の中から巨大なガルマスが姿を現した。

 四つん這いの敵は背中に甲羅を背負っており、長い首と尾を持っている。

 ギラリと眼光鋭く、面積の大きい足はありを踏みつぶすためにあるようなものだ。

 全身を赤が埋め尽くし、今にも火を履きそうな姿である。

「これって」

「ガルマスじゃねえか!」

「散開するわよ!」

 指示を出したのはマキナだ。

 アクセルを全開にして走り出し、ガルマスの後ろに回り込むようにしてバイクを走らせる。

 後ろに乗っているディーンも顔を引き締めてナックルを装着し、敵を観察する。

 トレインはローダーのスイッチを入れると、すぐにその場から退避した。

 瞬間。

 長い首を鞭のようにして振り下ろしてきたガルマス。

 地面が割れ、乾いた砂ほこりが当りを被い尽くす。

「これじゃあ、図体デカいお前が的だな」

 カイトは呟いて口の端を釣り上げた。

 剣を肩に乗せて猛スピードで突っ込んで行く。

 しかし。

 右から地面すれすれの高さでやってくる赤い線に気が付いた。

「尻尾のほうか!」

 慌ててローダーの出力を上げ、勢いよく飛び上がる。

 下方を敵の尾が通り過ぎていくのを目視すると、再び懐に潜り込むために突っ込む。

 馬鹿でかい足を視界にとらえ、今度こそトレインは力の限り剣を振り下ろす。

 手に伝わる衝撃に顔をしかめ、剣をさらに強く握る。

 ブシュッと肉に沈み込む感覚を捉え、さらに奥へと押し込もうとするが。

「ヤアアアアアアアアアアアアアアアン!」

 甲高いガルマスの声が響き、斬った足が振り上げられる。

「なっ!」

 慌てて剣を引き抜こうとするが、その前にガルマスの足が顔面に直撃した。

 鼻から思いっきり血が吹き出し、口の中が鉄の味で満たされる。

 なんとか視界は生きているが、体が自由に動きそうにない。

 地面に激突したトレインはそのまま転がると、前を横切るバイクに焦点を合わせた。

 マキナが銃を撃ち、地面に降りたディーンはガルマスの甲羅の上にいる。

 軽く脳震盪している頭を押さえて、もう一度剣を握りしめる。

「ローダーはまだ生きているな」

 足元を一瞥し、次に前を向く。

 マキナの的確な狙撃はガルマスを嫌がらせることに成功しているが、どうにも決定力に欠けているようだ。

「あんた起きたなら早く行きなさい! 弾が無駄でしょ」

「俺の心配はないのかよ」

 軽口を叩いてトレインはもう一度滑り出す。

 背中の甲羅はどうあがいても刃が通らない。ディーンの成果が出るのも時間が掛かりそうだ。

 しかし、すぐにトレインは思わず口の端を釣り上げる。

 こうして敵の周りを滑らなくとも、真正面に弱点があるではないか。

 トレインはピッタリとガルマスの眼の前で立ち止まると、顔を上へと向けた。

「さあ来いよ、お前の攻撃なんて当たりゃしねえからな」

 言葉が分かるわけではあるまい。しかし動かないトレインを前にして何もしない敵では無いのだ。

 首を振りおろし、トレインを押しつぶそうとして来る。

「バカ! 避けなさい」

「分かってるよ!」

 トレインはローダのスイッチを入れると、すれすれのところで攻撃を回避した。

 そして敵の首に刃を突き立てると、そのまま胴体の方まで駆け抜ける。

「うおおおお」

 剣を手放さないように力を込め、全体重を前に傾ける。

 緑糸の体液がぶちまけられ、トレインの死かを被う。

 そして。

 甲羅の上に乗っていたディーンの姿が見えた所で立ち止まった。

「これじゃあ僕の意味が無くなったじゃないか」

 分厚い甲羅を片手に、息絶えたガルマスからディーンは降りてきた。

「悪いな。次は残しておくさ」

 肩をすくめたトレインの元にマキナも合流する。

「やったわね。初任務でガルマス初討伐よ」

「これで追加報酬が出るといいんだけどね」

 トレインは剣を振ってこびり付いた血を飛ばして、背負いなおした。

 突然現れた時はどうなることかと思ったが、どうにか対処できた。

 そんな気落ちが全員の顔に出ており、ほっと一息つこうとした時。

「まったく、俺たちの得物を取りやがって。どうしてくれるのかね?」

 聞き覚えのない声にトレインははっとしてガルマスの死体の上に目を向けた。

 そこにはフードを深々とかぶり、反射ゴーグルをつけている人物が立っていた。

 体には装飾品を身に着けておらず、腕や足には包帯を巻いている。

