後編

 あれから何日経ったのか…。


 相変わらず俺はこの見知らぬ浜辺で海を眺めている。


 自分が元いた時代を思うと寂しくなってくる。


 聞いたことがある、これは確かホームシックというやつだ。

 家を出ると無性に元いた家が恋しくて泣き出すほど寂しくなるんだ。


 一般的には両親を思い出したりだが俺の場合は少し違っていて、この時代ではまだ存在すらしていないジャパリ図書館が恋しい。

 

 ワガママばかり言っていた長の二人の顔が懐かしい、平原で俺を弟として受け入れてくれたライオン姉さんも、稽古は厳しいが俺を強くしてくれたヘラジカ師匠も恋しい。


 みんなに会いたい…。


 ツチノコちゃんに会いたい…。


 かばんちゃんの顔が見たい…。


 でも、会えない…。

 




「シロは向こうから来たの?」


 ふと… 話しかけてくれたのはイエネコちゃんだった、俺がこの時代で会った最初のフレンズ… こうしてなにかと気にかけてくれる。


「違うよ… 向こうには俺の住む場所はない、どんなに海を越えても俺は向こうでは住めないんだ」


「どうして?それならなぜ海の向こうをずっと見ているの?」


 率直に疑問という顔をして、彼女は顔を除き込むように俺を見た。


「わかんない…」


 わかんないよ… 俺はこれからどこに向かえばいいんだ?


「じゃあシロはどこから来たの?」


「遠い… とても遠いところ」


「私でも行けるかな?」


「いや、無理だよ… 本当にすごくすごく遠いんだ」


 距離の問題ではない、時間にしても俺がパークに来るのは数十年後か?君が生きているはずがないだろう、そもそも君は存在していなかった。


「そっかぁ…」


 悲しい顔で俺の隣にちょこんと座る彼女はぐっと膝を抱えて俯いていた。


「ごめん、君まで落ち込ませてしまったね」


「シロだんだん元気無くしてくから心配だったの… でも、私じゃ元気付けてあげられないの」


「…」

 

 はぁ…。


 周りの人まで困らせて、俺は何をやっているのだろうか?

 落ち込む彼女の顔を見たからという訳でもないが、俺は自分の素性を少しだけ彼女に話すことにした。


「イエネコちゃんはさ?俺がずっと未来から来たって言ったら信じる?」


「みらい…?」


 ふっと顔を上げ目を丸くしている、あまりに突飛もない話なので驚いているのだろう。


「それってなに?どこにあるの?」


「あぁ… ずっと明日ってこと」


「ずっと明日?それってどれくらい?」


「ずっとずーっと先さ… 何回も夜が来て、いずれこの島もいろんな建物と人で溢れて、またいなくなって… 寂れてしまう頃」


 彼女には難しい話なのかもしれない、うーんと目を細めながら頭を悩ませている

 

 だったらどうしたんだよ?って感じの質問なんだよなこれは、これを話して彼女が理解できたとしてもなにか出来るわけではないんだ。


 俺はイジワルだね、こんな質問で困らせるなんて。



 でも彼女は俺にこう答えた。



「じゃあその明日が来るまで一緒に待ってあげるの!一緒なら寂しくないでしょ?」


「えぇっと…///」


 参ったな、いきなりそんなこというからつい目を逸らしてしまった。


 でもそんなことをして、俺は帰ったと言えるのだろうか… 最後に年老いて死ぬ寸前って言うのは帰らなかったことを意味するのではないだろうか?

 

「無理だよきっと、俺も歳をとるから… そしていずれ死に至る」


「そうかもだけど… その間は一人じゃないの!私もいるしサーバルもカラカルもコクト達だっているの、帰れないとシロは寂しいかもしれないけど… それなら寂しいの忘れるくらいみんなでシロと笑うといいと思うの!」


