第3話 成長、二年経ちました
星歴188年ー白風誠人がこの世界に来て二年の月日が経っていた。
陽が注ぐ窓辺に一人の男が寝ていた。余程眠いのか、目は少し覚めているものの全く起き上がるような素振りを見せない。
(まだ眠いな…よし、もう少し寝てよう)
俺、
「こらっ!起きんかゼギ坊!」
ポカリと布団の上から叩かれ、涙目になりながら顔を出した。
「痛ーっ、なにすんだよガー爺」
布団の横にいた
「もう昼じゃぞ、いい加減起きたらどうじゃい」
窓から外を見るともう太陽が昇り切っていた。この時期特有の肌寒い朝も昼にもなればポカポカと暖かくなり、
「もう昼か…、じゃあおやすみー」
「寝るなと言うのに!はぁ、…[光脈よ、我が手に集え。この果てに…」
「ストップ!起きる!起きるから、『
危うく光の塵になるところだった…。二度寝で永眠なんてシャレにならん。
「起こすのに消し炭にするこたぁねーだろ、体が消滅したら流石に死ぬぞ」
「ふう、こうでもせんと起きんじゃろうが…まあ起きたことじゃし、早速薪を取ってきてもらおうかのう」
「ああ、夜になるとまた寒くなるからな。じゃあキールの森に行ってくるわ」
そう言って靴を履いて出掛けようとしたが、ガー爺が呼び止めた。
「あー、ちょっと待てゼギ坊」
「ん?なんだよガー爺、まだ小言があるのかよ。そういうのは帰ってからにしてくんない」
「そういうのでは無いわ。最近キールの森について噂になっていることがあってな、それを言っておこうと思ってのう」
「噂?」
なんでも、数人の村人が「でっかい目玉と触手を見た」ということだった。
「儂は最初はアイ・ワームかと思ったんじゃが、あの森で今までアイ・ワームなんぞ見たこともないからの。お前もちょっと気を付けた方がいいと思うが…御主のことじゃ、そんな大したことにはならないじゃろう」
「まあな、この何年間どんだけアンタにしごかれたと思ってんだ。並の魔物じゃ相手にもならないよ」
実際のところかなりきつめにしごかれたので、俺の中では若干トラウマだったりする。
「ハハッ!それもそうじゃの、儂もお前にそんな緩い指導をした覚えは無いわ!まあ、見つけたら儂に知らせてくれい。危険そうだったら倒しても構わんぞ」
「ああ、わかった。それじゃ行ってきます」
俺はガー爺に手を振りながら、キールの森へと向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
時を少し遡り、フィグニス王国冒険者ギルド。
ギルドの中ではいつも通りの賑わいを見せ、冒険者やギルド職員達が動き回っている。のだが…
「そんなの、私が受ける訳ないでしょ⁉︎」
女性の声が喧騒の中でも良く聞こえるほど大きくギルド内に響いた。
「アンタ一人で行くつもりだったんだろ?だったら俺たちと末永ぁくパーティ組んだ方がいいだろぉ?なぁに、悪いようにはしないさ、悪いようにはな!」
声を発した女性と対峙する男四人が言い争っているようだ。リーダーらしき男がしつこく誘っているようだが、女性は男達の視線や声音が相当キてるらしくゴミを見るような目で罵倒を浴びせたり、きつく断りを入れている。
「このアマ、下手に出てりゃ調子乗りやがってぇ…痛い目見ねぇとわかんねーのかぁ!!」
我慢の限界なのか四人の内の一人が食って掛かった。
「はぁ…あなた達他にやることないわけ⁉︎この際だから言ってあげるけど、私はこう見えてAランクなの、C+ランクのあなた達三流以下の冒険者のパーティに入るなんて死んでもごめんだわ!そんなに女が好きなら冒険者辞めて娼婦館でも行ったらどう⁉︎もういいわよね、依頼があるからサヨウナラ!!」
「待て!話は終わってn」
「もう今回は駄目らしい、諦めろ」
「チッ」
男たちはそれぞれ舌打ちや悪態をついて、ギルドの外へ出て行った。一方、女性はさっきから持っていた依頼書をやっとカウンターに出せたところだった。
「もーっ!何なのよアイツら⁉︎今度会ったらタダじゃおかないわ!!」
「はぁ、ギース達に何言っても無駄だと思いますよフィーネさん。あのナンパ坊ちゃんパーティは『俺は貴族の息子だ!』とか、『父上が黙ってないぞ!』なんて周りの冒険者やギルドの職員に威張り散らしたりしてますからね、よっぽど頭が残念なんでしょう。ですから、冒険者を飽きるまでほっときましょう」
フィーネと呼ばれた女性は依頼書をギルドカウンターに叩きつけると開口一番に愚痴を漏らした。そして担当の受付嬢もため息をつきながらギース達のパーティを辛辣に批判した。
「まあそうよね。じゃあ気晴らしに依頼の受注お願いね、いつもより張り切っちゃうわ!」
「ええ、懸命な判断だと思います。キールの森でのグランド・トレント討伐でよろしいでしょうか?フィーネさんなら簡単なお仕事だと思うんですけど?」
「いーの、王都で散々危険な依頼や珍しい依頼こなしてきたんだから。たまにはこういう簡単な依頼で息抜きしないとね、ほらここ地元だし。あと欲しい素材もあるしね。」
フィーネはそう言うと、依頼書に自分の名前を書いて受付嬢に渡した。
「はい、受注完了です。でも気をつけてくださいね、例えどんな依頼でも油断は禁物ですよ」
「うん、わかってるわ。じゃ、行ってくるわね!」
フィーネは手を振りながらギルドを後にした。
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