中編

 銀蓮黒斗ぎんれんこくとという男。


 俺が知る限りそんな名前は聞いたことがない…。


 俺の時代にはジャパリパークは教科書に載るくらい歴史に残っているものなのに、そこの初代最高責任者の名前が一般に出回るどの資料にも載っていないのだ。



 でも彼は確かに目の前にいる。



 十代という若さでその地位につく彼がそこにいる。



「気分はどうだ?まだ痛むか?」


「いえ、大丈夫です、体は頑丈な方なので」


「そんなに畏まるなって… 敬語はいい、君は私の部下でもないしそもそも私もここでは若造だからな、年功序列などここではあまり関係ないよ」


「わかったよ、ありがとうコクト」


 彼は俺より少し歳上で、でも俺よりずっとしっかりしててなんでもできるみたいだ。


 なんというか、こういう人が天才なんだろうって思った。





「シロ… とりあえずそう呼ぶが話したくなったらでいい、本当の名前やいろいろ君のことを教えてくれないか?」

 

 こんなことを言われているが、俺は一度彼にだけ正直に話したんだ。

 

「セルリアンの群れに追われてサンドスター火山の崖から落ちた、なぜかその時浜辺に落ちてカレンダーを見たらここはずーっと過去だとわかった… 俺は未来から来たみたい」


 生まれのことはどうしても言えなかったが、話した後コクトは俺の言葉に首を傾げた


「なぁ?無理に聞こうとはしない、だから話すときはどうか正直に話してはくれないか?頼む…」


 こんな感じで信じてはもらえなかった、確かに狂言か何かに聞こえてもおかしくない。


 ただ彼の厚意でとりあえずはこれ以上問い詰めることはしないでくれることになった。


 流れ着いて混乱してる… そんな認識なんだろう。

 

 なぜこんな人格者の彼があんなにも怒りの籠った拳を打ち放ったのか知らないが、白髪の男に余程ムカついているみたいだ…。


 勘違いされては堪ったものではないけど、本当に何をされたら開幕右フックという展開になるのだろうか?







 コクトは最高責任者だが、なにもたった一人でここを引っ張っている訳ではない。


 彼を含め、五人の優秀な人材によりここはジャパリパークとして成り立っていくのだ。


「皆、急にすまない… 一応報告というか、知っておいてもらいたくて今日は集まってもらった」


 コクトの他に四人の白衣を着た人達が俺の前にいる。


「彼は訳あってこの島に迷い混んでしまったそうだ、仮にシロと呼ぶ… シロ?ここにいる者は皆君の味方だ、君の素性などはとりあえずイエネコを救ってくれたというそんな優しいヤツだってだけで十分だから、そんなにビクビクしないでも大丈夫だぞ?」


 そんなにビクビクしてただろうか?いやしてるな、でもそれはなにも問い詰められることを恐れているからではない。


 人間に囲まれるのに反応しているだけだ… コクトは話してみて少し慣れたけど、他の四人はどうだ?


「ミタニには会ったな?彼はここでは最年長、私と同じで普段はここにいるから遠慮なく頼るといい」


「よろしく頼む」


 神谷壮一郎みたにそういちろう

 化学と薬学の専門… ここでは精密研究室長?ってのを任されてる。

 この界隈では有名な人らしいが、俺はこの辺疎いから自分が生まれる前の有名化学者と言われてもピンと来ない… なんでもバツイチらしい。


「それからレイコ、五人の中では唯一の女性だが、フレンズ調査隊長として外の調査を担当している」


 蓮野玲子はすのれいこ

 物理と生物学が専門だそうだ、生体調査?なんかはもっぱら彼女の仕事ってことだろう… 5人の中では紅一点、低身長でロリロリしてるが三十路の壁を越えているらしい。


「ごめんなさい、シロ?だったわね?」


「あ、はい」


「失礼なこと考えてない?」


「まさかそんな…」←冷や汗


「ふーん… まぁいいわ、よろしくね?」


 っべーよ… エスパーだったのか、心を無にしないと。


「おー怖いねぇ?安心しな白髪のにーちゃん?みんな思ってることだからよ?」


「なんのことよ?言ってみなさい?」


 どう考えても白衣意外に化学者要素皆無の男性がフレンドリーに言い放つ、率直に言ってファンキーな男。


「彼はカイロだ、セルリアンの研究は彼に一任している… アロハなんぞ着てチャラチャラしてるが仕事はキチンとこなす男だ」

 