 なんだよ、クソ… あぁもう!また泣けてきた。


 つまりここを家にしてしまえって、みんなが受け入れてあげるから大丈夫って… 彼女は俺にそう言ってくれているんだ。


「ありがとうイエネコちゃん…」


「シロは泣き虫、また泣いてるの?」


「よく言われるよ、強くならないとね?男の子だし」


「弱くたってシロは私を助けてくれたヒーローなの、でも辛いなら今度は私が助けてあげる!」


 この子と話してるとだんだん、ここに住むのも悪くないか?ってそういう風にも思えてくる。


 帰れないなら、彼女とこうしてるのも悪くないかって…。



 未来も過去も同じなのかもしれない。


 “ケモノはいてもノケモノはいない”。


 少し元気になれた。




…  




 それから少し経ったまた別の日のことだ、コクトが俺に頼みごとをしてきたのだ。


「こんなことを君に頼むのは違うと思うんだが… 三人の様子を見に行ってくれないか?送り迎えは用意する」


 例の古代種フレンズの実験をするカイロさん達三人のことだ、最近やけにソワソワしていたのは三人の様子… 実験が気になっていたかららしい。


「所長がこの様ではただでさえ忙しいのに仕事が手に付かず問題だからな、聞いてやってくれんか?」


 とこちらを見ぬまま何やら書いているミタニさんも俺に頼んでくる。


 ここで俺は散々世話になっている、嫌だなんて言ったらバチが当たるだろう、それに所長直々の頼みとあらば…。


「もちろんいいよ、コクトにはお世話になってるから俺に出来ることなら何でも言ってよ!」


 二つ返事でOKだ。


「あぁ、すまないシロ… どーも胸騒ぎがして仕方なくてね、私達も片付いたら行くから、先に向かってくれるか?ありがとう」


 すぐに車両が用意され、部下の方が運転して俺は古代種フレンズ化実験が行われる研究所まで連れていってもらった


 やがで到着し、中に入るなり声がした。


「やってやろうじゃ無い! どうせ最後の一勝負、泣いても笑っても最初で最後。だったら新しい方法でもどんな方法でも試して、最後に所長と馬鹿笑いしようじゃない!!」


 レイコさんか… どうやらちょうど何か進展があったところらしい、研究員たちはその言葉に奮い起ち、まさに燃えるようにやる気に満ちていた。


 心配はなさそうだよコクト?


「oh!シロboy!こんなとこに御用デスカ?」


 とセシルさんが俺に気付いた、隠す必要もないし逆に説明しないと俺がアウェーなので正直にコクトからのお達しであることを三人に伝えた。


「コクトが様子を見てこいって、なんだか切羽詰まってたみたいだけど… その様子だと進展があったんですか?」


「おう!一世一代の大勝負になるが、これが成功したら世界が注目だ!」


「わざわざありがとうねシロ!あなたもここで私達が成果を出すのを見てなさい?所長の度肝抜いてやるわ!」


 一致団結した研究員たちは室長、レイコさん達の方に向き直り、言い放った。


「室長方、ご指示を!」


 信頼… ここには大きな信頼があるんだ。


 “信用”ではなく“信頼”。


 一つの大きな目標に皆で向かうとき、助け合い協力してそれを成し遂げるために力を尽くす。


 その時に生まれる信頼は強く、強固なものとなる。


 ニヤリと不適な笑みを見せたカイロさんが言う。


「……レイコ、指示をくれ」

 

 続けてセシルさんも彼女を見た。

 

「レイコサン!」


 そして彼女は指示を出す、大きな大きな目標を成し遂げるための指示を。


「……やってやるわよ。各員位置について! 人間による最も古い動物へのアプローチを始めるわよ!!」









 今思えば、この実験には手を出してはならなかったのかもしれない。


 人が手を出すには早すぎる… 手に余る実験だったのかもしれない。


 この時にあのような惨劇になるとは、誰も夢にも思わない。


 俺はもちろん、創設者となった三人の研究員もその部下も…。


 誰にも予想できなかったことだった。




 だからこのような結果が訪れた。




 ガァォォォォォォンッッッ!!!


