第3話
マリアらは昨日と同様に護衛の兵士らに守られながら歩き出した。森の中とはいえ、サントローヌスの街へ石を敷き詰めた道が一本作られており、そこを一団は歩いていた。
「薄気味悪くなってきたね…」
徐々に草木が茂る深い森が道の脇に広がり、日が出ていても薄暗いほどであった。
「ああ、できることなら一気に走り抜けたいよな…」
トゥルスがマリアの隣で周囲を見回しながら歩いて言った。森の中には何かが潜んでいても分からないほどであった。それでもその日は何事も無く森の中を歩き続けた。
「やっぱり森を抜けられなかったか。もう少しなんだけどな・・・」
夕方近くになり森に赤い夕日の光が差し込んできていた。兵士らは森の中で野営をすることを決断し設営の準備に取り掛かっていた。マリアとトゥルスも一緒に設営を今日も手伝っていた。
「あれ、何かしら…?」
ふと、先頭の集団が設営している野営のある方角を見たマリアが何か雄たけびのような声や騒々しい音が聴こえてくるのを感じた。護衛の兵士らもそれに気づくと次々に腰に差していた剣を抜いた。
「あれは…サー族!?」
トゥルスが先頭の集団の設営に襲い掛かっている人々がサー族であることに気づいた。50年前にヘイバルブスによって打ち負かされた後も一族を根絶やしにすることはしなかった。
また、共存していくという道を選んだ先人達は望むのなら王国の国民として迎えていた。そのサー族で国民になった者達が年に一度先達の戦士を讃える祭りを行うことがあり、その時に見た衣装と襲い掛かっている連中の服装は一緒だった。顔や腕には青や黄色の塗料でペインティングされた文様が描かれていた。
「四隊のうち二隊は援護に向かう。残りは待機して避難民の護衛だ。では行くぞ!」
マリアらの集団の護衛を率いているサトルヌスは兵を率いて前の集団を襲っているサー族を撃退するべく援護に向かった。サー族の戦士の数はおよそ50人前後。護衛の兵士らとほぼ同数だった。しかし避難民の護衛に兵を割いているので兵士の数では劣っていた。
サトルヌスら護衛部隊とサー族との戦いが始まった。遠くで雄たけびと怒号が飛び交っている。
「大丈夫だ。我々が君達を守る!」
不安がっている子供達を集めてなだめているマリアとテレサらの近くで護衛をしている兵士がマリアに話しかけた。マリアもそれを聞いて安心したのか不安で泣きそうな子供を必死にあやしていた。
「ゲッ! こいつらこっちにもいたのか!」
トゥルスが叫んだ。マリアらのいる集団の左右の森の中からサー族の戦士達が姿を見せたからだ。
「伏兵か! しかし数は少数! 本隊が帰ってくるまで持ちこたえるのだ! そうすれば挟撃できる」
護衛の兵士の一人が声を挙げ、二手に分かれて森の中から現れたサー族の戦士達に立ち向かう。
「みんな、こっちに来て!」
テレサはマリアら子供達を連れて既に完成していたテントの中へみんなを誘導した。テントの中に入ったマリアらの耳には兵士達の雄叫びと絶叫と悲鳴と憤怒の声が飛び込んできた。
(お願い…早く終わって…)
マリアは子供達の肩を抱いて必死に祈っていた。
マリアはテントの中で子供達と身を寄せ合って抱き合っていた。子供達も不安で泣いている子も多く、テレサもマリアと同じようにして子供たちを安心させるべく抱き寄せていた。
「トゥルスは大丈夫かしら…」
マリアはテントの外にいるはずのトゥルスのことが心配だった。テントの外からは男達の怒声と雄叫びと断末魔の悲鳴がひっきりなしに続いている。いつこの戦いが終わるのだろうか…マリアは恐怖で子供たちを抱き寄せる手に力が無意識にこもっていた。と、テントの入口にかかっていた布が激しく上へ引き剥がされて飛ばされた。
「!?」