 四季葉魁呂しきばかいろ

 考古学と病理学の専門博士… こんな感じなのに研究室を統括してるのは彼で、セルリアン隔離研究室長とかいうのも兼任している、趣味はサーフィン。


「にーちゃん“それ”でセルリアンの石を砕いたって?弱点だってよくわかったな?それにあれものすげー固いはずなんだけど?隠れマッチョかな?着痩せしてる?それともその槍オリハルコンでも使ってんのかい?へへ、なーんてな?」


 師匠の槍を指差し俺を問い詰める… ここで目立つことするのはまずかったか?ただでさえ存在自体が目立ってんのに、ヤバイかな?


「や、えーっと… たまたま相手が大したことなかったんですよ、後ろから上手いこと体重乗せて振り下ろしました」


「なるほどねー?あとでそれ見てもいいかい?おもしれー形してんなぁ…」


 参ったな、調べられると少し都合が… これはフレンズの武器、なぜ持ってる?って話に…。


「HEY!あまりグイグイいくもんじゃないデスヨ!彼はvery困ってマース」


 でけー外人… いや、助け船もらってこんなこと言うのは失礼だな、でもありがとうでけー外人の人。


「シロ、最後に彼はセシル… 私の次に若手だが、ここにいる誰にも引けをとらないキャリアの持ち主だ」


 Cecil・Clarkセシル・クラーク

 動物と地質の研究が彼の専門でありここでは管制塔を任されている、レイコさんとはよく一緒にフレンズと戯れている… アニメオタクらしい。


「でも、ワタシもそのlance気になりマース!very!cool!まるでアニメのHERO!Japaneseコスプレ!」


「だよなー!歴戦の戦士感が中二心を刺激するよなー?」


「槍… って言うより、薙刀って感じじゃないかしら?というか、この形はまるで…」


 なんか思ってるのと違ってた。

 てっきり解析されてこれはヘラジカの角だろと問い詰められるのかと。


 この人達、ノリで生きてるってのが割りと合っている表現かもしれない。


 紹介されたミタニさん含む四人には敵意が感じられないし、無条件に信じてくれたコクトの為にも俺はとりあえず信じてみようと思う… というか、現状彼等がどんな人物だとしても頼るしかないのだ。


 ちなみに紹介された三人、カイロ、レイコ、セシルは現在古代種のフレンズ化実験の途中らしい… 聞いたことがある、化石からもフレンズ化が可能だと。


 こういう実験が元でパークにも絶滅種のフレンズがいたりするんだろう、そんな三人が俺の紹介の為にわざわざ来てもらったなんてね。


「俺の名前は… とりあえずシロでお願いします、いろいろ整理がついたら話すのでそれまではどうか…」


「コクトがそれで良いと言うんだ、ならば我らから何も言うことはない… 邪魔しに来たという訳でもあるまい?」


 ミタニさんがフーッとタバコなど吹かしながら簡単に答えてみせた、俺としては邪魔もなにもさっさと帰りたい、長居はまずいのだ。


「そりゃもちろんです!って言うか… 邪魔なんかして下手したら俺の存在がヤバイことに…」


 一同「?」とこんな顔をしている。


 この人達は創設者… つまり俺が言いたいのは、コクト達この白衣の5人がいなければパークはパークとして成り立たず、それは後に母と父は出会わないことを意味する、それどころか母が誕生しない可能性すらある。


 母がどのタイミングでフレンズ化したのか知らないけど、聞くとこの島の動物のいくつかの個体は閉園した動物園から行き場を無くしてここに引き取られたというパターンもあるらしい、もしここで自然にホワイトライオンが生まれたのならそれでいいが… ひょっとすると引き取られた個体が母の元になるかもしれない。


 俺は本当にとんでもないところに来てしまったぞ…。


 どういう原理なんだよ…。







「三人とも進歩はどうなんだ?」


「少し滞ってるわね…」

「いいところまではいくんデスガ…」

「フレンズとして人の形になりかけたところで戻っちまうんだよなぁ?」


 古代種実験は一筋縄ではいかないらしい、優秀な三人でも頭を悩ませている。


「私が言うのも難だが、気分転換にフレンズ達に会ってきたらどうだ?息抜きも必要だろう?」


「本当にあんたが言うの?って感じね… でもそうね、そうさせてもらう!」


 書類の山に追われて徹夜続きのコクトの提案により三人は事務所の外に出ることになった、休暇… とまではいかないが小休止だ、誰かと会ってリフレッシュできることもあるだろう。