 大きな金属音が響き、あちこちから煙が上がり視界が悪くなっていた


「嘘… だ… そんな…」


 俺は腰を抜かしその場にへたりこんでしまった…。


 その時、ベチャリと生暖かいものが手についた。


 これほどの至近距離なら分かる、この臭いは…。


「あぁ… あぁ…!うぁぁぁぁ!?」


 血だ、しかもその血の主を見たとき、俺は更に戦慄を覚えた。


「レイコさん…!?嘘だ!?うぁぁぁぁ!?うぅっ!?おぇ…!」


 そこ“ある”ものを見て、俺は思わず嘔吐した


 死体… 人間の死体を初めて見た。

 

 そしてその死体、力なく倒れる彼女は先程まで皆に元気よく指示を出すレイコさんだったんだ、しかもそれだけではない。


「セシルさん!そんな!?嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ!?」


 すぐ側には、セシルさんもその大きな体を床に付けて動かなくなっていた。


「ゲホッ… シロちゃんよぉ?ぼさっとしてんな?早く逃げろ!」


「カイロさん!」


 彼だけはまだ息がある、だが満身創痍… このままでは恐らく助からない。


 でも、現状を信じられない俺は彼等を一ヶ所に集めそこで休ませていた…。


 コクトだコクトを呼べばきっと。


「ここにいてください!コクトが!コクトが来ればきっと助かる!医者なんでしょ!」


「バカ野郎… なにする気だ…」


「決まってる…!クソ!アイツ!」


 その時、建物全体が揺れるような咆哮が鳴り響く。



「……ウルルル。ウルルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」



 く、来る…!?


 みんなを… みんなを傷付けるやつ!


 素性も明かさず、なんのためにここにいるか存在価値すらない俺を笑って受け入れてくれた人達を…!


 傷付け命を奪うやつッッッ!

 

「…さねぇ」


 恐怖… 悲しみ… それらは心にひしひしと感じていたが、俺の中で一番大きな感情が爆発していた。


「許さねぇッ!ガァァァァァァァァアッッッ!!!」


「おいおい、なんだぁ…?そりゃあ?」


 皆には頑なに黙っていた… 俺がフレンズと人間のハーフだってこと。


 俺を信じてくれた皆を、俺自身が信じきれていなかったってことだと思う。


 迫害を受け、人を恨むようになっていた俺は人間ってだけで毛嫌いしてた、差別してたのは俺の方だったんだ。


 でももう逃げない、この人たちはパークに必要な大事な人達だ… こんな俺のことを信じて受け入れてくれた、人間の良さを思い出させてくれた大恩人達だ。


 だから戦う。


 野生… 解放だ…!


「ガァァァァァァァァアッッッ!!!」


 咆哮と共に、体に力がみなぎる。


 白い髪はさながらたてがみのように増え、牙と爪、そして猫耳、尻尾も出現した、体にはサンドスターを節々に纏い輝いている。


 目は爛々と野生の輝きを放ち相手を睨み付ける…。


 俺はシロ…。


 ホワイトライオンのシロだ!


「好き勝手にはさせない!“ティラノサウルス”化石に戻してやるからなッ!グルァァアッ!!!」







 銀蓮黒斗は走った… その目的地はまっすぐ古代種フレンズ化実験の行われている研究所だ。

 


 間に合ってくれ…!頼む!




 まだ、事務所で変わらず書類を片付けていた彼の元に息を切らしながら入ってきた研究員がいた、彼は休む間もなくコクト達に向かい叫んだのだ。


「所長ッッ!! 研究所が、研究所がっっっ!!!!」



 そしてコクトが研究所前に着いた時にはすでに悪夢のような光景が広がっていた。


「…これは、一体?」


 避難してきたと思われる研究員たち、キズを負い、やっとの思いでそこに生きている者もいた。


 その光景にコクトは異常なほどの寒気を感じていた


「……ッ、彼奴らは、室長達はどうした!!」


「ま、まだ中に……」


 そしてまっすぐと彼が向かったのは施設内のシェルター構造の実験室、しかし… そこに着いた時には扉は破壊されていた。



 内側から破壊されていたのだ。



 カイロ!レイコ!セシル!どこだ…!


 どこだ!シロ!







「ガァァァァァァァァア!!!!」

「ウルルァアアアアアア!!!!」


 ガキィィィン!!!


 クソ!強いッ!おまけに堅いっ!


 野生解放した俺は力一杯槍を振りかぶるが、さすがと言うべきかコイツはそれに反応しその頑丈な鱗を持った腕や爪で弾き返してくる、まともに入っても効いてるのかどうか…。


「なんなんだよお前!フレンズじゃねぇのかよッ!」


「ウルルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 話す術を持たず、とことん殺り合うしかないとでも言うのだろうか。


 俺は師匠の槍を巧みに使い迎え撃つが。


ガキィィィン!!!