 武器も持っていなければ、移動してきた乗り物も見当たらない。

「誰?」

 とっさにマキナが銃口を向ける。

 声音からして男だろう。

 カラカラと笑うと、その場に座った。

「俺か? 俺はヴォーグ・ガバナス。分かりやすく言うなら地上人だ。君たちはエレファント人だろう?」

 どこか楽しそうにそう言い放った男の目は見えないが、じっとこちらを見つめているのが感じ取れる。

 トレインがはっと息を飲むと同時に、後ろの方でマキナの声が響いた。

「あんた達が!」

 悲鳴にも似た声音と重なって、銃声が轟く。

 トレインが反応した時にはもう遅い。すでに放たれた弾丸は地上人へと吸い込まれて行く。

 しかし、なんと体に当たった銃弾は弾かれてしまったのである。

「なっ! なんで……」

 愕然とするマキナがトレインたちの心境を代弁している。

 ヴォーグはからからと笑うと立ち上がってガルマスの死体から降りてきた。

「そこのお嬢ちゃんは何か恨みでもあるのかね? 俺は今日初めて対面したはずだけど」

 ゆっくりと歩いてくるヴォーグはマキナの前で立ち止まる。

 頭一つ分高い相手を睨み、マキナは目に涙を浮かべている。

「あんた達の仲間がお母様を殺したのよ!」

 銃口を地上人の頭に押し当て、引き金に指を掛けるマキナ。

 ヴォーグは臆する事も無くさらに、顔を近づけた。

「俺は人を殺したことは一回も無いんだがね? ガルマスなら数えきれないくらい殺しているけど」

「糞みたいな彼ですが言葉に嘘はありません」

 新たに声が聞こえてきたかと思うと、ガルマスの死体の影から一人の女性が飛び出してきた。

 長い黒髪を後ろで一本に束ね、顔の半分を布で覆っている。

 両手に持つダガーをマキナの首元に当てると。

「その銃をどけなさい」

 低く威嚇するような声音でマキナに言う。

「別にいいよ、ネーナ。彼女の話を聞こうかね」

「ヴォーグ、あなたにエレファント人の話を聞く耳を持っているのですか。もう少し掃除してからでも遅くないと思いますが」

「いやいや、ネーナの言葉は相変わらず耳が痛いね。でも今は……この臆病者の話を聞こうかね」

 ヴォーグがそこまで言うと、ネーナはマキナの首に当てていた刃を収めた。

 トレインも剣の柄に触れていた手を放して事の成り行きを見守る。

「お嬢ちゃんが聞きたいのは何かな?」

「お嬢ちゃんって……バカにしないでよ!」

「分かった分かった。それで何を言いたいのかね?」

 銃を突きつけられているにも関わらずに、飄々と尋ねるヴォーグ。

 布で顔を覆っているために表情は読み取れないが、挑発的な態度を取っている事だけは伝わってくる。

 トレインはヴォーグからマキナに目を移す。

 怒りが彼女を支配し、もう一度引き金を引きそうな顔をしている。

「あんた達地上人がお母様を殺したのよ!」

「さっきも言ったけど、俺は人を殺したことは無いんだがね」

 ヴォーグは額に手を当てて天を仰ぐ。

「直接手を下す事だけが人殺しじゃないわ。見捨てて殺すことも可能なのよ」

 トレインはそこまで聞くと二人の会話に割って入った。

「マキナ、どういうことだ?」

 今までずっとマキナの地上人嫌いは博士の影響だと思っていた。いや、それも原因の一つに違いない。

 しかし今この状況を見る限りではそうでないのかもしれない。

 マキナは銃を降ろさずにトレインを一瞥した。

「お父様の研究にはお母様もついて来ていたの。でも……ガルマスが現れて私たちは逃げたわ。そこに来たのがこいつら地上人よ」

「それだったら助けて」

「くれなかったわ。ガルマスが強すぎて地上人も逃げ出したのよ、お母様を身代わりにしてね。こいつらは逃げる時間をお母様を使って稼いだのよ!」

 ヴォーグに目を移したトレインは視線で尋ねる。

「おいおい、そんな目で見るなよ。俺は今まで出会ったガルマスは殆ど殺してるし、エレファント人と会ったのも今日で二回目だからな」

 ヴォーグの言っていることが本当ならば、やはり人違いなのだ。

 しかしマキナにとってはどうでもいいのだろう。地上人が許せないのだ。

「それで質問はすんだかね? 俺は早くこのガルマスを運びたいんだがね」

 ヴォーグはガルマスの死骸を叩き、トレインとディーンの方に目をやった。

「待ちなさい! まだ話は……」

「もうよしなよ、マキナさん。これ以上は時間の無駄だよ。彼じゃないのなら責めるのは間違いだ」