 社会人ってのは大変だ。


「君も行ってくるといい」


 と徹夜何日目なのかわからないが隈でドンよりとした顔を向け、コクトは俺に言った。


「いいの?」


「いいもなにも… お客さんが来たんだ、むしろ行ってあげてくれ?」


「客?」


 ここに隔離させるくらいのことは覚悟したのだけど、客が来たから行ってこいってユルユルかよ、俺は不法侵入してるようなもんなんだけどそんなんでいいのだろうか?


 彼が指差す方に目を向けるとドアをすこーしだけ開けて可愛らしい猫耳が見える、あの耳はもしや?


「イエネコちゃん?」


「君のことが心配なんだろう、私はこれ徹夜続きだし… どうか私に殴られたことを君からうまく説明しておいてもらいたい、昨日から怯えた目を向けられて若干や胸が痛む… いや本当にごめん」


 コクトは書類の山にうんざりしながら俺に何度目かというほどの謝罪を入れてそう頼み込んできた、まぁ所長さんから直々のお願いだもの、別に恨んでないし引き受けよう。


「わかった…  イエネコちゃん?おはよう、昨日はここまでありがとうね?」


「シロ大丈夫なの?」


「大丈夫だよ、コクトともほら… うまくやってるから?」


「ならいいの、よかったの!」


 そんな俺達の姿を見た後ろの白衣達の方から… 「なんだよ青春かよ」とか「LOVE storyは突然デス」とか「なによ、いいわね若いって…」とかなんか微妙にやめてほしい会話が聞こえてくる、小学生かよ!でも一人は見た目と中身が入れ替わった小学s…。


「シロ、その目はなにかしら?」


「へ…!?えっと… ハハハ… レイコさんって美人ですよね?」


「お世辞なんかいいわよ!ほら彼女とどっか行きなさい!」


「彼女!?違いますって!?///」


 彼女と会ったの昨日なんですが…。

 






 この島、いやこの時代の島にもフレンズがいる。


 イエネコちゃん然り、俺の時代にもいたフレンズ達もいればあの子は見たことないな?って子もいる。 

 ただ俺の知っている子でも瓜二つであったり微妙に顔つきが違っていたり性格が違う子もいる。


 でも早速驚ろかされたのは彼女だった。


「わーい!たーのしー!」


 サーバルちゃんだ、ここにはサーバルちゃんがいる… 現在、レイコさんと浜辺を走り回って遊んでいる。


 だが…。


「あなたはだぁれ?どこから来たの?縄張りは?」


「あぁ… 俺は…」


 彼女は無論俺が知っているサーバルちゃんではないのだ、でも彼女はこの個体でも彼女のまま、ほとんど俺の知っている彼女と変わらないのである。


 そしてその横には俺も初めて会うフレンズがいた。


「私はカラカル、あなたね?コクトにぶっ飛ばされた子って?」


 カラカル… という猫科のフレンズだ、この時代にかばんちゃんはいない、だからサーバルちゃんの隣に当たり前にいるはずの子は彼女ではなく、この時代ではこのカラカルのフレンズ。

 

 不思議だ、同じだがまるで違う。


 このサーバルちゃんは俺の知ってるサーバルちゃんとはなにか関係はあるんだろうか?カラカルちゃんは俺の時代にも探せばどこかにいるのだろうか?


「カラカルもコクトと初めて会った時コクトをぶっ飛ばしてたよね!」


「あ、あれはたまたまそこにコクトがいたからでしょ!?やりたくてやったわけじゃないわよ!」


 コクトも苦労してんだなぁ…。


 ここに来てから人やフレンズに会うことで少し安心感を覚えてしまった自分がいる。


 だってみんな優しいんだもの、海の向こうで散々な目に会ってきた俺としては人間の暖かみを思い出すいい機会だった。


 ただ、ここにいる人が全てではない… 海を越えると「やっぱりね」と思ってしまうような人達ばっかりなんだ。


 みんな優しいだけに余計にそう思ってしまう、必ず物事には闇の側面が存在するものだ。


 そんな辛気臭い顔をしてるであろう俺の前に対極にも愉快な人物が。

 