「クソ…!全部防がれるッ!」


 このままではまずい、俺のフレンズ化は野生解放している時のみ、長期戦になればフレンズの体はヒトに戻る… 一瞬でも反応が遅れたその時はミンチにされるだろう。


 でも、負けるわけには…!


 俺にも限界が近い… その時だった。


「……あっ、カ、カイロ! セシル! レイコォ!!」


 コクトの声!とりあえず時間稼ぎは出来た!三人を連れ出してそれからコイツは…。


「早く診療所に連れていくぞ!!」

「コクトさん… アイツは、何処に行ったんですか?」


 コクトを追ってきた研究員の一人の声だ、そして俺はその時二人の会話に気をとられ油断していた。


 瞬間、正面から鈍い衝撃が全身に走った


「ッッッ!!!」

「しまった…!?」


 ガァツゥゥゥウンッ!


「がっ… はっ…!?」


 俺は強烈な蹴りをくらい鉄の壁に勢いよく叩きつけられた。


 つ、強すぎる!師匠の当たりより遥かに強い!


「……ッッ!! シロか!?なんだその姿は!?」


「コ… コク… 逃げ…」


 息が…!声がでない…!


 不自然な煙は、いくら時間がたっても引く事が無く、まるで何かを、いやアイツを意図的に隠しているように漂っている。


 ガシュッ!! 


「ッ!?」


「コク… ト!」 


 アイツだ、今アイツがコクトを!?

 

 だが、とっさにコクトはそれ受け流していた… そのポテンシャルの高さに驚きを隠しきれないが。


 よかった… 無事で… いや。


 血だ、コクトの腕からは赤々とした鮮血が吹き出している。


 先程の攻撃を受けた時に腕が抉られていたのだ。


「チッ! そいつらを連れて早く病院に行け!! 付いたら直ぐに止血をするんだ! いいな!」


「なっ! コクトさんは!!」


「後から行く! 早く行け!!」


 彼のいつになく切迫したその声は、危機感を知らせるには十分だった。

 なぜなら、コクトはすでに背中に二撃目を喰らっている…。


 クソ!俺が弱いばっかりに、皆を死なせてしまった… 俺には戦える力があったのに


「早く行けぇぇッッ!!」


 研究員達は直ぐさま重傷である三人を連れてその部屋を脱した… どうやら、三人を助けるという一つの目的は達成したようだ、だが… 状況が最悪ということに変わりはない


「シロ…!大丈夫か!」


「ゲホッ… ごめん… ごめんコクト… みんなを守れなくって…」


「いい!立てるか!お前も逃げるんだ!っ!?」 



 ドッドッドッドッドッドッ!!!



 それは真正面から来た。

 

 少女の姿をした“それ”。


 爬虫類に近い肌と、一足ごとに地面を踏み抜くその強固な足。


 そしてその少女は、フレンズと言うには余りにも凶暴で、好戦的な目をした猛獣。



 バゴォッッッ!!!!


「……ティラノ」


 ティラノサウルス


 属名Tyrannosaurusと称されたその恐竜は、言葉通り「暴君の爬虫類」と呼ばれていた。その恐竜の武器は強固な脚と顎。それを受け止めたコクトだったが、無論唯では済んでいない。


「……ッッッカハッ!!」


 血だ… コクトは血を吐いている。


 このままじゃコクトまで…!


「……ウルルル。ウルルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 その咆哮が、耳を破るように研究所全体に響き渡る。


 クソ… クソ…!

 やらせるか!動け!


 動け!動け!動け!動け!動け!動け!


 動けよ俺の体ぁッッッ!!!


「ガァァァァァァァァア!!!」


「シロ!止せ!?」


 俺はティラノに飛び付き首を締め上げる、爪が体に食い込んでる、死ぬほど痛いが離すつもりはない!


「コクトは!コクトだけは殺らせない!!!パークに必要な男なんだぁぁぁ!!!」


 サンドスター全てを絞りだし力一杯首を絞めてティラノを絞め落とそうと考えた。


 しかしそう上手くはいかない、時に現実は非常であり… どこまでも残酷だ。


 グラッ… と意識が遠退き、徐々に力が抜けていく。


「時間切れ…!?まずい!?ぐぁっ!?」


 腕を弛めてしまったその瞬間、俺は頭を掴まれるとまっすぐと後方に投げ飛ばされた


 ガァン!!!


