第五章〜同じ明日を迎えるために〜
第16話 恨み妬み泣き喚いたら
人は生まれついた時から平等ではあらず。
弱者は潰され強者は上に立つものなり。
人は争いに負けたのならば代償は支払うものなり。それ即ち「人としての権利」なり。
セカイに神あらず。悪魔あらず。
セカイは人が造り上げるものなり。
敗北者は勝者に歯向かうことあるべからず。
第16話 恨み妬み泣き喚いたら
何も無いただのあぜ道を馬車に乗りかけていく。その道はただ不気味な雰囲気をだしていた。この道は僕の故郷に繋がる道だ。が、いくら夜だとはいえ何も物音や動物達の生活音がしないのは怪しすぎる。この森にはガキの特記にしょっちゅう遊びに来ていたものの軍に配属になってからは来たことすらない。村にも戻ったことがない。そして今は戦争の真っ最中。昔からここは「世界一アドルフが出る場所」として有名だからだ。そこに駐屯基地を作り上げた。が、アレクダルア人にはアドルフは反応しない。そう。ここをアレクダルア共和国軍が攻撃すれば基地も破壊できれば村も壊せて逃げ回る村人達がアドルフに襲われ死んでいく。元々ここはとても地面がいいから基地や施設を作るのに向いている。アドルフに反応しないアレクダルア人は一石二鳥という訳だ。膠着状態が解除された今現在は村が襲われてもおかしくない状況。いや、襲われるだろう。だからユウキは一秒でも早く村に帰りたかったのだ。「無事でいてほしい」ただそれを祈るばかりなのだが、とことん神とは人間様が嫌いなようだ。村まであとすこしというところで赤い煙が黙々と宇宙へ上がっていっている。嫌な予感は的中した。
勇気は褥で馬車を走らせるも、そこはもう火の海だった。
「うそ...だろ?」
これは現実だ。偽りのない完璧的な現実。焼け死んだ村人が地面を覆い尽くし、まだ死にきれていない焼身殺し。その光景は正しく地獄。
「たぁぁすけてぇぇ!!」
「あついぃ!いたいいいい!!」
ユウキはどうすることも出来ない。目の前でゴロゴロと周り暑い、痛いと叫んでいる。肌は炎でドロドロとなり肉は焦げた匂いをまき散らし目は落ちて足はもげて聞いたことのない叫びを出しながら目の前で死んだ。無るに耐えない残酷な姿で。泣きながら精神崩壊を始めていた勇気はあたりを見渡す。今目の前で死んだような人が山ほどいる。あついあついと、いたいいたいと。大丈夫かと手を握ると、相手の手はもげて相手は絶叫する。罪悪感に見舞われた勇気は走ってその場をあとにする。走っている間もあたりは景色も変わらぬ赤く燃え上がる田園風景。地獄だ。助けてと叫ぶ村人を蹴り飛ばし、半分溶けて人間なとけっただけで生首が吹き飛ぶ。道中を走っただけで何人殺したのだろうか。中には仲の良い友達もいただろう。変わり果てた村を多々呆然と眺めていた勇気。頭にひとつ浮かんだ。
「かあさん...京香!!」
そう言うと家の方向へ走り出す。
「暑いぃぃ!!たすけてくれぇ!!」
そう言ってっくる村人達を蹴りつける。そうだ、僕は神でも救世主でもない。何も出来ない無力な人間。だけど、ひとりなら助けられる。神なんかクソくらえだ。カラスにでも食われればいい。恨み妬みそして泣いた。心の拠り所はまで生きていると、そう願った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます