第100.5話 ほそくてき

 現在、ゴコクエリアに滞在中。


 ここにいるカコさんは言った、俺の腕を治すには俺自身が成長する必要があると。



 その方法とは…?



「サンドスターコントロール?」


「そう、けものプラズムで失った部分を取り戻すにはフレンズ以上に体内のサンドスターを自由にコントロールする必要があるの、そしてそれは同時に君の体質のデメリットを克服することに繋がるわ」


 サンドスターコントロールとは…。


 具体的には体内を循環するサンドスターの動きを操り、移動、排出を行えるようになる

ことだとこちらのカコさんは言う。


 失った右腕を形成するためにありったけのサンドスター集中させる必要がある、そして俺がまたサンドスターロウを吸収してしまうようなことがあったとき、それを自分の力で外に出すために必要なことだった。


 子供が生まれるまで約8ヶ月ほどしかない、俺はそれまでに腕を取り戻すためカコ博士の指導のもとサンドスターコントロールの修行を完成させなくてはならない。



 これはその間の話である。





 


「シロさん、どうですか?」


「大分掴めてきたよ、かばんちゃんはどう?具合は?」


「もう6ヶ月ですからね、安定してます!お腹の子も二人とも順調みたいです!」


 ニコりと笑い嬉しそうにお腹を撫でる彼女の顔は、垢抜けたとは言えまだまだ大人と言いきるには若い。


 でもすっかり母親のように優しい目をしている、しっかり者のかばんちゃんらしい、あと胸が大きくなった。


 6ヶ月にもなればお腹も目立つようになってきているし、比例するように胸も目立つようになってきている。


 俺のサンドスターコントロールも順調、これなら子供が産まれる頃にはしっかりと二人とも抱き上げてやれそうだ、授乳だって手伝える。


「ユウキくん、経過は順調?」


「はい先生、ご覧の通りあらゆる部分にサンドスターを集めることができます」


 こちらの白衣がよく似合うキリッとした目の黒髪ロングの美人こそサンドスターの教師カコ先生、しかしカコ先生のなにが驚いたってあの人。


「どうしたの?」


「いえ…」


 どうしたの?じゃない!おかしいに決まっている!


 驚いたのはどう考えて年齢は50歳前後のはずなのに見た目が完全に20代というとこだ、老けて見てもいいとこ30代だろう、あと胸が大きい。


 単なる若作りにしては度が過ぎている、もしかしたら特殊な呼吸法でエネルギーを生み出しているのかもしれない、きっと水面を歩いたり座ったままの体勢でジャンプできたりするんだ、しかも胸が大きい。


「カコカコ先生!次はどんな修行ですか!」


「カコは一回… そういうとこ本当にナリユキくんと… まぁいいわ、それじゃあ次は集めたサンドスターを体外に出す訓練をしましょう、手のひらにボールを出す感じでやってみて?」


 なるほど?とうとう俺も気功波を撃てるようになるということか?これは楽しみだ。


 しかしこの修行は体外に出た瞬間サンドスターが飛散してしまい大変手こずることとなった。


「あぁ!また失敗した!クソ!」


「難しい?」


「なんていうか、ボールと言われても…」


「こうよ?」ボゥ


 え、えー!?なんでなんで!?カコさん人間じゃないの!?なんでサンドスター持ってるの!?


 聞いたところ、なんでも昔セルリアンに襲われて昏睡状態になったことがあり、目を覚ましてからも先生は軽い鬱状態が続き自分でもそれに参っていた。


 その時たまたま触れたサンドスターのサンプルが先生を変えた。


 信じられないほど晴れやかな気分になり手を離して少しするとまた気分が沈んでいく、その時カコ先生が思い付いたのが…。


「それがサンドスタードリンクよ」


「サンドスターって美味しいんですか?」


「私は当時牛乳と混ぜて飲んでたの、悪くなかったわ?」


 そんなプロテインじゃあるまいし…。


 とにかくサンドスタードリンクを秘密裏に製作し自らを実験体にして飲み続けることでご覧の結果に。


 気持ちは驚くほど前向きに!アンチエイジングもバッチリ!お肌はまるで十代のよう!あと胸が大きい!


 つまり度重なるサンドスターの摂取によりヒトの枠から外れてしまったのだ。


「でも、こんなことが知れたらとんでもないことになるわ… それで向こうに戻ると何をされるかわからないと思った私はパークにひっそりと残ることにしたのよ」


 という究極生命体となったカコ先生の思出話でした。


 ちなみに、老化が遅いだけで不老不死になった訳ではないらしい。


 セルリアンに襲われたのも関係しているのかもしれないし、先生自体がそもそも特別なのかもしれない。





 ちなみに父とミライさん、シンザキさん&ナカヤマさんはゴゴクエリアの調査に出ている、ツチノコちゃんはそれに同行。


 シンザキさんは「よかったら一緒にサーバルぅ来るようにぃ」と言っていたが、御本人様からは「かばんちゃんが心配だから残るよ!」と断られていた。


 残念ン… でしたねぇ?


 まぁ、帰った時にたっぷり「サーバルぅ」してもらえばいいさ。





 

「どうですか先生?野球ボールからバレーボールくらいの大きさのサンドスター玉を作れるようになりました!」


「上出来よ、大きさも操れるのはコントロールができている証拠!」


「しかし先生、コントロールの修行を続けているうちにフレンズ化が解けなくなりました… なんでですかね?」


 そう、修行を続ける内にどういうわけか耳と尻尾が消えなくなったのだ。


 俺はこれが不安だった、ただでさえお預けを食らってるこの状況で姿がヒトに戻らないということが。


「そうね… 恐らくサンドスターの操作が上手くなったことでよりサンドスターの循環がしやすいようにフレンズの部分が表にでるようになったのね」


「あんまり言いたくないけど以前こうなった時に発情期に入って大変だったんですけど」


「多分それとはまたベクトルが違うわ、子供の頃はフレンズの姿が普通だったのでしょう?元に戻っただけよ、そう思えば納得するでしょう?」


 そうかなるほど… 野生解放してる訳じゃないからサンドスターが常に流出してるわけではないし。

 つまり、母さんの封印が必要なくなったのか…?

 

 それってなんか寂しいな、最後にもう一度話したかった… 母さんはどこにいってしまったのかな?





 さておき、調査隊が帰ってきたようなのでここで旧ジャパリパーク三賢人の再会した当時の様子がどんな感じだったのか話そう。

 


「カコさん!?本当にカコさんです!昔と全然変わりません!」


「もしかして… ミライ?あなたなの?」


「俺もいるよ先輩」


「ナリユキくん?どうして?どうやって…」


 いろいろ突っ込みどころのあるカコ先生だが、二人はそれよりも再会できたことを喜んでるようだった。


 妻が言うにはカコ先生も嬉しそうにしてたそうだ。


「二人とも何年ぶりかしら?歳をとったのね?」


「先輩はなぜ若いままなんです?」


「いいですねぇ…?私も若い頃に戻ってフレンズさん達に埋もれたいです…」


「か、変わらないわねミライ… まぁそれは後でゆっくり話しましょう?それよりも、彼はナリユキくんの息子さんかしら?」


 見ただけでそんなことが分かるのか?俺は少し疑問だった、母親似だし。


「そうだよ先輩、こいつは息子のユウキ、ここに来たのは息子の腕を治すために先輩の力を借りようと思ってきたんだ」


 その時先生は「そう…」と軽い返事をするとこちらをみて俺に挨拶をしてくれた。


「初めましてユウキくん?私はカコ… お父さんともお母さんともよく似てるから息子さんだとすぐにわかったわ?」 


 そうか、父と母の仲を知っているのだからなんとなく察したのか。

 そんなことより妻の母みたいな人だ、しっかりとご挨拶せねば。


「はい、ユウキです!カコさんのお話は聞いております!妻が大変お世話になったと!」


「妻?」


「カコさん、僕のことです!」


「かばんちゃ… え!?と、ということは二人は…?」


「カコさん!二人は結婚してふーふになったんだよ!」


 当時、先生は驚いて放心状態にでもなったのか口が半開きになっていた。


 そしてざっくりと家族構成が説明され、極めつけには…。


「え!?かばんちゃんってミライのフレンズなの!?はぁ… 彼女を見たときミライと初めて会ったときのことを思い出したの、納得した…」


「かばんちゃんは赤ちゃんもできたんだよ!」


「赤ちゃん!?」


「あ、あと双子なんです///」


「双子!?」


 アゴ外れんじゃない?ってくらいあんぐりと口を開けて呆然と俺達を眺めているカコ先生、妻の母親のような人ならば、もしかしたら急に娘が変な男を連れてきたと困惑しているのかもしれない。


