第5話

バイト終わり、帰り道


結局、オカノさんとは仕事の説明をしただけで、それっきり会話は無かった


気になる


気になって仕方がない


夜の人通りの少ない道、主役のいないスポットライトみたいに一本立っている街灯を見ていたら、急に自分の気持ち悪さに気付いた


家に着いて、ドアノブに手をかける


やはり、また鍵はかかっていなかった


母親は仕事


帰ってくるのは朝方のときもあれば、深夜のときもある


ご飯は、バイト先で食べてきたから、後はお風呂に入って寝るだけ


でも、まずはソファに横になって、スマホを開く


今日学校でヨウと話した、あの新曲を小さめの音量でかけた


アパートで壁が薄いから夜には気を遣わなければいけない


ずっと聞いているバンド


ライブも何回か行ったけど、薬物みたいにやめられなくなる


また行きたい


僕にとってそれは精神安定剤みたいなものだ


ピーンポーン


家のインターホンが鳴った


スマホを置いて、玄関に向かおうとした時


ピーンポーン


ピーンポーン


2回目、3回目


1回1回の間隔を埋めてインターホンは鳴り続ける


小走りで玄関に向かい、すぐにドアを開けた


「音、うるせえよ!俺の部屋まで聞こえてんだよ!」


隣に住んでる男だ


耳には大量のピアスに、明るい髪色


「あ、すいません!今止めるんで!」


すぐにまた部屋まで走って行き、スマホを取って音楽を止める


男は家の中を覗いて、それを確認すると、大きめの舌打ちをして部屋に戻って行った


僕の精神安定剤は、隣人によって取り上げられた

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