第1話



◇◇◇◇◇


「ほんとに大丈夫? 一心兄さん」


あれから無事に家に帰り、弟達の傷の手当てをし、すっかり夜になった為、寝よう、となり布団に潜り込んだ時に、謙心は自分の枕元にいた一心に声をかけた。

一心は体調が悪かったはずだ。なのにあんなに能力を使って、助けてくれた。帰ってくる時に泣きながら尋ねたら大丈夫だ、と笑って言っていたが心配だ。


「ああ、大丈夫さ。もうすっかりだ」

「ごめんな、もっと早くに迎えに行ければよかったな」


真人が謝りの言葉を入れると、大輝がため息をつくように笑った。


「真人兄さん達が来てなかったら、俺たち今ごろもっと酷い事になってたよ」

「謙心、皆を連れて逃げようとしてくれたんだってな」


ありがとな、と子供のようにまた頭を撫でる一心の手を、いつもはうるさいと言って叩くが、今日は大人しく撫でさせてやる。何だかんだ、この時々見せる兄の顔を嫌いではないのだ。


「でもすごいよね! 兄さん達の力! 僕も欲しいー!」

「……こんなもの持つモンじゃないさ」

「でも俺がその力持ってたら色んな物をびゅーんってやる!」


幸は、力を使うように手を横に振ったり、翳したりしている。


力、とは、超能力の事だ。

物心ついたときから、真人と一心には超能力を使うことが出来た。物や人を動かし、止めたりする念力、他の人達にこの力を見せてしまった時に記憶から消す記憶操作。それらの超能力を使うことが出来るのだ。

ただ使えるのは真人と一心だけで、他の四人は使えない。これが何故なのかは全く分からないが、今のところ四人が使えるような気配はない。

この超能力のおかげで、今まで四人はかなり助けられたのだ。そんな力を四人、特に幸は欲しいと羨ましく思っている。


「さて、そろそろ寝ろよ」

「あれ、寝ないの?」


よっこらせ、と立ち上がる真人に、大輝は首を傾げた。あとは寝るだけなのに。


「俺たちまだ風呂入ってないからな。入ってくる。お前達は怪我してるから今日はやめとけよ」


一心は、皆の為に綺麗な体にしなくてはな、といつものクールぶってる発言をし、部屋から出てこうと歩く。

真人もそれに着いていき、じゃあ大人しく寝とくんだぞー、と言って、部屋から出ていく。

出ていく際に、一心がおやすみ、と言ったから、四人はそれに返事をし、二人を見送った。

二人がいなくなった後の部屋は、いつもの様にこそこそ話で自慢話大会だ。二人がいる時には絶対に話さないような内容。


「今日もすごかったな」

「……認めたくないけど、すごいね」

「あんなにたっくさんの人、動けなくなってた!」

「あと周りにあった物も全部浮かしてたね!」


四人にとって、あの二人は兄なのだ。

いつも自分達を守ってくれる兄。しかもそれは他の者が持たないような力で、だ。あの超能力は、いつ見ても凄いもので、この様な一大事の時しか使わない。だから使った後はいつも四人でこそこそと、話し合う。

今日もすごかったね、と。

いつもはふざけてたり、クズのような一面もあったり、うざいときもあるけれど、あの二人は、とても大事で自慢の兄なのだ。

こそこそと話していたら、今日の疲れが一気に襲ってきた。二人には悪いけれど、もう寝てしまおう。

おやすみ、と言って四人は寝る体勢にはいる。


また明日、大好きな兄にお礼を言えるように、早く寝よう。














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