「恋をしたらと半分冗談では言ってみたけど、まさか結婚してくるなんて… どーりで大人っぽくなったと思ったわ?」


「二人とも俺の息子に先を越されてしまったようだが、どんな気分だい?」ドヤァ


「「ナリユキくん…」」

「怒るよ?」「怒りますよ?」


 そんなやり取りで三人の関係性が垣間見えた瞬間であった。





「おかえりツチノコちゃん、調査どうだった?」


「聞け!いいか?スゴいぞ!ここには“神社”とか言うのがあってな!そこではキツネの神獣を祭りあげているらしいぞ!」


「ジャパリ神社です、祭られているのは“オイナリサマ”という白い狐の姿をしたフレンズさんで、おっしゃる通り神獣クラスの存在です… パークの“守護けもの”の一柱に当たります」


 守護けもの… 神獣… 四神と同じか。


 四神みたいに他の神獣フレンズもなにかが理由で消えてしまったんだろうか?復活はできないのかな?


 余談だが、四神クラスになるとサンドスターロウでも自身の力として操れたそうだ。


 俺の右腕の経緯をカコ先生に話したとき、サンドスターロウをコントロールできないか?と尋ねると「そんなことができるのは神獣クラス、しかも四神くらいよ?」と一蹴された。


 新たなステージは~♪神に挑む場所~♪





「あ、イタタ…」


「大変だ!生まれる!?もう生まれる!?」


「シロさんったら、さすがにまだ早いですよ?」


 妻は予定日が近づくにつれこのように痛みを訴えることが増えた。

 とてもとても心配だ、片腕どこまでフォローできるのか… ちゃんと間に合うのだろうか?


「かばんちゃん!すっごくお腹大きくなったね?どんな感じなの?」


「中で動いてるんだよ?なんだかすごい元気みたいで、たまにビックリしちゃう!えへへ」


「不思議なもんだなぁ…?シロとかばんの子供か、どっちに似るんだろうなぁ?かばんに似るといいな?」


「ツチノコちゃんそれどういう意味?お願いだから俺に似ると不幸みたいなのやめて!」


 随分大きくなった妻のお腹… 父さんが言うには「双子だからやっぱり大きいな」とのことだ、そりゃ二人も入ってたら単純に一人の倍になるってことだ、あと胸もさらに大きくなった、


 なんやかんや出産予定日は丁度一ヶ月後だ、俺も腕を取り戻したくて気が急いてきていた。

 ある日、焦った俺は先生に少し当たってしまったのだ。


「先生!サンドスターコントロールも大分慣れました!早く腕生やしましょうよ!」


「そうね… でも実は、計算の結果あなたの体内で作られるサンドスターの量では右腕が完全に形成できるかわからないのよ… ハーフ故の問題ね、今方法を考えてるわ」


 ここにきて問題発生か、正直焦り始めていた、だって一ヶ月なんてすぐだから。


「そこをなんとか頼みますよ!」 


「焦る気持ちは分かるわ?でも少し待って、必ずなんとかしてみせる」


「少しっていつですか!」


 あと一ヶ月、ほとんど時間がない…。


 そう思うと気が急いてどうしても声を荒げてしまった。


 先生は悪くない、先生がいなければそもそも可能性すらなかった、わかってるんだ。


 でも…。


「シロさん?大声なんかだしてどうかしたんですか?」


 俺の声を聞いて妻が部屋まで見に来てしまった。

 ダメだ、一番不安なのはかばんちゃんのはずだ、俺が焦ってイライラしているところなんて見せてはいけない。


「大丈夫、なんでもないよ…」


「えぇ、少し訓練がヒートアップしただけよ?あなたは無理しないでゆっくりしてて?」


「そうですか… あの、シロさん?」


「ん?」


「あんまり根を詰めすぎないでくださいね?僕なら大丈夫ですから?」


「そっか… うん、ありがとう」


 そうだ、大丈夫じゃないのは俺の方だ。


 かばんちゃんはすごいな、俺のことなんでもお見通しなんだから…。




… 




 そして出産予定日を過ぎたある日…。


「大変です!かばんさん破水しました!」


「すぐに部屋に連れていくわ!ナリユキくんはお湯!」


「わかった!」


 バンッ!