マリアとテレサは入口に立っている男の姿を見て絶句した。サー族の戦士と思われるその男は筋骨隆々としたみごとな体躯をし、短い袖の上着とズボンを着ている。肌の露出している部分には黄色や青色のびっしりと流線型の模様の刺青が彫られ、右手には太い木に大きな石を挟んだ斧のようなものを持って立っていた。その男の後ろには似たような格好のサー族の戦士が2、3人テントの中を覗くように立っていた。男達は何か話しているとゆっくりとマリア達に向かって歩き出した。その目は血走り、口からはよだれがだらりと垂れていた。
「やっ…やめなさい!」
男らとマリア達の間にテレサが割って入った。ちょうどマリアと子供たちを庇うように両手を広げて男らが迫ってくるのを防ぐような形だった。男は黙ってテレサの胸倉をグッと掴むと下に向かって服を引っ張り切り裂いた。
「キャァァァァア!」
テレサが悲鳴はあげ、両手で引き裂かれた服の両端を抑えて一瞬、こぼれた乳房を隠すようにへたりこんだ。それを見た男らの目の色が変わった。後ろにいる男らに対して横を向いて顎で合図すると男はテレサに覆いかぶさるようにのしかかった。
「やっ…やめなさい!!!!」
男に押し倒されたテレサが必死に男をふりほどこうとするが屈強な男に身動きがとれず男の片手で両腕の手首を頭の上で押さえられると乱暴に男に全身をまさぐられた。後ろにいた男らはその脇を通りマリア達に向かって襲い掛かってきた。
「イヤアァァァァ!」
マリアもあっという間に男の一人に捕まえられ服を引きちぎられた。一瞬にして服はボロ布に変わりマリアの発育途中の肢体が露になった。
「嫌ぁ、離して! 誰か助けてぇ!!」
マリアは必死に声を上げて抵抗するが男の力の前に成す術が無かった。子供たちの中で成長がいい子が目をつけられ、残りの男らに捕まえられていた。テントには次々と男らが押し寄せてきていた。男らの中には戦いで返り血を浴びている者も多くテントには生臭い臭いがたちこめていた。
「このやろぉぉぉぉぉ!!」
そんな男らの背後からマリアが聞きなれた声が飛び込んできた。トゥルスだ。まっすぐに走ってきた彼は剣を振り回しながら背後から男らに斬りかかった。慌てた男らはトゥルスに道を譲るようにして入口からの侵入を許してしまった。
「トゥルス! 助けて!!」
既に男に押し倒され胸や秘部を舌で嘗め回されているマリアが大泣きしながら助けを求めた。
「この野郎っ! マリアを離し…」
トゥルスがマリアを襲っている男に背後から斬りかかろうとしたが、トゥルスの後ろから男の一人が石斧でトゥルスのわき腹を横一文字に鋭く斬り裂いた。トゥルスは悲鳴を上げる間もなく体が二つに分断された。
「トゥルス!!!」
鮮血が飛ぶ。テントの布がべっとりとトゥルスの血で染まった。マリアが絶叫した。ごろんと転がったトゥルスの上半身を男の一人が掴むと入口から外へ放り出した。下半身も違う男が同じように外へ放り出した。
「嫌ぁぁあ! やめてください! それだけはやめてください!!」
気づけばテレサは屈強な男に3人がかりで責められていた。二人の男は手と体と両足を押さえ、もう一人の男がテレサの上に体をのしかかっていた。
テレサは涙ながらに拒否していた。体を必死に動かそうともがくが二人がかりで押さえられているせいで逃れることはできなかった。
しばらくテレサの体を弄んだ後、男は腰を沈めた。
「いやぁぁ!!」
テレサが泣き叫ぶ。太ももを鮮血が伝わる。処女だったのだ。それを知ったか知らずか男は再び下衆な笑みを浮かべると自分の欲望を満たすべく前後に腰を振りはじめた。
「そっ…そんな…」
マリアがテレサの処女喪失の瞬間を見て愕然とした。しかし、彼女にもその時が迫ってきていた。
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