 何かの機械に当たると、そのまま床に崩れ落ちた…。





 よわっちぃ… 俺はこんなにも弱かったのか。


 なにもかも半端だ、人間としてもフレンズとしても半端な俺は人間にもなれず結局フレンズにもなれない…。


 なんのために修行したんだよ?この力でみんなを守るためではなかったのか?傷つけないためじゃなかったのか?


 情けない… 今もまさにコクトが人の身でありながら化け物と戦っているのに…!


 コクトはすごい… 彼は人間だ、フレンズのような頑丈な体はない。

 爪も無ければ牙もない、高く跳べるわけでも素早い動きに特化している訳でもない。

 なのに彼は戦う、このままではパーク全体に被害が及び皆に危険が迫るからだ。



「ティラノサウルス。君から、フレンズの称号を剥奪する」



 そして、コクトが決断した…。

 罪を背負う覚悟を決めたんだ。


  

 俺も… せめて手伝いがしたい…!死なせない!絶対に死なせない!



「…?これは?」



 ふと目がいったのは機械だ、目の前にあるのは俺がぶつかった機械、隙間から光が見える… これはサンドスター?


 そうだ、これは化石にサンドスターを当てていた機械だ。


 サンドスター… そうだ!


 火山に登ったとき気付いたはずだ、俺の体がサンドスターを吸収してるって… だからパークにきてから野生解放が強くなったって。


 やるか?いや、やるしかねぇだろ!


 俺はやっとの思いで立ち上がると機械の中に腕を突っ込み中にあるサンドスターを…。

 






 戦闘は激化した… なにが凄いって覚悟を決めたコクトさ、腕が折れていろいろ抉られてんのにとても人間とは思えないほどの身のこなしでだんだんティラノを押していった。


 俺も大概かもしれない、サンドスターを直に体に取り込んだんだ… リミッターが切れるってあんな感じなんだと思う、当たっても痛くないし、恐ろしいのがだんだん楽しくなってくるところだ… 俺はまだまだ修行が足りないんだな。


 そんなイカれた二人の攻撃を繰り返せばそれはティラノザウルスといえど劣性だ… とうとうトドメを刺す瞬間がやってきたんだ。



「グゥァァァAAAAAA !!!くたばれトカゲ野郎ォッッッ!!!!!」


「待てシロ!落ち着け!俺を見ろッ!飲み込まれるな!」


 以前… 正気を失って暴れたことがあった、それとはまた別の感じ… この時は狂った感じがした。


 そんな俺を見てコクトは2~3発ビンタをしてきて、目を見るように言ってきた


「バカなことを考えるな!この役目は俺に任せろ?お前が罪を背負う必要はない、いいな?お前が手を汚す必要はない… 分かるか?」


 優しい目をしていた… それでいて泣き出しそうな、そんな悲しい目だった。


「ティラノ、次で終わりだ!すまないがシロ、槍を借りるぞ…?」


 フラフラと立ち上がったティラノはコクトと向かいあった、そして双方意を決したのかその瞬間に…。


「ウォァアアアアアアア!!!!」

「ウルルァアアアアッッッ!!!」





 直後…。





 研究所に響き渡る轟音が鳴り響いた。







 診療所…。


 三つのベッドには、三人が眠るようにそこにいた。


 三人の功労者。


 カイロさん、レイコさん、セシルさん…。


 カイロさんも、先程息を引き取った…。



「ごめんコクト… 俺にはなにも守れなかった… 戦う力があったのに、気付いたときには二人はもう… カイロさんだって長く持たないのはわかった、助けられなかった…」


 コクトは彼等三人の眠るベッドを眺める位置にて、彼等の死に姿を見つめながら俺に言った。


「いいやシロ、お前はよくやってくれた… だからこそ俺はカイロから最後の言葉を聞くことが出来た、死んでしまっていたとしてもよく三人を守ってくれた…  彼等に変わり、礼を言うよ?ありがとうシロ」


 どうして?どうしてそんなことが言えるんだ?