「かばんちゃん!産まれるって!?」


「坊っちゃんアカン!カプセル戻るんや!」


「中にいないとサンドスター足りないですからぁ」


 かばんちゃんが陣痛に苦しみとうとう破水してしまったその時、俺はサンドスターカプセルにねじ込まれて腕を取り戻す準備をしていた。


 父さんの開発したサンドスターカプセルなら俺の半端なサンドスターを使いながらも常に供給できる、ただし供給量が追い付くかはわからない。


 腕を作るなんてそれくらい半端なことではないのだ、あとは気合いだ。


「シロちゃん!かばんちゃんは任せて!」


「おい!いいか聞けバカ野郎!お前にはやることがあるだろ!立ち合いたいならさっさと腕治せ!子供を二人とも抱いてやりたいんだろ!」


「くぅ…!わかった…!」


「入ってくださぃ」

「そうやで、今は辛抱ですやんか?」


 部屋に運ばれる妻を見送りながら俺は再度カプセルに入った。

 




 サンドスターコントロールだ、集中しろ。


 俺の体内の全サンドスターを右腕に集中… イメージしろ、失った右腕を!


 俺の右肩の末端に光が集まり、やがてその光はゆっくりと伸びて腕の形をとり始める。


 ここからがしんどい…。


 指先まで形を作ることができても光のままだと手とは言えない、けものプラズムを完全な腕としてそこに存在させなくてはならない、そのためにまたありったけのサンドスターがいるのだ。


「ダメだ!供給が遅い!」


 サンドスターが空になったら気を失ってしまうだろう、そしたら全回復するまで待ってやり直しだ、だがそんな暇はない。


 今まさに子供たちが生まれようとしている、かばんちゃんも声を挙げながら出産の痛みに耐えている、俺がここで折れる訳にはいかないんだ。


「まだだ!もうちょっとなのに!」


 もう一捻りだけどサンドスターが足りない!なんとか絞り出せないのか!


 ギュッと首から下げるお守りを左手に握り願いを込めた…。



 “ガンバレ”か…。

 頑張ってるさ!でも! 

 


 あ… そういえばお守りって…?


 その時閃いた、このお守りは姉さんの牙で羽は博士と助手のものだ、つまり既に形になったけものプラズム。


「これ、使えるんじゃ?」


 こうなりゃ賭けるしかない!姉さん母さん!博士助手!力を貸してくれ!


 心でそう強く念じ、不完全な右手でお守りを握りしめた…。



 子供の為に戻ってこい!俺の右腕!



 お守りよ!腕に変われ!







 「おぎゃあ!おぎゃあ!」と二人分の泣き声が確かに聞こえる、部屋に入るとクタクタになっている妻ととても小さい生まれたての赤ちゃん達がそこにいた。


 俺はこの日とうとう父親になったのだ。


「おめでとうございますユウキくん!元気な男の子と女の子ですよ!」


「母子ともに健康よ?さぁ、まず先に奥さんを労ってあげて?」

 

