うちの子に限って:Part2

 ――えっ?

 まさか、あの子が……。


 そんなこと到底信じられません。

 何かの間違いではないでしょうか?

 あの子がそんなことをするなんて想像も出来ません。


 ええ、もちろん小さな頃から人様よりは厳しく躾をしてきたつもりです。

 物事の善悪から、世の中の仕組みについてまで――。

 人様の迷惑になるようなことは絶対にしてはいけないと、口が酸っぱくなるほど言って聞かせてきました。

 

 ええ、思春期をむかえた頃、親の話をまともに訊かなくなった時期もありました。その時は、まともに親と顔を合わそうともしない……。

 でも、そんなことはどこの家庭でもあることです。

 所謂、反抗期というやつですね。

 誰しもが多かれ少なかれ通る道です。

 しかし、今ではあの子は、やって良いことと悪いことの区別や、物事の判別ぐらいはつくようになったはずです。

 

 おっしゃることが本当なら、ただ魔が差しただけとしか思えません。

 そうです。その時正気じゃなかったのです。何かの間違いなのです。


 私はあの子がそんなことをするはずがないと信じています。

 誰が何と言っても。

 

 うちの子に限って――

 そんな馬鹿なことをするなんてとても信じられません。

 あの子に何かがあったとしか思われてなりません。


 いくらあの子が、◯◯財閥の家督を継いだとはいえ、全財産を慈善団体に寄付するだなんて本当なのですか?


 弁護士さん……。



          <了>


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うちの子に限って 長束直弥 @nagatsuka708

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