第2話
「げほっ……う、ごほ……」
「一心……!」
二階の寝室から、一階に降りてきて、居間に入った瞬間、一心が崩れ落ちた。何とか膝を地面につけ、倒れないようにするが、むせるように咳と一緒に口から出るのは、血。それを着ていた服の袖で拭く。
「だから……だから俺にまかせろって言っただろ!」
「何いってんだよ真人兄さん。弟達が大変な目に合ってるっていうのに、自分だけ家にいるなんて出来る訳ないだろ……」
それに兄さんも辛いだろ、今。と一心は心配そうに言うが、真人は少しのめまいと頭痛だけだ。一心は、今までよく普通にしてたなと思うくらい顔色悪いし、何より吐血している時点で人の心配している暇はない。
この超能力には副作用がある。
使いすぎると、このように体に何かしらの副作用が出るのだ。それは様々で、めまいや頭痛、手足の痺れや視力低下、酷い時は吐き気や今の一心のような吐血。
今日の朝に体調が悪かったのは、この副作用のせいなのだ。最近この超能力を使ったせいで、体にガタがきてしまっていたのだ。
だからもう超能力を使うのは控えておこうと相談していたときに、弟達が帰ってくるのを遅いと感じ、探しに行く、と言ったのだ。
真人は、俺だけが行くからお前は休んでおけ、と言ったのだが、一心がそれを了承する訳がない。
何かがあったときじゃ遅いんだ、と言って、一心と真人は探しに行き、あの場面になった、というわけだ。
この副作用が来る度に思う。これはただの副作用ではなく、体をどんどんと壊していくものではないか、と。
少しずつだが、命を削られていく感覚が分かるのだ。
だから、大事な時でしか使わない、と二人で決めた。この様な、本当に一大事の時にしか使わないでおこう、と。
あの四人には、この副作用の事を全く言っていないから、欲しい欲しいと羨ましがられるが、こんなもの、持ってほしくはない。いつ本当にガタが来るかわからないようなこんな力を、あの弟達には持ってほしくないのだ。
「本当に無理すんなよ……分からないんだからな、いつまでもつか」
「分かってるよ……。でも、しょうがないだろう」
そう、しょうがない、というよりも、使わなくてはならないのだ。
この一大事の時に使おう、となっているのは大体弟達が関係している。あの四人が、関係していないと、この力もそんな使うことないのだ。
大事な大事な弟達。それを失わないために、この力があるのだ。
しょうがない、という言葉に、真人は、そうだな、と笑う。
この一心とは全く気持ちが一緒なのだ。もし自分が一心の立場だったら、一心と同じ事をしていると思うし、逆に一心が真人の立場だったら真人の事を叱り、止めるであろう。
それはお互い分かっていることなのだ。
こんな自分の体が壊れていくのを感じていても、命が削られていく感覚に陥っても、彼等は口を揃えてこう言うであろう。
「弟達を守れるなら命なんて惜しくもない」
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