第20話 誰も知らない物語


人は生まれついた時から平等ではあらず。

弱者は潰され強者は上に立つものなり。

人は争いに負けたのならば代償は支払うものなり。それ即ち「人としての権利」なり。

セカイに神あらず。悪魔あらず。

セカイは人が造り上げるものなり。

敗北者は勝者に歯向かうことあるべからず。


第20話 誰も知らない物語


「無茶だ京香、相手は腐りきっていてもあのアレクダルア共和国だぞ?」

「承知の上だよ。ただ、試してみるだけなら問題ないだろう?」

「なにか秘策でもあるのか?」


俺達にはアレクダルアのお嬢様がいる。だから簡易な行動は避けておきたいところだが・・・


「ただ、いくら良い作戦でも、激戦区のマリンバレーと、アレクダルア共和国の首都付近には近寄れないぞ。それに警備も半端なさそうだしな」


正しくその通りだ。いくら激戦を繰り広げていたとしても、裏の作戦があるかもしれないからアレクダルアだって警備を怠ってはいないはずだ。むしろ怠っていたら逆に怪しいぐらいに。


「兄さん、ポルティアは?」


ポルティア、携帯のようなものだ。


「あっ?あぁ、あるけど」


なにか不安そうに京香へ見せる。


「ポルティアで電波を発して囮にするんだよ」

「囮か・・・悪くないが指紋とかメアドとかでバレてしまうんじゃないか?」

俺が愛用しているポルティアだもんな指紋とかベタベタやで?

「だいじょうぶ。問題ないよ」

「なんの根拠があるんだ?」

アイルが首をかしげて問う。

「指紋には特別な砂を掛けて発見するんだ。だからその砂を掛けれないようにするんだ」

あー?何言ってんだかわからんぞ

「なるほど、指紋を消すと同時に砂をかけれないようにするのか、」

え?でもあれじゃん。壊れちゃうじゃん。

「流石アイルさん!ポルティアの鉄は水を吸い込むから指紋と一緒に鉄の中に吸収される。勿論表面は濡れてるから砂はかけられない。完璧だね」

おい。多分一番使ってるけど知らなかったぞこのやろー!

「うんこさん?でしたっけ?」

「おいやめろ。俺の名前を汚物と一緒にするな」

「えっと・・・便秘さん?でしたっけ?」

「おいやめろ。俺の名前を中年のおじさんが飲み会で飲みすぎて家に帰った時のお腹の調子のような名前にするな」

「すっすいません・・・名前が覚えられなくて・・・」

「いやだからって!ユウキを何故!どーしたら!うんこさんとべんぴさんになる!?」

「フッ」

いやなんか遠回りに否定されてない気がするんですがそれは!?

「誠にすみませんッッッ」

おい!謝ってるのに笑いこらえるのやめろ!誤ってるとは言えないぞ!?


「ふふふっ」

「きょ・・・京香さん?」

どうしたいきなり笑って・・・

「あっごめんね。こうゆうの見たことなかったから、外の世界ってこんなに楽しいんだって思って、」

京香・・・

「ごめんな・・・俺がもっと早く助けてやってれば・・・」

「兄さんのせいじゃないよ!僕だってもう諦めてたし・・・」

「京香・・・」「兄さん・・・」


『アンタらはリア充かぁぁぁぁぁ!!!』


「やっぱりそう見える・・・?デレデレ」

「おい、ぶっ殺されてぇか?」

「あっはいさーせん。」


やっぱりアイルって良い奴なのか、悪いやつなのかさっぱり分からねぇ・・・


「でも僕本当は嬉しいよ。こうして諦めてた外を見ることが出来て、そして今こうしてみんなと楽しく過ごせてる。誰も知らない物語を僕は今見てるんだ。嬉しいよ」

何この子健気ちょーかわいい。

「あぁ、でもこのままだと、誰も知らない物語はグダグダになってしまう。その前に、お嬢さんをアレクダルアに返さないとな」

「何故?アレクに送ると益々やばいのでは?」

「さすが無能」

もう否定する気が起きてこないよ・・・

「ここでずっといるとそのうちアレクに見つかる。そうしたら監禁罪プラスのお嬢さんだし、その場で銃殺刑だろ?俺達がアレクダルアの近くまでいってお嬢さんを下ろして帰ってもらう。丸く収まるだろ」

「どこに連れていくんだ?」


行き先しだいでは殺される場合もある。ゼロパーセントとは言いきれないだろう。


「・・・あそこはどうでしょうか」


お嬢さんが口を開いた。たしかに俺たちよりは百倍アレクダルア共和国の国土を知っているはずだしな。


「香港?でも今同盟軍とアレクダルア共和国軍が大戦争中でそれも上海でだぜ?香港も、充分危険では?」

「えぇ、ですがお願いします。たぶんだいじょうぶです」

「だいじょうぶってお嬢さ_____」

『行きましょう。』

「まぁ試してみるのも悪くねぇな」


京香、ユウキ、シャロットなど、これって断れない雰囲気?人間って賢いねぇ・・・


「・・・わーったよ。行ってやるよ」


「良かったね!シャロットさん!」

「だが、今すぐは行けない。」


?全員が首をかしげてアイルを見た。

アイルは指を窓の外へ向けてそれに釣られ窓の外を見た。


「アレクダルア共和国軍の兵士だ。」


そんな・・・!?ここで見つかったらヤバくないか!?ここで見つかったらヤバくないか!?大事なことなので二回言いました!


「とりあえず、村は焼け野原だし、生存者は調べられるだろう。お嬢さんが見つかったら一大事だ。とりあえず京香とお嬢さんは隠れてくれ、俺とユウキでなんとかする」

まて、俺は一言も協力するなんて言ってないけど?

「来るぞ・・・」


とんとん!


「出てこい!ポルティアの反応がでてる!居ることは分かっているぞ!」


なっ!?そうだ!ポルティアをつけっぱなしだった!!ここで止まるわけには行かないのに!!


「チッッ・・・予想外な展開だぞこれは・・・」

いや、不味すぎるぞこれは・・・

「誰も知らない物語って、知れないぐらい残酷な運命なんじゃないのか?」

「かもな・・・」


俺はどうすればいい・・・・・・?






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る