「ふー!やっぱさいっこーだなー!いい波だぁー!」


 サーフボードを巧みに乗りこなす研究員カイロさんだ、浜辺に上がると拳を高く振り上げながらこちらに駆け寄ってきた。


「なーに辛気臭い顔してんだい?シロちゃんよ?」


「シロちゃんて… カイロさんサーフィン上手いですね?本当に研究員なんですか?」


「俺ぁこれでもバリバリのインテリよ!ギャップ萌ってやつだぜ!」


 こんなことを自分で言ってしまうとは、もうすぐ30になるとは思えないフットワークの軽さだ。


「なぁところでシロちゃんよぉーお?あれ見てみろよ?」


 海で戯れるレイコさんやフレンズ達、それからセシルさんも… 彼はそんな彼女達を指差し俺に尋ねた。


「みんながどーかしました?」


「いんや、若いんだからさー?どの子がタイプかと思ってよ?」


「えぇ…」


 タイプ?タイプっていわれてもなぁ… えぇ?この人達って本当に俺の素性とかどーでもいいんだな。


「いるだろー?まさかセシルか?」


「やめてくださいよ!急にいわれてもなんて答えたらいいか…」

 

「へへっ… いやうちの所長はあんなんだろ?若いのに興味なさそうだからつまんなくてなー?ああいうのがムッツリなんだよなまったく…」


 突如同僚にムッツリの烙印を押されたコクトには同情を隠しきれないが、確かにコクトは恋愛とかするんだろうか?見るたびに書類整理してるからなぁ、あんなんで歳並みに青春なんか送れるのだろうか?


「ほらいるんだろう?今をトキメク若いもんがそんなんでいいのかー?」


 そう言われてもなぁ…。


 勿論みんな可愛いさ?それもフレンズの特性と言える、元気なサーバルちゃん然りお姉さん気質なカラカルちゃんだってそうだ。


 イエネコちゃんとは1番話してるから気まぐれだけど優しい子だってのはよくわかってるつもりだ。


 それに変な話、レイコさんが美人なのも嘘ではない、見た目が見た目なだけに歳よりずっと若く見える、倍近く若く見える。


「ほれほれ教えろよ~?やっぱりイエネコか?あの子フレンズ化したときコクトちゃんのお姫さま抱っこだったんだぞ?複雑?」


 どういう状態たったんだそれ…。


 俺がそんなゲスな質問に翻弄されていたその時だった。


「なんだなんだー?私もまぜてくれよ~?」


 と皆の方へ向かうフレンズが一人現れたのだ。


「え…?あれって…」


「お?真打ち登場か、あの子はどうだ?」


 もはやチャラチャラ博士の会話なんて耳に入っていなかった、俺はその姿を見ると急に安心感を覚え立ち上がった。


「姉さん…?」


 思わずそんなことを口走ってしまった、だってあれは…。


 “姉さん”だもの。


「ライオンちゃんがタイプか!いいよなー!ムチムチして!何とは言わないが搾り取られそうだよな!ってなんだおい?どしたのシロちゃんよ?」


「へ…?なにが…?」


「や、え~?なんで泣いてんの?」


 泣いてるって俺が?


 触れると確かに頬を伝う涙があった、だってこんな訳のわからない世界で身内と同じ顔を見れたんだ、声だってほとんど一緒だ、性格も見る感じそう変わらないじゃないか?


