第21話 壊れゆく虚像去りゆく希望

人は生まれついた時から平等ではあらず。

弱者は潰され強者は上に立つものなり。

人は争いに負けたのならば代償は支払うものなり。それ即ち「人としての権利」なり。

セカイに神あらず。悪魔あらず。

セカイは人が造り上げるものなり。

敗北者は勝者に歯向かうことあるべからず。


第21話 壊れゆく虚像去りゆく希望


「早く逃げないとやばくないか!?」

そんな事は分かっている・・・でも逃げ道がない。二人ぐらいなら隠れられるが、俺とユウキはどうすればいい・・・


「俺はどうすればいい・・・」


頭の中が満帆になりそうだ・・・なにかいい策があれば良いのだが・・・


『お主ら考えすぎじゃ』


高く若い声が聞こえた。年齢に合わぬ口調で喋っている。聞いたことのない声だ。


「君は誰だ!?」

アイルが問う。

『なぁに。世は大したものではないぞよ』

そう返答する。

「どうやって入ってきた!?アレクダルア人か!?」

『どこからも何もなかろう。ここは世のいえじゃからのう』

アイルはきょとんと肩を落とす。そう言えばたしかに昔聞いたことがあったな…言葉遣いがいろんな意味ですごい人ってのがいるってことを。

「・・・そうなのか」

『そうじゃ!平凡に暮らしていたのになんとゆう事じゃ!』

いや、回り大火事の大空襲だったぞ?

「・・・ッチ時間が無い」

『逃げ道ならあるぞ?使うのか?』

「なぜ知っている!嵌めようとしているのか!?」

おいアイル・・・落ち着け・・・

『は?此処は世の家じゃぞ?知っていて当たり前じゃろうが』

「・・・すまない冷静じゃなかった」

まずい・・・だんだん音が近づいてきた気がする。ここで見つかったら・・・考えるだけでゾッとするな・・・

「もういいんです!私を突き出してください!」

「京香!?駄目だそんなの!何とかするってこうゆうことか!?」

許さないぞ!そのなこと

「兄さん!わかって!僕だけで十分さ!」

「駄目だそんなの!」

『・・・兄妹喧嘩中申し訳ないが、もうタイムオーバーじゃぞ』

「・・・なっ!?」

ドン!と、大きな音を立てて扉が開く。入ってきたのは・・・アレクダルア共和国軍兵。最悪なパターンだ、、、。逃げ道、逃げ道・・・

「いーきのーこりーが居たとはなぁ!」

なっ・・・んだと・・・っ間に合わなかったか・・・

「アイル殿、ここは素直に投降した方が最善じゃぞ?」

分かっている!

「アイル!?そんな事したら京香とアレクダルアのお嬢さんはどうなると思う!?」

それも分かっている・・・!

「抵抗したら撃ち殺すからぁ」

くっそったれが・・・この状況をどうにか出来るのは多分俺しかいない・・・。皆冷静さを失っているが、俺も心臓の鼓動が止まらない。最善な方法・・・か・・・。

「君の名前は?」

アイルは彼女に聞いた。

「世か?世はサブレッド・ノイズ・スタークジェガン。ジェガンと呼んでくれても良いぞ」

スタークジェガン。聞き覚えのある名前だ。まぁ、いい・・・か。

「良し。スタークジェガン。ユウキ達を任せられるか?」

思っていなかった方向へ物語は進んでゆく。

「任せろ。元々ここは世の家じゃ」

「あぁ、頼んだ」

「しかしお主はどうするんじゃ?」

「・・・・・・星でもなってみようか、」


・・・おい、アイル?


「おい待て!アイル!どうゆう意味だ!」

俺は咄嗟に叫ぶ。

「ありのままだ。最後ぐらい見逃してくれよユウキ・・・」

そんな事・・・くっそっ

「頼んだ!スタークジェガン!」

その声は涙をこらえた声だった。

「あぁ、達者でな・・・」

『アイル!おい!アイル!!』

俺は喉が枯れるまで叫ぶ。心の底から叫ぶ。この声は彼の心に響くのだろうか。


「俺は俺を信じる。お前は俺を信じる。俺はお前を信じる。お前はお前を信じる。矛盾のない完璧な答えだ。だからユウキ、俺は、お前を信じる」


何も言えずに、首根っこをスタークジェガンに捕まれ、家を後にする。きっと彼には後悔は無いのだろう。俺は、お前を信じる、か。

「だから、スタークジェガン、お前を信じる」

するとスタークジェガンは驚いた顔を見せ、ニコリと笑う。

「そうしてもらえると有難いものじゃ」

自然と涙が流れくる。悔しいのか、悲しいのか、嬉しいのか。

「ユウキ殿。なくんじゃぁ無い。アイル殿は死んだ訳ではなかろう。目の前で殺されたわけでもないしのう。これも、アイル殿を信じる、一つの方法なのではないのかの?」

確かにそうだ・・・俺が信じてやらなくて誰が信じてやるんだ。アイルはそんな事で死ぬ男ではない。この体が、この心が、そのことを一番わかっている。壊れゆく虚像が虚しく感じ、去りゆく希望はまだ逃げきれていない。まだ運命に屈したわけでは無い。ここからだ。ここから大逆転劇が始まるんだ。


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