第4話

「あ、うぃっす」


バイト先に行くと、チャラチャラした先輩に会釈をされ、僕も返す


「今日、新人の子来てるから、色々教えてあげて。女の子でさ、多分スグルくんと同い年。結構可愛いよ」


「あ、はい」


奥の休憩部屋に入ると女の子が座っていた


こちらからは顔が見えない


「あのー」


声をかけると女の子は立ち上がって振り返った


「え…」


目を疑った


その女の子は夢に出て来た女の子とそっくりだった


そっくりというより、完全に同じ


綺麗なショートの髪、細い体、猫のようにつり上がった目


「なんですか?」


女の子は目をじっと見つめて、表情を変えず聞いてきた


「いや、何でもないです。あ、僕はタカハシスグルです」


「オカノハナです」


オカノさんは、丁寧にお辞儀をした


夢で見たことがある、とは言わなかった


言ったら、完全に僕はやばい奴になるし、新手の口説きかなんかと間違われるのは嫌だった


仕事の説明を終えて、オカノさんは早速仕事に取り掛かっていた


自分の職場に戻ってから、色々と考えてしまう


何度も見た夢だったから、女の子の顔ははっきり覚えている


でも、違うのは夢の中の女の子は、ずっと泣いていて、か弱い感じだった


だが、オカノさんは違かった


表情は崩さないし、女の子にこんなこと言っていいのか分からないけれど、どちらかというと強そうだ


と、そんなことを考えていたら客に料理を届ける時にお皿を落として割ってしまった


「すいません!」


それなりの音量で謝ったけれど、酔っ払いの声でかき消された


もう仕事終わりのサラリーマンが、居酒屋に押し寄せる時間帯になっていた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る