終結部〈コーダ〉
ぼろぼろ泣きながら、右手で都築さんのことを抱きしめた。告白が成功する確率とかは、数字にすると不遜な気がして、考えないようにしていたが、まさか、受けてもらえるとは。
フラれるにせよ、受けてもらうにせよ、完全に自分の中で吹っ切るために告白をした、という点では、全く持って彼女のことを考えない最低の告白ではあった、が。
少しだけ我に返ると、ぼくの胸で都築さんも泣いているようだった。
「もうっ、だって、くるる君、わたしのこと大好きなのが見え見えなのにずっと何も言ってくれないんです、もん」
「ごめんなさい、ごめんなさい。……紆余曲折がありまして」
頭に手を伸ばす。髪を撫でてあげると、予想以上に甘えるような仕草を見せてきて。
「そういえば、ぼく、都築さんのあのアカウント知ってるんですよ」といって、九か月前にはとっくに暗記していたアカウント名を告げる。
「えっ? な、なんで? なんで知ってるんです、か? 調べたの?」
さすがに、まさか会う前から知ってましたとは言えない。
「やだなぁ……あの発言、全部見られてたんです、か。なんでもっと早く……」
「あのアカウントを知ってたから、急に昨日不安になったんです。ぼくは楽しかったのに、都築さんは帰ってから後ろ向きなことを発言してたから」
「もう、なにがなんだか分らなくなってきた」
「どうしてわたしじゃなければダメなのかな」
「あっ、あれ、あれね……。あれはね、だから、わたしもくるる君のことを大好きで、わたしはずっとくるる君のこと考えてるのに、くるる君はわたしのこと大事に思ってくれてるのかな、って不安になって」
まさか、似たようなことを考えていたとは。思わず苦笑してしまう。
「それに、わたしと似たような人なんてたくさんいるし、わたしと似たような人をくるる君が嫌いになるところをたくさん見てきたから、なんでわたしのことは好きでいてくれるんだろうな、それともそれすらわたしの都合のいい妄想なのかなって思って、つい不安になって、っていうこと、です……」
嗚咽交じりにこんなかわいいセリフを言われて、嬉しくならないわけがない。
ぼくは少し強引だったかもしれないが、彼女の頭を引き寄せて……。
歯のがちがちぶつかり合う音を立て、初心者特有のミスを犯しながらではあったが、都築さんも笑っている。これ以上のことがあろうか?
そういえば、ずっと彼女の左手を握りっぱなしだった。バツが悪くなって、ぼくは手を放した。
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