 俺は何もできなかった、できなかったのに今こうしてしれっと生きている。


 なんて情けない… あのまま死んだ方がましだったんだ。


 そんな俺の心中を察したのか、彼は背を向けたまま俺に言った。


「シロ… 自棄になるのはやめるんだ、俺はお前だけでも生きていてくれたことが嬉しい、共に肩を並べて戦ってくれてとても心強かった… お前という存在が俺の支えになったんだ」


「こういう時の力だって… そう父に習ってたんだ、守るために使えって…」


 コクトはあんなことを言っているが、俺はこう思う…。


 本当は一人でも勝てたんじゃないだろうか?と… コクトならできてしまうって今はそう思う。


 でも、彼は俺のおかげだと言う。


「君はフレンズだったのか…」 


 姿を見られた、ならば隠す必要はない… 俺はコクトに全てを打ち明けた。


「正確にはハーフ、母がホワイトライオンのフレンズなんだ」


「そうか… なぁシロ、ということは未来のパークはどうなんだ?平和なのか?」


「え…」


 驚いたのは、信じていなかったはずの話をコクトが信じてくれていたことだった、だから俺は。


「少なくとも俺はいいところだと思ってる」


 とそう答えた…。



 コクトは言った。


 

「君は、人間を恐れているな?見れば分かる… そんな目をしていた

 きっとその特殊な生まれから何度も何度も辛い思いをしてきたんだろう、すまない… 全ての人間を代表して君に謝ろう

 だが、最後には俺達を信頼してくれていた… いや勝手に思ってるだけだがそう感じたんだ、だからその事に俺は礼を言いたい

 そして俺はこう思うんだ、人間とフレンズが愛し合い子を成したということは、そういう環境がいずれ整うってことなんだと…

 だとしたらこうして三人の友を失い罪を背負うことになったとしても、俺のやっていることは報われるって… だから生きていてくれて、会いにきてくれてありがとうシロ… いや」


 ずっと三人の方を向き、俺に背を向けていたはずのコクトは俺と向かい合い尋ねた。


「遥か未来から来た友よ… 俺は黒斗、銀蓮黒斗だ、君の名は?」


 その問いに、今さらだんまりを決める意味は無い。


「ユウキ… 俺はユウキっていうんだ、父さんが付けてくれて… あれ…?」


 その時だった… 俺の体が透け始めた、半透明になっていたのだ。


「ユウキか、君らしいな?そして、どうやら時間が来たようだな」


「時間…?」


「そうだ、恐らく役目を終えたんだ… なんのために君がここに来たのか、どうやって来たのか… それはサンドスターのイタズラかもしれないしあるいは神とかいう連中の思惑なのかもしれない、もしかするとここで過ごした俺達の思い出というやつも一緒に消えて無くなるかもしれない… 癪だが、都合よく改竄されるんだ」


 淡々と… 今回の真相の推理をコクトが話していく、その間も俺はどんどん姿が薄くなっていく。


「だが聞いてくれユウキ?もしも俺が君に贈る言葉がほんの少し一言でも心に残るなら…


 この言葉を君に送ろう!」


 そうしてじっと俺の目を見たままスーっと息を吸うと、彼は言い放った。



「生きろ!生きろユウキ!この三人の分も!俺の分も!そしてもっと未来に繋いでいくんだ!命を、想いを繋げ!お前にはそれをする権利がある!だから生きろ!生き延びろ!それが俺のお前に対する願いだ!」

 


 その言葉を、俺は胸にしっかりと刻み込んだ。



「聞いたよコクト…!いつか、未来で会…」


 そして俺は…。



 姿を消した…。








「コクト、誰と話してた?」


「ミタニ… いや、わからない…」

 

「大丈夫か?」



 そして彼は。


「……ミタニ、現在ジャパリパークに残っている研究員は、この診察所に居る者で全てか?」


 前へと進む。


「全員をここのロビーに集めろ。今すぐにだ」

 

 亡き者の想いを胸に。


「ああ、構わないが……どうする気だ?」


「どうも…」


 まだ見ぬ未来あすに向かい。



「ただ、所長として当たり前のことをするだけだ」





猫の子番外編

「猫夢を見る」



 クロスオーバー

猫の子×けものフレンズ -First Code.-




後編 終わり

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