 俺は妻の傍にくると“右手”で髪を撫でた。


 クタクタの彼女はこちらを見ると安心したように笑ってくれた。


「シロさん… 赤ちゃん生まれました」


「うん、よく頑張ったね?ありがとう」


 彼女が手を伸ばしたので、俺は両手でそっと包み込むように握った。


「シロさん、腕が…?」


「かばんちゃんの頑張ってる声聞いてたから、なんとか間に合わせたよ?」


「あぁよかった… 本当によかったです」


 まるで自分のことのように泣いて喜ぶ彼女を慰めていると、後ろからミライさんが言った。


「さぁユウキくん、抱っこしてあげてください?」


 子供は… 男の子のほうが彼女と同じ黒い髪で、女の子の方は俺と同じで白い髪。


 どちらもフレンズとしての獣の特徴は無いようだ。


 抱き上げると温かくとても小さい、図書館のカレー鍋よりも軽い、でもとても繊細… 命の重みを感じる。


「なんて言ったらいいのかな?」


「なにがです?」


「いや、初めましてだから…」


「フフフ、そういう時はただパパだよって笑いかけてあげればいいのよ?」


 そっか…。


 それにしても可愛いなぁ、俺の子供かぁ

 黒髪のせいかかばんちゃんとよく似てるじゃないか?でこっちの女の子は俺似かな?素晴らしいね。


 片方はかばんちゃんに任せ、自分の抱く男の子に「パパだよ?」と指を出すと、とてもとても小さな手できゅっと握っている。

 「ママだよ~?」と彼女も女の子に指を出すと同じような反応をしていた。


 二人とも可愛い、この子達が俺の血を引きかばんちゃんとの間に生まれてくれた… もうこれだけで今まで辛かったこと全部どうでもよくなる


「そっちも抱いていい?」


「いいですよ?ほらパパですよ~?」


 と次は俺似の女の子を受け取り抱いてみたのだが…。


「オギャア~!!!」

「はわわ…!?なんで!?パパだよ!?」


「ふふふ、きっとシロさんに似てるから甘えん坊なんですね?」


「よしよし泣かないで!パパにも甘えたらいいよ!パパなんでもするから許して!」


 というわけで、無事に俺は腕を取り戻し子供も元気に生まれパパになった、この手で子供を抱き上げることもできた。


「サンドスターが足りたみたいで安心したわ、完全にけものプラズムが腕を作り上げている」


「いや、ちょーっとだけ足りなかったんですよ実は…」


 俺がお守りを使い腕を完成させたことを話すと「考えたわね…」と先生も素直に感心したようだった。





 翌日… 絶対安静の妻の隣で子供を眺めていると妻は言った。


「名前、どうしましょうか?」


「かばんちゃんはなにか考えてる?」


「いろいろ悩んでて… シロさんはどうですか?」


 考えていたが子供がどのパターンで来るかわからず難儀していた、男女でくるパターンでも一応考えていたのが“リオ”と“レオ”だ。


 しかしご覧の通り男の子のほうは妻に似て女の子のほうが俺に似た、その名前だと男女が逆転してしまうのだ。


「あ、そうだ」


「なにか思い付いた?」


「この子は髪が僕と同じで黒いので“クロ”、それでこの子がシロさんのお母さんからとって“ユキ”ではダメですか?」


 ん~それがダメとは言わないけど、もう一捻りほしいなぁ…。


 あ!よし分かった!


「じゃ父さんからもとって“クロユキ”と“シラユキ”っていうのは?」


「あ、それなら“ユウキ”さんからもとれてますね?」


「“かばん”からはどうとればいいのか…」


「いいんです!僕は気に入りました!パパが素敵な名前を考えてくれましたよ~?よかったね~クロユキ?シラユキ?」 


 ニコニコと子供達に話しかける彼女の笑顔はまさに母親のそれだ。


 男の子の方は俺のシロという呼び名にもちなみに愛称としてクロと呼べる、女の子のほうはホワイトライオン?まだ分からないがきっと母さんにも似てるので愛称としてユキと呼んでもなにもおかしくはない。


 これからパパとママは二人のことたっぷり可愛がるから。


 どうかよろしくね?クロ?ユキ?




 

 子供がハイハイをするようになりカコハウスが騒がしくなって来た頃…。


「先生、そろそろキョウシュウに帰ろうと思うんです」


「そう、寂しくなるわね… この子たちは私にとっても孫みたいなものだし」


 そう言って二人の寝顔を眺めるカコ先生は確かに慈愛に溢れた母や祖母という感じだった… 俺としてもいろいろ教えてくれる先生と離れるのは少し寂しいが、帰ると約束した家族が向こうにも沢山いる。


 帰らなくてはならない。


 父さん達にも話したところこんな答えが返ってきた。


「そうだな、聞けユウキ?実は俺達もそろそろパークから出なくてはならないんだ」


「期間限定なんですよ、でも心配しないでください!これからもパークには調査でこれますから!」


 各々思いがある… 父さんとミライさんもカコさんとはもう少し一緒に居たいだろう、旧パーク組は初孫フィーバーしてるし。


「カコ先生、ミライさんたちの船なら子供たちも安心して乗せて来れます、だからその時はまたこの子達を連れてゴコクエリアへ来ます、その時はまた可愛がってやってください?」


「君はしっかりものね?優しくて思いやりもある… かばんちゃんが旦那さんに選んだのも何となくわかるわ、ケモ要素もあるし」


「あ、はい…」


 なぜかケモ要素が9割みたいな言い方に聞こえたのは俺だけだろうか?


 さておき、これは一つ提案なのだが。


「先生、よかったらキョウシュウに来ませんか?妻も喜びます」


 そう、なにも一人でいることないのではないか?みなで一緒に暮らせば…。

 

 しかし、先生は言うのだ。

 

「ありがとう、でもやめておくわ?ここには私を頼りに訪ねてくるフレンズも多いから?それに若い夫婦の邪魔はしたくないし」


「邪魔だなんて…」


「ありがとうユウキくん、また遊びにきて?私はあなたたち家族をいつでも歓迎するわ!」


 何となく… 何となくなんだが…。


 カコ先生はずっと一人で… かばんちゃんが来るまでスゴく寂しかったんじゃないか?ってそう思ってたから聞いたんだ。

 