 緊張状態の中で口を開いたのはディーンだった。

 僅かに眉根を寄せてマキナの方まで歩み寄る。

「でも…………いえ、やっぱり許せないわ」

 マキナは意を決したように大きく息を吐くと、ついに人差し指に力を入れた。

 その時。

 後ろにいたネーナの拳が閃光とも呼べる速さでマキナの後頭部にヒットした。

 電源を切ったようにマキナはその場に倒れ、放たれた銃弾は明後日の方向へ飛んでいく。

「確かにヴォーグはだらしなくて臭くて不細工ですが、殺させませんよ」

「ありがとうネーナ。さすがにこんな至近距離じゃ俺の内功でも痛みを感じるからね」

 ヴォーグの言葉に一礼したネーナは、トレインたちの方にも目をむけた。

 身構えてしまうが、その心配は杞憂に終わった。

「失礼しました。ではヴォーグ、行きましょう。皆が待ってます」

「そうだな。目が覚めたら彼女によろしく言っておいてくれ」

 ヴォーグはひらひらと手を振ると動かなくなったガルマスの死体の下に潜り込んだ。

 そして、なんと下からガルマスを持ち上げたのである。

 異様な光景にトレインは目を見開き、口をポカンと開けてしまう。

 そんな阿呆な顔を見てネーナが言った。

「私たちが貴方達と違う点は内功が使えると言うことです」

「ないこう?」

「そうです。体内を巡る功を活用することで筋力や動体視力を大幅に向上させます。何分、私たちには機械を扱う習慣はありませんから」

 地上人の事は学校でも習うが、エレファント人との重要な違いは何一つ分かっていなかった。

 単に悪逆の限りを尽くすとしか教えられてこなかった。

 心では彼らと仲良くなりたいと思っていても、養成所で習った事が思い出されてしまう。

 トレインは自分を嘲笑し、穴があれば今すぐにでも中に入りたい気持ちだった。

「おーい、ネーナ。早く行くぞ」

「少しは辛抱と言うことを覚えたらどうですか? まあそんな学習能力があるとも思えませんが」

 そう言いつつもネーナは、ではこれで、と一礼してヴォーグの元へと歩いて行く。

 トレインはその背中を見つめて、とある疑問を無意識に投げかけていた。

「本物の人間って、エレファント人と地上人のどちらだと思う?」

 ネーナは歩みを止めて後ろ一瞥した。

 それから少しだけ間を置くと。

「それは……大地と共に生きている私たちでしょう。では失礼」

 再度歩きだしてヴォーグの隣に並んだ。

 トレインは天を仰ぎ息を吐く。

 エレファント人と地上人、この二つはどうやっても折り合いがつかないのかもしれない。

 父の言葉がよみがえる。

 どちらの人間も仲良くやっていけるのだと何度も言い聞かされた。

「道のりは難しそうだね」

「ああ、そうだな。でも驚きだ、まさかディーンは地上人と会っても普通に接していたな」

「いろいろあるんだよ。逆に僕は君が慌てなかったことが不思議でたまらないよ」

 そう尋ねてくるディーンにトレインは肩をすくめる。

 倒れているマキナを担いでバイクの後部座席に乗せながら。

「正直に言うと、頭が真っ白になってたんだよ。マキナが話している時なんかだんまりだったろ」

 地上人が現れ、さらにはマキナの母親の事が明らかになった。

 二つ同時におこった予想外の出来事に思考がついていけないのである。やっと落ち着いた頃には、たった一つの質問しか出来なくなっていた。

「でも、どこか……いや、何でもない。それよりもエレファントに帰る前に一つだけ確認しておきたいことがある」

「どうしたの?」

 マキナをバイクに固定したトレインは、ディーンに向かって尋ねた。

「エレファントが動いてるんだけどさ、俺達って光信号送ってないよな」

「そうだね。確かに僕たちはまだ合図を送ってないよ」

 エレファントからこの場所が見えるとしても、トレインたちはさらに向こう側をゴーグルで覗いている。

 本来ならばこの地域一帯の安全確認をしているトレインたちの合図を待つ予定だ。。

 もし、そんなに先の場所まで見通せるならば偵察の依頼は出ていない。

「バイクは僕が運転するよ」

 思考の海に漂っていたトレインを引き戻したディーンは、エンジンを掛けると走り出した。

 その後を追ってトレインもローダーで風をきるが、一抹の不安を払拭できない。

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