 わかってんだよ別人だってことくらい、でも俺はお守りの牙をギュッと握りしめてヨタヨタと彼女に向かい歩き出した。


「姉さ…」


 手を伸ばし呼び止めたが。


「お?見ない顔だねぇ?私に用かい?」


「あ…」


 そう、頭ではわかってたことだが、彼女は別人なんだ… 姉さんじゃない。


 彼女は見た目こそ馴染みのある俺の姉だが、姉ではない、わかってたんだ。


 わかってたことなのに…。


「HEYシロ?what's up?」


 俺と彼女の間に入るでけー外人なんて目もくれず、俺はただひたすら姉さんと同じ顔をじっと見つめていた。


「どーしたの君?どこか痛いの?なぜ泣くんだい?」


「いや… あなたがあんまり姉に似てたものだからなんだか懐かしくなってしまって、ごめなさい…」


「そっかそっかぁ… 会えなくて寂しいんだね?なんなら私のことお姉ちゃんって呼んでもいいよ~?」


 軽いノリといいおおらかなとこといい、やはり見た目だけでなくこのライオンのフレンズはほぼ姉さんだ… 別の個体のはずなのに。


「いや、本当の姉さんの為にそれは遠慮しとくよ… ありがとうライオンさん?」





 帰りたい。


 みんなに会いたい。



 ふとそんな思いが胸にグッと込み上げて、涙が止まらなくなってしまった。




 毎日博士達の為に料理して、飽きさせないようにいろいろ考えて大変な毎日だったけど… 俺はあの日々が幸せだったんだ。


 そうだ。


 父に苦労かけながら周りの白い目に耐えて過ごす日々なんかよりずっと幸せだった!


 みんなの為にいろいろ考えて、それで喜んでもらえるのが最高に幸せだったんだ!


 だけどここは俺の知ってる世界じゃない。


 姉さんのことを思い出すと急にいろいろ限界だったんだと気付いた。



 火山では死に目に合い、知らない浜辺にダイブして、そしたら変な建物に案内されてそこには人間がいていきなり殴られて。



 そこでここが俺が生まれるずっと前だって気付いて…。



 ここには俺の居場所がない、俺はここにいてはいけない。

 

 帰らなきゃ…。


 でも、帰れない…。






 

「どうだった、彼は?」


 所長、銀蓮黒斗は相も変わらず書類の山を片付けながらも、一旦手を止め四人を集め直していた。


「Cry…」

「ありゃ来たくて来たんじゃなさそうだな」

「帰らないのではなく帰れないのね… 可哀想に」


 ライオンのフレンズと顔を合わせた時、彼は何か思い出したように涙を流し始め次第に元気を無くし、遠い目をするようになった。


「ふむ、確か彼は“未来から来た…”とそう言っていたそうだな?」


「うん、初めは本心を隠して適当にでまかせを言っていたのかと思ったが…」


 彼… シロがコクトの質問に答えた時の言葉をコクト自身も改め直していた。



 もし仮に彼が本当に未来からの訪問者だとして、その理由が自分でもわからず故に彼は帰ることが叶わないのだとそんな状態だとしたら?


「ひとついいかしら?関係あるかわからないけど、彼の武器について私の意見を聞いてくれる?」


 そしてレイコは、彼の謎の一端に触れる。


「あれは私の見立てだとフレンズの槍よ… あの形は、恐らくヘラジカの角」


「ナルホド、角のあるanimalはフレンズ化で武器を持ってfightすることがありマスネ?」


「じゃあ、アイツの槍はフレンズから奪ったって?」


 一瞬だけ不穏な空気が流れたが、コクトは「それはない」とすぐに一蹴した。


「それならフレンズを助ける理由にならない、恐らく何らかの理由があり譲ってもらったんだろう… と私は思っている」


 コクトは彼が何者かを改めて考えた。


 どこから、そしてなんのために自分の前に現れたのか?






 まず、彼はフレンズのことを知っていたんだ、この島にしか存在しないフレンズのことをだ。

 その場で遭遇してすぐにその存在を受け入れたにしては無理がある、レイコが彼の持つ謎の武器がヘラジカの角を模していると見抜いたことでそれは証明された。


 彼は元からフレンズを知っていて、フレンズとの接触が可能なところから来たんだろう。


 だとしとら彼が「未来から来た」と言うのもあながち嘘ではないのかもしれない、神獣と呼ばれるフレンズが目の前に現れるような場所だ、ひょんなことから時間を遡る男が現れるほうが余程化学的で現実的と言えないだろうか?個人的には神なんぞよりずっと現実的に感じる。


 しかし、だとしてもだ…。


 シロ…。


 我々に君を帰してやれる術などあるのだろうか?


 正直時間跳躍などSFもいいとこだ、ハッキリ言って無理… ならば、無理ならせめて彼という存在をパークに受け入れてやるのが我々の責任ではないだろうか?


 それとも何か理由でもあるのか?彼が未来からここに来なくてはならないような理由が。



 あるとしたら、それはなんだ?







 そしてシロが帰れぬまま、数日が経った。


 



猫の子番外編

「猫夢を見る」



 クロスオーバー

猫の子×けものフレンズ -First Code.-



中編 終わり

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