 先生の体がどのような状態なのか知らないけど、きっと俺よりずっと長生きするんだとそう思う。


 一人で寂しいなら可能な限りまた会いに来よう、家族みんなでこの場所へ。





 この時別れがいくつもあった。


 まずカコ先生、それから父さんとミライさんに調査隊の二人…。



 そして…。

 


「なぁ、ちょっといいか?」


 明日帰るって夜だ、ツチノコちゃんが神妙な顔つきで俺のとこにきた。


 断る理由もなく話を聞いてみると彼女は俺に驚きの一言を放つ。


「オレはカコのとこに残ろうと思うんだ」


「え!?帰らないの!?なんで!?」


「来てみてわかったんだ、オレは視野が狭かった… ここでもっといろんなことが知りたい、まだまだ調べたりないんだよ?」


「スナネコちゃんはどうするのさ!大泣きしてたの覚えてるでしょ?」


「それは本当にすまない… お前から伝えてくれるか?」


 ツチノコちゃんも残ると言うのだ。


 彼女の決意は固く、説得したところで折れるようなことはなかった… それに無理に説得したところでそれは彼女の為になるのか?とだんだん疑問になっていき、最終的には俺が折れて彼女がここに残ることを承諾した。


「最後の頼みを聞いてくれるか?」


「最後だなんて…」


「いいから聞け!ナリユキが酔って話してくれたんだが、盃を交わすと兄弟になれるらしい… やってみないか?」


「それ向こうじゃ怖い人たちの行事なんだけど…」


「ダメ… か?」


「いやいいよ、やろう」


 どこからか持ち出した酒と盃… それを俺達は半分づつ飲んだ。


「うげ… 喉が熱い…」


「まだまだガキだな?」


「いいじゃん別に… それで、どっちが上?」


「オレに決まってるだろ、お前みたいな情けない兄貴がいるか!」


「そう?始めは俺のほうがよく面倒見てたきがするけど」


「なにかある度に泣いてたやつがよく言うな?」


 なんて話して笑い合った晩、俺には姉が一人増えた。


 ツチノコちゃんも家族になりたかったのかもしれない、こんなことしなくたって俺は家族のようなものだと思っていたのに… でもやっぱり彼女の性格上いろいろ理由をつけたかったのかもしれない。



 次の日の朝…。



 俺はパークに来て初めてできた友人でありここでは無二の親友、そして姉となったツチノコちゃんとしばしの別れとなった。


 そして船は俺達を乗せてキョウシュウへ進む、向こうに着いたら父さん達ともとうとうお別れだ。





…  




「あ、キョウシュウが見えてきた… そろそろ向こうのラッキーに通信しないと」


「ユキ?クロ?新しいおうちだよ?ママたちあそこで結婚したんだよ~?」


「「キャッキャッ」」


 クロは俺が抱き、ユキはかばんちゃんが抱いている、話しかけるとこのように楽しそうに笑いとても可愛らしい。


「シロちゃん!つーしんするんでしょ?わたしが抱っこしててあげるよ!」


「ありがとう!ほらクロ~?サーバルお姉ちゃんが抱っこしてくれるってさ?大きいお耳好きだろ~?」


 ヒョイっと手渡すもサーバルちゃんが抱いた瞬間にクロは…。


「えぇ~ん!」


「えぇ~!?なんでなんで!?ほらよしよーし!怖くないよ!大丈夫だよ!?耳触ってもいいからー!」


 あらあら… サーバルちゃんに抱かれて泣くなんて珍しい、慣れない船旅に不安になったのかな?


「仕方ないな~… ほら、パパのとこにおいで?」

「ダブダブ!」


「なんで泣いちゃったのかな~?嫌われちゃったよ~…」


「大丈夫だよ?きっと船旅に疲れたんだよ?」


 そんなことを話しつつ俺は図書館のラッキーに通信を繋げ話しかけた。


 しばらくわちゃわちゃすると博士の声が聞こえてきた、いるならすぐに返事してほしかったが、もしかするとビックリしてあたふたしてたのかもしれない。



 やがて船が港に着くと島中のフレンズが俺達を出迎えてくれていた。



 サーバルちゃんの後に続き、子供を抱いて妻と船を降りるとみんなに向かい声を俺達は揃えて言った…。



「「ただいま!」」



 その言葉にフレンズ達は皆元気よく返事をしてくれた。



    \おかえりなさい!/



 俺達は帰ってきた。


 きっとこれから家族が増えたことで賑やかな毎日が待っていることだろう。


 みんなに子供達を紹介してあげないといけない。


 

 ここが俺の帰るべき場所。



 ただいま、俺の故郷。






 おわり

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